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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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60.バイバイ。

「離れろ」


「えっ?」


俺の言葉に、戸惑った表情を見せる神。


「この場所を、教えてくれてありがとう。ここにいたら危険だから、すぐにアルギリス以外を神国に飛ばす。早く、彼等の傍に行って」


俺の言葉に躊躇した様子を見せる。

でも、アルギリスを見て悲しそうな表情を見せると、2柱の下に行った。


「呪界王様も一緒ですよね?」


3柱に視線を向ける。


「俺は、行かない」


俺の言葉に、悲し気に顔を歪める神達。

そんな彼等に笑顔になる。

そして、アルギリスに視線を戻した。


「ゆるさん、ゆるさん。お前だけは、いや、お前達もだ! 我の邪魔ばかりする屑どもが!」


怒り狂い、大声で叫ぶアルギリス。

肌は黒くなり、呪いの残骸によってその姿がどんどん見えなくなって行く。


「もういいな」


アルギリスのこの姿を見れば、後ろにいる神達の目も覚めるだろう。

彼等がアルギリスに心酔しているかは、知らないけど。


異空間は、俺の呪神力で満ちている。

だから、全ての神達を神国に送る事が出来る。


目を閉じ、神達を神国に移動させるイメージを作り上げる。

よしっ、出来る!


「移動!」


アルギリスの後ろにいた神達の姿が消え、後ろの気配も無くなった。


「あ゛? な、にが? 消えた……貴様、何をした!」


異空間から俺とアルギリス以外が消えた。


「安全な所に移動させただけだ」


俺の言葉にぶわっと呪いの残骸が揺れる。


どうやって呪いの残骸を自分の力に変えているんだ?

呪われたら普通は、体を失い魂だけになる。

魂になっても苦痛は消えず、魂が消滅するまでそれは続く。

アルギリスは自分の姿を維持している。

どうやって?


「お前、はははっ。終わりだな。右腕も完全に消滅したぞ。どうだ? 我と共に来ないか? 今ならまだ間に合うぞ。死ななくても済むぞ」


アルギリスの言葉に、右腕を見る。


「……まぁ、しょうが無い。覚悟の上だ」


消えてしまった物を惜しんでもどうしようも無い。

この姿でも、アルギリスを倒す力はある。

だから、大丈夫。


「ちっ、なぜお前は我の手を取らない! 死ぬのだぞ! 違う、お前は消滅だ!」


いや、やばいな。

呪神力の溜まり方が遅い。

どうやらそっちにも、消滅の影響が出てしまったようだ。


「死ぬのは怖い。消滅も。でも、満足してしまったからな」


これで少し、時間を稼げるかな?


「生きていれば、もっと満足出来る地位を得られるぞ」


いや、これ以上は必要無い。


「アルギリスはどの神より長生きだ。満足した時はあるのか?」


「……」


「俺は、力を持ち過ぎた。この力はいずれ、弊害を生む」


既に神国で俺の事を創造神にしようと言っている愚か者がいる。


「強い力が必要な時は終わる。次に必要なのは、平穏な時代を継続させる力だ。その力を俺は持っていない。だから次に引き継ぐんだ。そして、俺は幸せな事に信頼出来る者に引き継げた。だから、消滅しても後悔は無い。俺が出来る事は、全てやり切ったからな」


黙ったままのアルギリス。

彼は今、何を思うのだろう?

力では俺に負け、地位も無い。

こんな時に、庇ってくれる仲間もいない。

孤独だな。


「くそっ。お前を殺したら、お前の大切な者を1人残らず殺してやるよ! 呪界もぶっ壊してやる!」


時間を稼いだけど、呪神力が足りない。

もう少し話を引き延ばせないかな?


「アルギリス、お前は神ではなかったんだな」


呪いの残骸を、力にするなんてな。

今、アルギリスはどういう存在なんだろう?

それに、どうやって神になっていたんだ?

