表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴族令嬢はもふもふがお好きなご様子  作者: ゆむ
中央高等学院2年生
104/593

104 季節は待ってくれない

 私たちの進捗がどうであろうとも、種()きの時期はやってくる。

 二、三日は遅らせることができても、一週間二週間という単位で遅らせれば収穫の減少につながってしまう。


 魔力を撒き終わった区画はどんどん耕して種()きを進めていって構わないのだが、それは全体の半分にも満たない。一日に千五百区画に魔力を撒いていっても、残り三万を終わらせるには二十日は掛かる計算だ。



 母と話をした結果、文官たちも畑の作付の管理で一度種を()く畑を見に行くということになり、それに伴って私たちにも彼らとの話し合いという時間が必要になる。


 進捗が悪いにも関わらず、やることばかり増えていってどうにもならない。


「騎士を、もう少しお借りすることはできないでしょうか。」

「七人だ。それ以上は出せぬ。」


 長兄(ラインザック)に頭を下げにいくと、意外なことに七人を貸し出してくれると言う。


「ただし、魔力量はそれほど高くない。優秀な者を畑に回すほどの余裕はない。」

「強力な魔物の退治は優先すべきことですから、仕方がありません。」


 中級や下級の騎士でも、魔力が少なくても、やれることはある。馬の世話や、農民との伝達係というのも大切な仕事になる。


 それに、いくら少ないといっても、一人一日に十四や二十八区画も撒けないということもないだろう。七人いれば九十八から百九十六区画だ。役に立たないということはないはずである。



 東門が開くと同時に畑に出て、一気に作業を進めていく。東側は、実質的に今年になってから初めてなので、農民たちへの説明も必要で結構大変だ。


 文官たちも農民と顔合わせを済ませ、どこに何を植えていくかの話を進める。


 この東門付近は、昨年私たちが管理していたので割と話がしやすい。こちらで何を植えるのか決めるという話も素直に頷いてくれた。



「東門付近は、魔物の数も少なめだな。昨年、魔物退治をしたことが効いているのだろうか?」

「でしょうね。今年、徹底的にやれば、来年は楽になるかも知れません。」


 放っておけば魔物は増えるというが、限度というものはあるだろう。


 今回、私たちだけで完全に魔物を根絶するのは無理だろうが、農民が容易に退治できる数まで減らしてしまえれば、数年かけて根絶することもできるだろう。



 私とフィエルと騎士たちで一千百区画に魔力を撒き、一日は終わる。


 文官たちも忙しなく動き回り、「ここは芋を植える」「大菜だ」「丸瓜を」「ここから先は大麦だ」と農民たちに作付の指示をしてまわっていたし、種()きはどんどん進んでいくだろう。


 作付に関しては農業組合とも話をしなければならない。父や兄たちは命令をすれば良いと思っている節があるが、種の数が足りなければ農民たちにはどうすることもできないだろう。


 私たちの立てた計画はあくまで指針ということで、現場の判断で変えて行くことも必要だ。



 農業組合に適時指示を出して農民に種を配り、野菜や麦などの種が撒かれていく。本来はそこにさらに魔力を撒いていきたいのだが、まだ一回も魔力を撒いていない区画の方が先である。


 昨年は同じ区画に何度も魔力を撒いていたし、追加の魔力撒きは苗が少し大きくなってからでも大丈夫だとおもう。



 頑張って魔力を撒き、門に近い区画は全て終わらせることができているが、北東や南西など、門から遠い地区では未処理の畑にも種()きが始まってしまう。


 種播きの時期が少し遅くても大丈夫な作物を選ぶにしても限度がある。菜っ葉ばかり大量に作らせるわけにはいかないのだ。生産を増やしたい麦や芋は、早めに種を()いてしまわなければならないのが辛いところだ。



「バッツァグーン様とワイトェピア様は一旦終了となります。種()きをしている最中に魔力を撒くことはできませんから。」

「すべてに撒くことはできていないのですが……」

「仕方がありません。私の見通しが甘かったのです。種を()き終わってからできることをやっていくだけです。」


 仕事が終わっていないことに二人は申し訳なさそうな顔をするが、二人の所為ではない。魔物が出てくる数や、天気についての見通しが甘かったのは私の責任だ。


「今回の報酬は、作物が実ってからお渡しすることになります。穫れた作物をお送りするのとお金とどちらが良いでしょう?」

「作物はどれくらいの量になるのですか?」

「一抱えほどある木箱が何十かになると思います。」


 実際に収穫が上がってみないと最終的な数は分からないが、一箱や二箱という量ではないことは確かだ。家族や使用人たちの食事に困らない、というかどう処理するか困るくらいの量が届けられるかもしれない。


「親とも相談してからでよろしいでしょうか?」

「構いません。最初の収穫でも二ヶ月ほどは先ですから。」


 二人とも返事は保留したまま家へと帰っていった。食べきれない量の収穫物が届けられても困ってしまうだろうし仕方が無い。



 その後は、私たちは種()きが終わった畑に魔力を撒いていく。魔物を退治したあとの畑は魔力を撒くだけで良いので、一人で一日に六百以上の区画に撒くことができる。


 フィエルと騎士もあわせれば、追加で魔力を撒ける区画は一日に二千を軽く超える。一回目の魔力撒きがこれくらいの速さで進めば、全部終わらせることができただろうという勢いである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