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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-3.オカルト、ぞくぞく
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4.恋はさめるもの(2)

「あ、店長!」「大吉様」「井出さん」「大吉様」


 黒の十四軍と自衛隊有志の黒島歓迎音頭をかきわけて最前列に出た大吉を、動画配信している竜二とノエル、出迎えている谷崎とフォルテが出迎える。


「谷崎さんが言ってた俺みたいなのってアレですか?」

「ええ 彼は風間タケシ。井出さん以降、初めて複数人オカルトを連れて現れた者です」


 指さして聞く大吉に谷崎が頷く。


「これって井出さん並にハマってたという事なんでしょうか?」

「そうかもしれませんね。まあ、相手側の理由は色々だと思いますが」


 谷崎が聞いて来た事は大吉にもわからない。大吉は起きる間も惜しんで寝ゲーだったがオカルトにも選ぶ理由は色々ある。相性と言うしかないだろう。

 この風間タケシはどんな理由なんだろうな……いや、今はそれよりハーレムか。

 大吉は呟いた。


「すげえ。初めて見たよハーレム」

「……私から見れば井出さんも同じようなものですよ?」

「ええっ!」「ハーレム!」

「エルフィンさん眩しいっ! 目が、目が!」


 谷崎の言葉に大吉は驚愕し、エルフィンはべっかと輝き谷崎の目を潰す。

 うろたえる谷崎を映画の悪役みたいだと思いつつ、大吉はタケシを見る。


「あつーい」「太陽、眩しいーっ」「タケシ、ここが黒島?」

「そう、東京都黒島特別区。ここから俺達の新たな恋が始まるんだ」

「もう、タケシったらぁ」

「あっはっは」


 人族六人、サキュバス三人、獣人族一人。皆女性。

 囲まれて笑いながら降りてくる風間タケシは見た目さわやか青年。タケシは黒島歓迎音頭に手を振りながら大吉の前に立った。


「風間タケシだ。同じハーレム同士よろしく!」

「いや、俺はハーレムじゃ……」「ハーレム!」

「眩しいっ! 目が、目が!」「「「タケシ!」」」


 べっかー。

 輝くエルフィンがタケシの目を潰す。

 谷崎と同じく映画の悪役のようにさまようタケシを彼女達が支えて歩く。

 すまんタケシ。しばらく彼女達の肩を借りてくれ。


「井出さん、井出さん助けて!」

「谷崎さんすみません、うちのエルフィンがすみません」

「うちのエルフィン!」

「ぬおっまた眩しい! 目が、目が!」


 まあ、イチャコラする分には一向に構わない。

 黒島住まいは世界にオカルト迷惑をかけなければ基本自由。

 だからよろしくやってくれ。

 大吉はタケシを見送り、谷崎に肩を貸して役場に向かおうとしてタケシをほわんと輝きながら見つめる者に気付く。

 フォルテとノエルだ。


「ふぅん……ノエル、あの方をどう見ますか?」

「竜二様の方が断然ステキです!」

「そうでしょうね。大吉様の方が断然ステキですわよね」

「いや、それはひいき目だろ」

「「そんなことはありません」」


 ほわわん。二人がサキュバス輝く。


「このフォルテ、男力を見抜く眼力には自信がありますの」

「男力の成長著しい竜二様があのようなモヤシに負けるはずがありません」

「でもサキュバス三人もいるだろ? あいつらはどうなんだ?」

「えーと、お試し期間?」

「なんだそりゃ?」


 ノエルの言葉の首をかしげる大吉。

 フォルテが答えた。


「サキュバスも恋は盲目ですから……でも、恋は育てなければさめるものです」


 そして一週間後、フォルテの言葉は現実となった。

 大吉がいつものようにトラックターミナルで仕事をしていると、タケシが転がり込んでくる。

 あー、雄馬と竜二を思い出すなぁ……と、大吉が昔を懐かしみながら聞く。


「どうした?」

