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貴族令嬢はもふもふがお好きなご様子  作者: ゆむ
中央高等学院3年生
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119 説明会

 魔物退治や、畑への魔力の撒き方については基本的なことは既に昨年に説明済みだ。質問されるとしたら、もっと具体的なことになるはずである。




「どのような種類の作物も、魔力を撒けば大きく育つのでしょうか? 私は麦でしか試せていないのですが、来年はどの品目に力を注ぐべきかの検討材料がほしいのです。」

「エーギノミーアでは丸薯(タエパ)が最も効果があったな。畑当たりの収穫量は三倍を軽く超えている。逆に効果が一番低かったのは大豆だ。」

「魔力の撒き方が偏っていたのかもしれないですし、必ずしもそうなるというわけではございません。」


 フィエルの説明に、注意してほしいことを付け加える。効果の多寡については、今後、情報を積み重ねていく必要があると思っている。


丸薯(タエパ)に限らず、芋は穀物や野菜よりも魔虫の影響を強く受けます。丸薯(タエパ)が多く穫れたのでしたら、虫退治を頑張った結果かと思います。」


 なるほど。ハネシテゼの知識だとそうなるのか。魔虫も魔獣も徹底的に退治するつもりなので、私としてはあまり関係ない話だ。


「ブェレンザッハでは、平民たちにも、可能な限り魔虫退治に参加してもらおうと思っている。」

「平民を使うのは構いませんが、貴族がやった方が早いですよ。それと、雷光の魔法が収穫向上に有効なことが分かりましたので、頑張って覚えることをお勧めします。」


 突如、初めて聞く情報が出てきた。雷光の魔法が収穫に影響するとはどういうことだろう?


「いくつかの実験用の畑があるのですが、今年は、種を播く前に魔法を使うことで収穫量が変わるから試してみたのです。雷光の魔法を使うと収穫が増え、火の魔法を使うと少しですが減ることが分かりました。」

「火の魔法を使うと減ってしまうのですか? 魔物退治の後の焼却処理は畑の外でやった方が良いということですか?」


 想定外の情報に、私も不安になってしまう。今まで何も気にせずに畑の真ん中で魔物を焼いていたし、爆炎魔法で死骸を集めたりしている。


「数時間、火の海にしてみた結果ですから、魔物の焼却程度ならさほどの影響はないと思います。むしろ、そこで手間がかかってしまい、魔力を撒く畑が減ってしまう方が問題でしょう。」


 優先順位を間違えてはいけないとハネシテゼは強調する。一のために十を捨てるなど馬鹿げているということだ。


 春先の魔力撒きは時間との戦いである。種()きの時期までに、どれだけの区画に魔力を撒いていけるかを考えなければならない。


 たとえ国王が命じたところで、時期を外れれば収穫量は落ちてしまうし、実りを全く得られない可能性すらあるという。


 そして、同時に魔物退治を進めていかなければならないのだ。


「畑の魔虫程度なら平民でも退治できるから、彼らに任せてしまおうかとも思ったのだが、それについてはどう考える?」


 私は収穫した野菜などの加工では街全体をあげて取り組むようにしたが、ジョノミディスは春の段階からそれをするつもりだったらしい。


 確かに、私たちが手掛けることのできた畑は領地全体からするとほんの一部だ。周辺の村はほぼ何もできていない。秋以降は魔物退治を頑張ったが、夏の収穫は例年通りだ。


「魔力を撒く畑を増やしていくことを優先するので良いと思いますけれど、雷光の魔法を惜しんでそれほど時間が変わるでしょうか?」

「はっきり言って変わらぬと思います。」


 ジョノミディスのやり方に意を唱えたのはフィエルだ。魔力を撒ける畑の数は、最終的に馬の体力が問題になることが原因だと説明する。


速歩(はやあし)の馬上から魔力を撒いていくのが最速かと思うのだが、その速さでは平民はついて来れぬ。やはり速歩(はやあし)の馬上から雷光の魔法で魔虫を退治していかねば、せっかく撒いた魔力が無駄になってしまう。」


 馬上から魔力を撒く、ということに多くの者たちが怪訝そうに眉を寄せる。昨年、教えたやり方は桶に水を注いで、そこに魔力を詰めていくというやり方だ。


 素早く行うには、魔法で生み出した水を一々桶に注ぎ入れずに空中で一気に魔力を詰めてしまえば良いのだが、屋内での練習ができないために特にそのやり方は教えていない。


 桶に水を入れるのは、初心者が失敗しないようにという補助的なものなのだから、面倒だったら省けば良いだけだ。そのくらいのことは、自分で考えてやってほしい。


「馬を休ませている間に、歩いて魔力を撒くとか魔物退治をするとか、そこでの工夫を考えねば量をこなすことはできません。」


 騎士たちも含めて計算すると、一人が一日に処理できる区画の数は二百にもならない。もっとも時間がかかるのは外縁部での魔物退治で、一人あたりだと一時間に一区画分にもならないほどだ。


「魔物の死骸を集めてるのは平民に任せて、私たちは次々倒すことだけを考えるようにするのが良いと思います。」

「畑にそんなに魔物が出るものなのですか?」

「貴族がきちんと管理している畑では、魔物はほとんど出ませんが、平民だけだとあまり期待できません。特に、外縁部はいくらでも魔物が出てくると思った方が良いですよ。」


 ハネシテゼの説明に多くの者が愕然とする。畑に出たことがある者たちも、全部を見て回ることはしていないようだ。恐らく、昨年の私たちのように、一部の畑だけで実験的にやっているのだろう。

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