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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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48.助けを求める祈り。

ヒカルが他の呪神達とは異なる成長をしている。

特に気になるのが、呪界を見渡せる事。

これは呪界王の力の1つだ。

もしかして、俺の後継者だからだろうか?


「あまり無理はしないようにな」


「うん。大丈夫」


今ヒカルは、呪界に招いた星の状態を「見渡す力」を使って確認している。

かなり集中力が必要なのか、額から汗が流れている。


そろそろ20分。

止めた方がいいだろうか?

あっ、ヒカルの手が力強く握られているみたい。


「ヒカル、そろそろ終わろう」


「ふぅ」


俺の言葉に、肩で息をするヒカル。

もう少し早く止めた方が良かったかもしれない。


「大丈夫か?」


「大丈夫。この『見渡す力』を使うと、色々な勉強が出来るよね」


「そうかな?」


「うん。だって、星の隅々まで力を満遍なく広げる必要があるから微妙な力加減が学べるし、微妙な力加減を維持するのには集中力が重要になるから、集中力を鍛えるのにも役立つし」


……えっと。

俺は、見たいと思ったら勝手に映像が浮かぶんだよな。

だからヒカルの言っている満遍なく広げるとか、集中力が必要だと思った事は無い。


「主は違うの?」


俺の困った表情に気付いたのか、ヒカルが不思議そうに首を傾げる。


「うん。特に呪神力を意識して使ったことが無いから」


魔法の発動に呪神力を使って入るけど、どう使うかと思案した事は無いよな。

俺が考えるのは、イメージだけだ。


「そうなんだ。やっぱり主は凄いね」


「いや、それだけ集中力を継続出来るヒカルの方が凄いだろう」


20分だぞ、20分。

俺だったら、途中で挫折しているな。


「ふふっ、主にそう言って貰えると嬉しいな。そうだ!」


「どうした」


「今見た星なんだけど」


「うん」


ヒカルが確認していたのは、神族が50人ほどいた星だな。

呪界に来る1ヵ月前に、それまで星を守っていた神が亡くなったと聞いている。


「神族が皆、呪族になったみたい。最後の1人が呪族になったお祝いをしていたよ」


「そうか」


呪界がユグドラシル、エコの力を中心に周り初めてから星に住む神族達にも変化が起きた。

最初は戸惑ったようだけど、変化を楽しみだしたから安心したんだよな。


「今日はここまでにしようか」


「うん」


呪界を見渡せる力があるなら、星の権限にも触れることが出来るのだろうか?

明日にでも、少し調べてみようかな。


星の権限では、命花に花が咲いた今なら星に生命を誕生させる事が出来る。

反対に、星にある生命を滅ぼす事も出来るようにもなるので、扱いに注意が必要な権限だ。

魔法とは違うが、呪界王の力の1つだ。


ヒカルと別れて、エコの様子を見に行こうと外に出る。


ぱこん。


「えっ?」


今聞こえた音は、以前に湖で聞いた音に似ていないか?

もしかして、あの時ん感じた「呪力」か?

