51.アルギリスの復活? 6
―アルギリス視点―
おかしい。
何が起こっている?
なぜ、神国と魔界に……我の力が送れなくなっているのだ?
「どうしてこうなった? いつから、おかしくなった?」
全ては予定通り……いや、途中で何度か邪魔は入ったな。
でも、その都度しっかりと処理をした。
邪魔をした者達は全て消し、その関係者まで調べ上げ全て研究材料とした。
そのお陰で邪魔者はいなくなり、あとはゆっくり神国が壊れていくのを待つだけだった。
それなのに、いつの間にか……いつの間にか予定外の事が起こって。
我が少し干渉しても、我の思う通りにならなくなって。
それで……いつの間にか神国も魔界も我の影響を受けなくなって。
そしてとうとう、最後の……最後の繋がりまで……切れたのか?
神達も魔神達も、あれらが世界を不安定にするための物だと気付いていなかった。
我と繋がっていて、世界に少しずつ影響を与えている事も。
それに数が多く、一気に排除する事は不可能。
それなのに、我が力を送っても反応が一切無い。
少し前までは、しっかり反応を返したのに。
何が起こった?
そういえば、少し前に大きな力の振動を感じた。
あれは、呪界からだったな。
呪界を作った人間が何かしたのか?
アイオン神が守る世界から勇者召喚された存在。
ありえない力をその身に宿した、我にとって邪魔な者。
本当にあの人間が?
くそっ。
もっと早く、あの勇者召喚の異常に気付いていれば!
見習いが行ったせいで失敗したと思っていたが違う。
勇者召喚は絶対に4人、4人分の力しかない。
だから、巻き込まれるはずが無い。
いったい誰が、勇者召喚にあの人間分の力を与えた?
アーチュリ神が言った様に、本当にあの得体の知れない力なのか?
昔から感じていた、正体を掴む事が出来ない力。
あと少しで均等が崩れると思っても、その力が邪魔をしてきた。
しかも、痕跡を探しても見つける事が出来ない不気味な力。
「いつも、いつも邪魔をしやがって」
どうする?
最後の繋がりだった物とも切れた。
これでは、神国にも魔界にも影響を与えられない。
どうすれば、この状態を変えられる?
そうだ。
捨ててしまって、新たに始めればいいのでは無いか?
その準備は既に終わっている。
そう、もしもの時を考えて作っておいた物が役に立つだろう。
成功させるためには、誰を動かす?
あぁ、マーサリア神が生きていれば任せられたのに。
まさか、呪いに襲われ死ぬとは思わなかった。
何度も、呪力に近付き過ぎない様に注意しておいたのに、馬鹿は奴だ。
それにこうなると、アーチュリ神が邪魔だな。
奴の目的は弟だ。
いい加減、諦めればいいものを面倒くさい。
そうだ、あの人間に「アルギリス」を殺させよう。
そうだ。
それが良い。
そうすれば、どの世界も警戒を緩め隙が生まれる。
その隙を狙って、神国と魔界の中に異空間を作ろう。
「うん、いいな」
人間をここに招くには、ハリーヒャ神が最適だろう。
そういえばハリーヒャ神は、呪い達に少しずつ受け入れられ始めた様だ。
あぁ、それを利用すればいい。
呪い達が、呪界に行きたがっているとハリーヒャ神に思わせよう。
ハリーヒャ神はきっとアルギリスのために、聞かなかった事にするだろう。
それを我がそっと「大丈夫だ」と促してやろう。
そうすれば、ハリーヒャ神は動く。
「ここに人間を来させる方法は……後で考えるか」
ここにあの人間が来れば、「アルギリス」の下へ。
そこで呪い達が「アルギリス」のために、死んでいると分かればあの人間はきっと「アルギリス」を殺す。
まだ神になりたての人間。
神が神を殺す事の、罪深さを知らないだろう。
「アルギリス」を殺したら、人間だけでなく呪界に呪いが掛かる。
「だが呪界に呪いが掛かったらどうなるのだ?」
神や魔神達だと、最終的には呪いに落ちる。
だが……呪界に住む者達は元々呪いに落ちているのか?
まぁ、世界が呪われるのだから、狂っていくだろう。
まずはアーチュリ神の処分だな。
だが、最近のアーチュリ神はハリーヒャ神から信頼を寄せられている。
下手に処分すると、ハリーヒャ神が不審に思うか?
いや、ハリーヒャ神の最も大切な存在はアルギリスだ。
アーチュリ神がアルギリスを殺そうとしたと言えば……。
いや、見せた方がいいか。
だが、どうやって?
「あぁ、そうか。弟を殺そうとすれば、アーチュリ神は我を襲う。それを利用すれば、アーチュリ神が『アルギリス』を襲っている様に見えるはずだ」
何だ、とても簡単だな。
それを成功させるためには、アーチュリ神を少し追い込んでおく必要があるな。
弟に異常が見られると言えばいいか。
そうすれば、アーチュリ神は勝手に追い込まれていくはずだ。
フッと笑みが浮かぶ。
最近は、苛立つ事も多かったが今日はとても良い日になりそうだ。
まぁ、これまでの事を全て諦めるのは遺憾だが、仕方ない。
全ては、我のための神国を作るためだ。




