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貴族令嬢はもふもふがお好きなご様子  作者: ゆむ
中央高等学院3年生
181/593

181 ブェレンザッハ

 長かったイグスエンでの役目が終わり、ようやく帰れる日がやってきた。ウンガスとの戦いはまだ終わってはいないが、王子の率いる正規のバランキル王国の部隊が来ているのだ。私たちが出しゃばるものでもない。


 今までの戦いの詳細や対人戦で注意すべき事柄など、二日間かけてかなり細かく伝えてあるし、ことによっては実演して見せたりもした。



 私たちにできることは全てやった。あとは大人たちに任せておけば良い。


 四人だけで領都を出ると、北のブェレンザッハ領を目指す。いくらなんでもブェレンザッハ領都までジョノミディス一人だけで向かわせるなんてことはできない。だが、護衛につける騎士の余裕などあるはずもなく、私たちもブェレンザッハ領都まで一緒に行くことになったのだ。


 どちらにしても、ブェレンザッハ領は私たちの帰り道でもある。領都に寄って挨拶もせずに帰るのも感じが悪いし、私たち四人で行くならば護衛も不要ということで話を落ち着けた。


 イグスエン侯爵は最後まで子どもだけでの旅は反対していたが、今さらである。戦場に近いところならばともかく、イグスエン領都からブェレンザッハ領都は戦場となっているわけでもない。


 時折出てくる魔物は退治して進めば良いし、夜は途中の町で小領主(バェル)(やしき)に泊めてもらうので、夜番も必要ない。

 往路はとにかく急ぐ必要があったが、帰りは無理して急ぐ必要もない。のんびりと旅を楽しむなんて状況ではないが、無理のない範囲で進めばいいのだから楽なものである。



 四日目でブェレンザッハ領に入ると、小領主(バェル)の待遇が変わる。さすがにブェレンザッハの貴族でジョノミディスの顔を知らない者などいないようで、驚きながらも歓待してくれる。


 そして、当然のように戦況に付いて聞かれるが、私たちはブェレンザッハの情報は全く入ってきていない。イグスエンには再び万を超える兵が侵攻してきたと伝えるくらいだ。


「王宮の騎士団もやってきているのだ。戦いの方は心配することはないだろう。」


 ジョノミディスがそう言っても、小領主(バェル)は沈んだ表情のまま首を横に振る。


「ウンガスを退ければそれで万事解決というわけではありません。今年は、魔物退治に当たっている騎士が少なすぎるのです。」


 つまり、この町の周辺も、その他の地域も魔物が跋扈している状態で、収穫どころか商人の行き来にも影響があるのだと言うことだ。


「私たちが退治していけば良いのではありませんか? さすがに全ての魔物を退治してまわる余裕はないですが、少々の寄り道程度ならばできないことはないでしょう。」


 フィエルの提案に私が反対する理由はない。ハネシテゼも、「退治の報告に戻らなくて良いならば」という条件を付けはするが、魔物退治をすること自体に反対はしないようだ。


 魔物が発見された場所を聞くと、その日は畑の周辺の魔物を退治に行くことにする。


「陽が沈むまでまだ時間がありますからね。退治できるだけしてしまいましょう。夕食と湯浴みの用意をして待っていてください。」


 ハネシテゼが当然のように笑顔で要求し早速出かけようとすると、小領主(バェル)が「子どもだけでは危険だ」と慌てて止めようとする。


 町の周辺の魔物退治ならば、私たちは一人でも何の問題もない。既に何度もやってきているし、危険と言われても今さらである。騎士を付けられて畑の外側に向かうが、彼らのやることはあまりない。


 四人がそれぞれ東西南北に散り、あとはいつも通りに魔力を撒いて魔物を集め、できあがった死骸の山を灰にするだけだ。


 すべて片付いて領主邸に戻れば、約束通り湯浴みの準備が整えられていて、汚れを落としてから食事に呼ばれる。



 翌日はかなり早めに食事を摂り、急いで魔物退治へと向かう。いくつか魔物の情報があるが、私たちが向かうのは北東の山だ。南に戻るようなところは却下である。


 魔物退治に行くのは私たち四人だけではなく、小領主(バェル)の騎士も同行することになっている。複数の大型魔物が確認されていることもあり、報告が何もないのは困るらしい。


 私たちにとっては、同行する騎士はいてもいなくてもあまり変わらない。いつも通りに魔力を撒いて誘き寄せて倒すだけだ。


 確かに下級騎士では苦しいだろうと思われる、大きめの魔物も出てきたが、私たちの前に出てきた時点で死亡が決定している。


 何やら虚空に向かって吼え声を上げていたが、雷光に貫かれて倒れて終わりだ。


 あまりのあっけなさに、同行してきた騎士たちがあんぐりと口をあけっぱなしにするが、やはりこれくらいはいつも通りなのだ。



 魔物を灰にしたら騎士と別れ、次の町へと向かう。

 そんなことを繰り返し、九日でブェレンザッハ領都へと至る。


「さすがに第一公爵と言われるブェレンザッハの領都は大きいですね。」

「そうなのですか? そういえば私は侯爵領は知っていても、他の公爵家の領都には行ったことがありません。」

「少なくともエーギノミーアよりは大きいですね。」


 畑の中を通る道から見えるだけ見渡してみても、ブェレンザッハの外壁は延々と続いている。まさか、こちら側だけ長いということもないだろう。

 門から城までの距離もかなりの長さがある。王都ほどの大きさはないが、やはりエーギノミーアより大きく、そして古い町であることは間違いない。

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