呪界にある呪力とは少し異なった、神国にあった闇と同じ呪力。

気になるな。


「湖に行こう」


急いで地下神殿に向かう。


ぽこん。


「やっぱり、あの音だったか」


湖のある空間に着くと、音が前の時よりも鮮明に聞こえた。

でも、湖から現れたのろくろちゃん達は気にもしていない。

前と同じで、聞こえていないのだろう。


「きた~、2回目。疲れてる」


「用事があって来たんだ。疲れていはいないよ」


傍に来たのろくろちゃんが、くるくる俺の周りを飛ぶ。

その様子を見ながら、湖のほとりで膝をつく。


ぽこん、ぽこん。


前の時より、力強く聞こえるみたいだ。


湖にそっと手を浸ける。


「あっ」


すぐに呪界の呪力とは少し異なる呪力を掌に感じた。

消えないように俺の力で守って……水の中からそっと出す。


「大きさは、変わらないんだな」


手の中にある5㎜ほどの小さな力。

でも、伝わってくる力は以前とは比べものにならないほど強い。


『ここだ! 彼らを助けてくれ』


聞こえた。

やはり助けを求めているんだな。


そしてこの力から感じるのは、闇と同じ物。


「アルギリスが関係していると断言して良さそうだな」


あとは場所。

神国ではなくアルギリスが作りあげた異空間。


「俺が本気で探せば……」


かなり力を使う事になる。

今の体でそれを行えば……。


『お願いだ、彼らだけでも。彼等は被害者なんだ』


あれ?

この声を運んでいるのは呪力だと思ったけど、神力を感じる。

でも、んっ?

小さな力からは、呪力を感じる。


『呪界の王よ!』


あっ、声だ。

声が聞こえる時だけ神力を感じる。

これは、願いに神力を注いだ祈りだ。

でもそれならどうして呪力が?


「もしかして、呪いがこの声の主を守っているのか?」


「主」


えっ?


振り返るとリーダーがいた。

それに少し驚く。

ここまで来ることは、ほとんどないのに。


「どうした?」


「主は、何かするような気がしました」


「あ~、そうか」


さすがだな。


「反対する?」


「……いいえ。主のする事に意味の無い事はありません。私は、主を支えるだけです」


「ありがとう」


よしっ、何かあってもリーダーがいるから大丈夫。

あとは、この体が耐えられるかだな。


手の中にある力に、ゆっくりと呪神力を注ぐ。

ゆっくり、ゆっくり。


湖に手を浸け、小さな力を放つ。


「俺を導いてくれ」


目を閉じ、動き出した小さな力を追う。

頭の中に、湖の中の様子が浮かぶ。

次々に変わる映像に少し頭が混乱してくる。

それを深呼吸する事で落ち着かせる。


んっ?


暗闇?

小さな力は、光に包まれているので見失うことは無いが、此処はどこだろう?


『こっち、こっち』


声?

さっきの声とは違う。


『こっち、こっち。あの子、助けて。あの子は、ちがう』


あぁ、これ。

のろくろちゃんの同じだ。

複数の呪いが力を合わせて、俺に声を届けているんだ。


彼等に呪神力を!


「つっ」


鋭い痛みが、指先から腕に走る。

これは……。


『こっち。こっち』


あれ?

神力を強く感じる。

やはり神国に、アルギリスの作った異空間があるのか?


あっ、小さな力を見失った。

どこだ?

……いた。

ずっと真っ暗な映像だから、見失うとすぐに迷子だな。


あぁ、やばいな。

痛みで、意識が。


「えっ?」


暗闇からパッと明るい映像が頭に浮かぶ。

その急な変化に、意識がはっきりとした。


良かった。


これは、どこか空間だよな。

随分と殺風景な部屋だけど、かなり広い。

それに奥に感じるのは、呪力の塊?


「ごほっ」


「主!」


えっ?

口を覆った手に視線を向けると、真っ赤に染まっている。


「うわ~、これは酷い」


湖から手を出し、その場に仰向けになる。


「主」


「大丈夫」


いや、大丈夫か?

湖に浸けていた左手の感覚がない。

視線を左手に向け、力を籠めて握ってみる。


「……」


動かない。


「ヒール」


……無理か、動かない。


左手は犠牲になったけど、彼等の居場所は掴めた。

何も無いより良いだろう。


そういえば、呪力のあった空間にいた時に視線を感じた。

あれは、誰だったんだろう?


俺に声を届けた者ならいい。

でも、アルギリスだったら?


もしアルギリスなら、俺に声を届けた者が危険にさらされるかもしれない。

でも、あ~。


「すぐに動くのは無理そうだな」


右手を胸にあてる。

まだだ。

まだ壊れるなよ。


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