神力まで使っていたよな。


「違う、我は神だ! この世界で最も偉大な存在となる神だ!」


でも今のアルギリスを支えているのは呪いから出た残骸の力だ。

神とは程遠い。


「神力ではなく、呪いの残骸を力にしているのに?」


「うるさい! 神だ。我は神なのだ」


ぶつぶつと呟くアルギリス。

呪いの残骸に覆われているため、彼の姿は見えない。


ふわっと呪いの残骸が俺の下に飛んで来る。

そっと触れると、おびただしい数の悲鳴が聞こえた。

そして見えた光景。


多くの神達が、苦しみながら死んで行く。

それを、楽しそうに見ているアルギリス。

呪いは、殺された神達の「祈り」から生まれたようだ。


「この思い叶えてあげたいな。それに……」


彼等の祈りが、アルギリスに利用されるのは嫌だな。


「神だ。我は最高の神になるのだ……お前は邪魔だ」


黒い影から黒く濁った緑の目が俺を見る。


「死ね」


アルギリスから、呪いの残骸で作った黒い塊が飛んで来る。


「5重結界」


パリン、パリン、パリン。


「くっそ!」


アルギリスが悔しそうに叫ぶ。


良かった、防げた。

でも、3枚も結界が割れてしまったな。

さっきまでは1枚も割れなかったのに。


異空間を満たしていた呪神力は、全て回収しないと。


アルギリスから、強大な力を感じた。

どうやら、俺を殺すために全ての力を使う事にしたようだ。


困ったな。

今ある力を使い切っても、アルギリスに掛けられた呪いを全て浄化出来ないかもしれない。


目の前にある黒い影から感じる殺気に、ふるっと体が震える。

さすがに、長生きしてきただけあるな。

落ち神から感じた恐怖なんて比較にならないほど恐ろしい。


時間が無いな。

回収した呪神力だけで、浄化をするしかないか。


『大丈夫』


んっ?

声が聞こえたけど、どこからだ?


『俺の力を譲渡する』


あれ?

胸が温かい。

もしかして、俺の核?

意思があったのか?


『渡す』


全身に力が満ちる。

呪神力では無いけど、大丈夫そうだ。


「ありがとう」


ごめんな。

核になってくれたのに、消滅する事になってしまって。


『俺は消えた方がいい存在。だから気にするな』


分かった。


アルギリスに向かって、全ての力が籠められた浄化魔法をぶつける。


「浄化!」


「今度こそ」


アルギリスからも、攻撃が飛んで来る。


向かって来た攻撃が、俺の浄化の光に触れると消えた。

それを見て焦ったのか、アルギリスを包み込んでいる呪いの残骸が動く。

おそらく逃げようとしたのだろう。

でも間に合わず、浄化の白い光に包まれた。


呪いの残骸が光に変わり消えて行く。

どんどん消えて行く光景は、とても綺麗だ。

でも、その中から見えてきた存在に顔を歪めた。


いや、歪めようとして気付く。

体が消えている事に。


ぎりぎりセーフ?

いや、最後の浄化魔法で消えたのかな?


それよりアルギリスは、浄化で倒せたのか?


『大丈夫みたいだ』


呪いの残骸を全て失ったアルギリスの体内から、石のような物が数個転がった。

そして床に落ちると、ボロボロと崩れて行った。


あれは?


『核みたいだ』


核?

なぜ、アルギリスから数個の核が転がるんだ?

俺は例外だったが、神でも核は1個だ。

もしかして、神達から奪った核?

それを使って神になりすましていたのかな?


「なへ? なんえ」


床に座り込んだアルギリスは、崩れた核に手を伸ばしガタガタと震える。


「……がぎゃああぁぁぁ」


アルギリスが苦痛の悲鳴をあげる。

そして苦しそうに床を転がり始める。


何が起こったんだ?


