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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-5.エルフィン、いなくなる
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4.秘密結社VOID

「……でかいな」


 米国、ネバダ国家安全保障施設。

 荒涼たるネバダ砂漠にて本格的に建造の始まった宇宙ステーションの外壁を見上げ、岡本は呟いた。

 小さな部品を打ち上げて宇宙で組み立てると岡本は思っていたのだが、まず地上で外側を組み立てて水や土や動植物や資材などを積み、オカルト力で宇宙に打ち上げるらしい。

 やっぱオカルト力はとんでもねーな。

 そんな事を岡本は思いながら、部品を担ぎ上げるアランを見上げた。

 黒島では黒の十四軍のデタラメさに一般住民みたいに見えてしまうが騎士アランもやはりオカルト。船サイズの部品をオカルト力で持ち上げ組み立てている。 

 働いているのはスーパーおかると労働組合非納得派だけではない。

 部品を作っているのは生産軍も使っているグレムリン。ロボもいる。怪物も。

 まだ姿を現してはいないが黒の艦隊のような者達もいるかもしれない。直径数百キロの母艦ならばこの程度のものを宇宙に持ち上げるなど楽勝だろう。

 日本にあれだけオカルトが出たのだから当然米国にもオカルトは出る。

 公式には発表していないが米国もかなりのオカルトを囲い込んでいるらしい。その元締めが秘密結社VOIDという訳だ。

 岡本は呟く。


「昔、米軍基地には宇宙人が住んでいるって噂があったなぁ……」

「おや、私達が来る前には宇宙人がいらしていたのですか」


 背後からかかる声に岡本が振り返れば、にこやかに笑っている……らしい仮面。

 秘密結社VOIDの幹部の一人、Dだ。

 岡本は頭を下げた。


「Dさん、お疲れ様です」

「お疲れ様です。岡本君、事務所でお茶でもどうですか?」

「すみません。何もしてないのに」


 もう一度、岡本はDに深く頭を下げた。

 設計や製作は米国の科学者や技術者とオカルト達、組み立てはほとんどオカルト。

 だから岡本ら人間が出来る事はあまり無い。

 プレハブ事務所の掃除や荷物整理、食事くらい。

 岡本はスーパーで働いていた事もあり、生産軍が作った調理器具を事務所に持ち込み食事の提供を行っていた。

 騎士アランにばかり働かせていては悪いと思ったからだ。


「気にする事はありません。世界を渡った者達は夢で見た君らを慕って来た者達です。多少の事は大目に見てくれますとも」


 そんな岡本にDは手を振り笑って答えた。


「それに君は君に出来る事をしている。見ているだけ、遊んでいるだけの者も多い中、君の労働組合の作るカレーや牛丼はオカルト達からも大好評ですよ」

「ありがとうございます」

「さあ、お茶にいたしましょう」


 岡本はDと共に事務所に歩きはじめた。


「しかしここ、大丈夫なんですか?」

「うちのOが放射性物質を集めましたから、今は普通の砂漠ですよ」

「へぇ」


 元々はネバダ核実験場と呼ばれた核爆弾の実験場。

 発表されているだけでも千回近くの核実験が行われている。

 残留放射能も残っていたはずだがVOIDの幹部の一人、『黒曜の騎士』ことOが回収したらしい。

 まったくオカルト様々だ。


「核兵器とやらの実験だそうですな。一体どんな兵器なのですか?」

「質量をエネルギーに変えるとものすごい力が発揮されるそうですよ。E=Mc^2だったかな?」

「なるほど。よくわかりません」

「私も教科書とネット検索だけなので、理屈はさっぱり。ですが過去の戦争で二度使われた核兵器の威力は人類を震え上がらせるほどのものでした」


 第二次世界大戦中、広島で爆発した原子爆弾『リトルボーイ』。

 核出力十五キロトン、TNT爆薬一万五千トン分の威力があったと言われているが、その時にエネルギーに変わった質量が0.68グラムだそうだ。

 一グラムに足りない質量がエネルギーに変わっただけであれだけの威力らしい。

 世の中まったくオカルトだと思う岡本である。


「なるほど。私達の世界における黒軍や光の黒騎士のようなものですな……彼らは今、何をしていますか?」

「黒島で楽しく遊んでますよ」


 黒の十四軍はこっちの世界でも核以上の脅威ですよ。

 岡本はそんな事を思いながら事務所に入ると、声をかける者がいる。


「岡本君、牛丼つゆだくで頼むよ」

「V代表、お疲れ様です」


 背広にネクタイ、そして仮面。

 ビジネスマンの雰囲気を感じさせるこの男は、秘密結社VOID代表のVだ。

 岡本は頭を下げた。


「代表、岡本君は私とのお茶が先約です」

「では私もお茶にしよう。茶菓子はきのこ? たけのこ?」

「在庫はまだありますからお好きなものをどうぞ」


 Dはどこか高貴な雰囲気を持つ紳士といった感じだ。仮面だが。

 『黒曜の騎士』と名乗ったOは黒光りする鎧にやはり仮面。

 Iにはまだ岡本は会った事は無いが、この調子ならきっと仮面だろう。

 VOIDの幹部、皆仮面。

 しかし飲食に影響無し。仮面を外す事もずらす事もなく飲食する。

 黒の十四軍の輝きのようなものか。輝き仮面か。それとも輝き透過か。

 そんな事を考えながらVとDと共に席につき、茶を飲む岡本だ。


「V代表、その仮面で良く米国から仕事を任せてもらえましたね」

「『オカルトですから』で納得してもらいました。秘密結社VOIDは明朗な会計に適正な納税に法の遵守、さらに社会貢献。それに比べれば仮面など些細な事」


 オカルト秘密結社VOID、かなり模範的。

 そうして信頼を米国から獲得したらしい。本当にどこが秘密結社なのか謎だ。


「そうすると黒の十四軍よりも昔からこちらの世界に?」

「その通り。私が一番の古株、Oが六年前、Iが三年前、そして私がスカウトしたDがつい最近です」

「役に立たない新参者でございます」


 Dが苦笑し頭を下げる。


「いやいや、貴方には貴方の役割がある。そして貴方にも貴方の目的がある。それで良いではありませんか」

「ありがとうございます」

「あれ? Dさんはこちらの世界の誰かに会いに来たのではないのですか?」

「他の幹部の方々は知りませんが、私は違いますよ」

「それでは、Dさんはなぜこの世界に?」


 首を傾げる岡本に、Dが答えた。


「そうですなぁ、言うならば……『親心』ですかな」

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[一言] 怪しい。怪しいが故にシリアスにもコメディにも振れそう。
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