70.ある国の騎士4
-エンペラス国 第1騎士団 団長視点-
王城を歩くと人々の顔に少し恐怖がにじみ出ている。
それは仕方のないことなのだろう。
今までエンペラス国がどこかに攻撃を受けたことは、ここ数百年にわたり1度もない。
魔石の力を強化して国の結界を強めた。
その結果、どの国より強固な結界を持つ国となった。
それがたった1、2分だったとはいえ攻撃を受けた。
窓から外を見る、雲1つない快晴。
この快晴の空をも自由に変えることができる存在に。
「ここに居たのか」
友人の声が後ろから聞こえた。
確認するまでもなくその声には疲れが見える。
あの空をかけた雷の攻撃から、王は魔石の近くで何重にも結界をはり過ごしたという。
その近くには魔導師たちをおき、安全の確保に努めた。
だが、それをあざ笑うかのように20日後、
数個の光の球が現れ強固に張り巡らされた結界を消し去り、魔石を攻撃。
魔石のひびは大きくなり今では縦に大きなひびとなっているらしい。
目撃者によれば森から一直線に無数の光が走り去ったと言われている。
その光は国民の目にも見え動揺をあたえている。
王を狙った雷は位置が外れ王に当たることなく足元を焦がした。
騎士たちは王の結界が王を守ったと思った、俺も一瞬そう考えた。
だが、冷静になるとある1つのことが気になりだした。
本当に、外したのか?
王城は森からかなり離れている。
森の入り口としている場所に行くにも10日ほどかかる。
森の中心となればその数倍はかかるだろう。
そんな場所から王を狙ったのだ。
おそらく王が森を焼くと命令したため。
それは森の中心から世界を見渡せるということなのでは?
そしてその場所からこちら側を的確に知り、狙えるということなのではと。
そうでなければあのタイミングで攻撃はできない。
「どうしたのだ?」
「試されているようだと感じてね」
「試す? 誰が、何を?」
「この世界の王がこの国を」
友人の息をのむ音が聞こえる。
色々考えて俺は1つ自分が勘違いしていることに気が付いた。
そう、おかしいのだ、とても。
魔石に入った小さなひび、魔導師が確認してどこからかの攻撃によると判断された。
そう、攻撃なのだ。
その時に気が付くべきだった。
「魔石の力を完全に無効化できる相手だ」
「どういうことだ?」
攻撃を防ぐのは結界だ。
通常結界は攻撃された魔法を無効化する力が込められている。
魔石で強化されている結界だからその力もそうとうなものだ。
「結界内のモノを傷つけるには絶対に結界を破る必要がある」
「確かに、そうだが」
「この国の結界は一度として破られていない」
「……」
そう、国の結界が破られていないのに攻撃が中のモノを傷つけているのだ。
最初に気付くべきだった、攻撃をされているのに結界が破れていないという異常に。
魔導師たちは気づき始めている。
そのことを王にどう知らせるべきか悩むだろう。
この国は魔石で強化され守られている国だから。
王が考えを改めれば、もしかしたら。