『呪いだ』


あれが。

あまりの痛がり様に、ちょっと引く。

そんなに苦しいのか。


「ひぎゃああぁぁぁ」


異空間に悲鳴が響く。

しばらくすると、悲鳴が止まる。

それに正直ほっとした。

いつまでも聞いていたい声ではない。


バタン、バタン。


アルギリスが床をのたうち回る。


ん~、これ最後まで見ないと駄目かな?


『確かに、あれは見たくないな』


なぁ、魂の消滅は痛みがあるそうだけど、俺は痛みを感じなかった。

もしかしてずっと守ってくれていたのか?


『俺だけの力ではない。多くの者達の祈りが痛みを消した』


そうか。

俺は守られていたのだな。


バタン……パラパラパラパラ。


アルギリスの体が砂に変わって行く。

その間も苦しいのか、体の一部がガタガタと動いている。

本当に最後まで苦しむんだな。


もっと長く苦しんで欲しかったけど、これで良かったんだよな。


『あぁ』


俺の役目は終わりだ。

それより、どうしてもっと早く声を掛けてくれなかったんだ?

意思があったなら、一緒に色々な事が楽しめたのに。


『深い眠りについていて、意思が戻ったのは少し前だ。助けたはずなのに、消滅しかかっているから驚いたよ』


それは、ごめん。


『あと少しのようだな』


うん。

最後に皆に会えないかな?


ピンっと引っ張られる感覚がして、見えたのは仲間達の姿。

凄い、移動が出来た。


あぁ、ヒカルの持つ呪神力が強くなっている。

呪神王としての俺は、死んだんだな。

あとは魂が消滅するだけか。


ありがとう、皆。


そうだ。

移動が出来るなら、各国の状態を見てみたいな。


行けた~。

ここはエンペラス国だな。

あれ?

えっ?

……どうして、俺の石像が広場にあるんだ?


許可したかな?

いや、してない。

あぁ、俺の石像に祈ってる!


んっ?

あの行列は?

……蜘蛛達とアリ達が屋台に行列を作っているのか?

知らない間に、いい関係を築いていたみたいだな。


それより石像!


『あははは』


笑い事じゃない!


まって、エンペラス国以外にも?

まさか、次!

えっと、ここはエントール国か。


『あったぞ』


広場にある石像。

しかも、ここでも石像に向かって祈っている。


オルサガス国も?

ははっ、だよな~。


『この国の石像が一番、大きいな』


そうだな。

全く、いつの間に作ったんだ?

一言言ってくれれば……止めるな。

全力で。


『次は?』


ん~魔界かな?

行けるかな?


ぐっと引っ張られる感覚に目を閉じる。

止まったので目を開けると魔界にいた。


凄い、入れた。

魂だけの存在だからか?


『なぁ、あれって』


えっ?


『ここにもあるんだな』


どうして魔界に俺の石像があるんだよ!

これっていいのか?

俺は呪界の王だぞ?


『皆、幸せそうだし良いだろう』


確かに、石像の周りにいる者達は笑顔だな。

……まさか、神界には無いよな?


『……』


あっ、ここまでのようだ。

神界に俺の石像があるかどうかは確かめられそうにないな。


『あるだろう』


無いかもしれないだろう。


『いや、絶対にある』


まぁ、可能性は高いけどな。


あっ、消えそうだ……最後まで一緒にいてくれてありがとう。


『どういたしまして』


そうだ、残りの力で「呪界、魔界、神界の平穏が続きますように」


バイバ、イ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] ありがとう 感謝の気持ちでいっぱいです 涙はこぼれるけど 読んで良かった
[一言] 本当に翔は消滅してしまったんですね…。奇跡が起きて欲しいな最後まで周りの人の幸せしか考えてない翔が凄いです。私だったら無理だと思う出来れば奇跡が起きて皆んな幸せになるハッピーエンドを希望しま…
[一言] 今の章に入ってから、ずっと覚悟しながら読んでましたが、やはり消滅、ボロボロに泣いています(T ^ T) 次の更新を待つの、今までで一番ドキドキしています、どうか、どうか( ; ; ) 翔に…
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