「女達が出て行った!」

「へ?」


 初めて聞いたよ。オカルト退場。

 フォルテの言った通りの事が起こったぞと大吉が思っていると、役場から谷崎とフォルテが歩いて来る。

 うろたえるタケシにフォルテが言った。


「風間さん、あなたが連れてきた彼女達は私の所で保護しております」

「な、なんで出ていったんだよ?」

「恋がさめたから。だそうです」


 オカルト三くだり半だ。

 タケシはフォルテの言葉にまず唖然。そして叫ぶ。


「腹減った! 二日前から何も食べてない!」

「いや、衣食は自分で何とかしてくれよ。というか皆どこかで働いてるぞ?」


 農業、漁業、サービス業、そして自衛隊。

 入植者はみんなどこかで働いている。オカルト島といっても食べ物は必要だし、服などを買う為には金が必要なのだ。


「エクソダスの中では彼女達が何とかしてくれたんだ!」

「お前……寝ゲーは夢だぞ?」


 ゲーム環境という至れり尽くせりな環境でブイブイ言ってるだけの事だ。

 夢も恋もさめるもの。

 現実は都合の良い事だけではない。自分はゲームと違うのにゲームと同じ感覚で過ごすタケシに愛想の尽きた彼女達がフォルテを頼ったのだ。


「オカルトが来たから勝ち組人生だと思ってたのに、なんでお前はよくて俺はダメなんだ!」

「いや、俺はちゃんと働いてるから」


 うわぁ、こいつ昔の俺みたいだ……と、少し引いてしまう大吉を庇うように、フォルテがタケシの前に立つ。


「そうですわ。大吉様は私達に頼ってなどおりません」

「黒島は違うのか?」

「黒島を作ったのは私達黒の十四軍の都合。大吉様がここに住んでいるのは私達に合わせてくださっているからです。黒島での仕事も大吉様が谷崎さんに頭を下げて得たものであって私達が世話したものではありません」

「フォルテの言う通りです」


 今度はエルフィンが前に立つ。


「大吉様は黒の十四軍の私達に関係無く働くお方。私達がいなくても一人で立って歩けるお方です。私が食事を作らずとも大吉様は自分でお作りになりますし、身の回りの事も自分でこなします。大吉様はそういうお方なのです」

「まあ、エルフィンのご飯はとても美味いけどな「美味しい!」輝くな!」


 ぺっか。

 大吉の言葉にいちいち輝くエルフィンだ。


「恋とは互いに育てるもの。片方だけの奉仕では、さめるのも当然ですわ」

「その通りです。互いの輝きと熱があってはじめて激しく燃えるのです」


 そして二人はタケシに叫ぶ。


「「私達の恋なんて、まだ始まってもいないのに!」」

「ぬあっ眩しい! 目が、目が!」


 べべっかー!

 エルフィンとフォルテ、二人の妬みの輝きに目潰しを食らうタケシ。


「まあ、確かに始まってないな……エルフィンの輝きで、みんな死にそうだし」

「ええっ!」


 今だって大吉を赤外線で猫ぬくぬくにする位輝いているのだ。

 舞い上がったら超新星爆発で放つといわれるガンマ線バーストくらい放つだろう。

 なにしろ宇宙を切り裂くデタラメ一号。太陽系が蒸発するくらいやりかねない。

 そんなダメ無限力を色恋で発動されてはたまらないのだ。


「あなたのダメ無限力はどれだけダメ無限なのですか!」

「ああっ、すみませんすみません師匠!」

「フォルテです。こんな出来の悪い弟子なんてノーサンキューですわ!」


 さめた恋は戻らない。

 結局、タケシが連れてきたオカルト達は人族はリリィ、サキュバスはフォルテ、獣人族はエリザベスが世話する事になった。


「軍団が二人になったです!」

「そりゃ良かったね」


 エリザベス、獣人族仲間が出来たと大喜び。

 そしてオカルトと縁が無くなったタケシは本土へと送り返される事となった。


「なんて言えばいいのかな……本土復帰おめでとう?」


 初の黒島流し解除なタケシに、大吉は何とも微妙な言葉を呟くのであった。

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