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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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41.こっそりと。

両腕の痛みで目が覚めた。


「はぁ」


今日は痛みがいつもより酷いな。


少しだけ、呪神力を解放した時に期待した。

もしかしたら魂の消滅を先延ばしに……違うな。

魂の消滅から逃れられるのではないかと。


でも、現実はこの通り。

呪神力の解放では、魂の消滅を防ぐ事は出来ないようだ。

というか、体内のバランスが変わったせいで、悪化したような?

……まぁ、しょうがない。


ゆっくり呼吸をしながら、体内で流れる力を調整する。

腕に流れる力を減らすと、早く痛みが引くと気付いたのは昨日。

痛みを抑える方法が無いかと探っている時に見つけた。

痛み自体は無くならないが、酷い痛みで苦しむ時間は減る。


「皆、おはよう」


痛みが落ち着くと起き上がり、梁にいる孫蜘蛛達に声を掛ける。

すると、一斉に孫蜘蛛達の前脚が上がる。

毎日梁にいる孫蜘蛛達は変わるのに、毎回綺麗に揃うのが不思議だ。


「おはようございます」


んっ?

部屋に入って来たリーダーに首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「創造神の使いが来ています」


えっ、創造神の使い?


「神国で、緊急事態が起きたのか?」


パネル越しだが1週間に1回、創造神とオウ魔界王とは話をしている。

2日前にも、話したばかりだ。

それなのに、わざわざ呪界に使いを送って来たのか?


「という事なんですが」


「えっ?」


リーダーの言葉に、首を傾げる。

「という事なんですが」とは、含みがあるな?


「もし使い寄こすとしたら誰だと思いますか?」


ここで質問?

何だろう。

いつものリーダーと違う。


「えっと、アイオン神かフィオ神。俺と面識にある神だろうな。2柱が忙しかったらガルアル神かカシュリア神かな?」


「ガルアル神とカシュリア神もですか?」


「そう。この2柱は前から呪界に来たいと騒いで……希望しているそうだから。2柱とも面識はあるし、カシュリア神に至っては1度呪界に来ているから選ばれる可能性が大きいだろう」


神国で大騒ぎしているとは言わないでおこう。


「そうだったんですか」


「うん。ユグドラシルの確認も、本当はアイオン神とフィオ神だけでよかったんだ。でもガルアル神がどうしても来たかったんだろうな、周りを説得したらしい。『今回はとても重要な案件だから、自分の目で見て確認する必要がある』と」


アイオン神の話だと説得というか、脅しに近かったようだけど。

そういえばフィオ神が、「カシュリア神がきっと」と頭を抱えていたな。


「もしかして使いは、カシュリア神か?」


ユグドラシルの件で来なかったから、別件で来たとか?


「いえ、違います。見た事のない神です」


リーダーの言葉に、おかしいと感じる。

神国とはいい関係を築き始めているが、それは本当に最初の1歩という感じだ。

だから、使いにする者にも気を使うはず。

それが見た事も無い神を使いに?


「やはり主も、おかしいと感じますよね?」


だからさっきの質問なのか。


「あぁ、そうだな。その使いは執務室に?」


「まさか、家には入れません。ですが本当に使いだと面倒な事になるので、ウッドデッキにいます」


「そうか。ありがとう」


急いで着替え、ウッドデッキに向かう。


「えっ?」


この神力は……でも、見た目が。

いや、たぶん彼女だ。


「カシュリア神?」


俺の言葉にリーダーから驚いた気配がした。


「凄い! よく分かったな。見た目では全く分からないようにしてきたし、神力も誤魔化したのに」


興奮した様子のカシュリア神。

見た目は全く違うけど。


「どうして分かったんだ?」


不思議そうに聞いて来るカシュリア神に、溜め息が出る。


「そんな事より、どうしてそんな姿で呪界に?」


まさかガルアル神に対抗して、なんて事は無いだろうな?


「私も呪界に来たかったんだ。それなのにガルアル神にだけ許可が下りるなんて、不公平だろう?」


その、まさかなのか?


「ガルアル神もカシュリア神も、暇なのか?」


「暇では無いな。ははっ、嫌な仕事ばかりが増えていくよ。はぁ、全く反省していない神を相手にするのは、とても疲れるよ。罰には、不服ばかりだし」


声のトーンが落ちていくカシュリア神を見る。


そうとう、仕事に疲れていないか?


「だから、たまには全く関係のない場所でゆっくりしたかったんだ」


あぁこれは、かなり仕事に参っているな。

「大丈夫か?」と聞いたら「大丈夫」と答えるだろうから……。


「そうだ。神族との関係が、改善したそうだな」


全く違う話をしてみるか。


「えっ。あぁ、まだ始めたばかりだけどな」


カシュリア神の補佐、神族のアリフィルが言っていた。

「最近は、私達に興味が出たみたいです」と。

アイオン神からも「『関係を改善には、どうすればいいか』と聞いて来た」と。


「アリフィルが、嬉しそうだったよ」


初めて褒められたと、嬉しそうに報告してくれたんだよな。


「そうか。彼女が……」


嬉しそうな笑みを見せるカシュリア神。

ほんの少しでも気分転換出来ればいいな。


カシュリア神の前にお茶とお菓子が置かれる。

どうやら「創造神の使い」として、認められたようだ。


「あっ! 創造神の使いとは、神国で何かあったのか?」


カシュリア神の登場ですっかり忘れていた。


「えっ? ……あっ!」


どうしてカシュリア神まで忘れているんだ?


「特に問題はない。というか、ただの報告なんだ」


「んっ? 報告?」


「そう。実は呪神力の力が、解放された日から少しずつ神国に流れ込んでいたんだ」


「そうなのか?」


創造神からは何も聞いていない。


「うん。それで2日前に落ち着いた」


「神国で問題は?」


「ない。全く問題は起きなかった」


カシュリア神の言葉にホッとする。

まさか神国に呪神力が流れ込むなんて。

あれ?

もしかしたら、魔界にも呪神力が流れ込んたかもしれないのでは?


「創造神が、神国に結界を張った事は知ってるよな?」


「うん。闇を全て引き取った後に、創造神が結界を張ったよな」


ただ、少し不安定な結界だったけど。


「そう。だけどあの結界は、未完成だったんだ」


だから不安定だったのか?

というか、そんな重要な話をして大丈夫なのか?


「それが、昨日確認した結果。結界は完成していた」


「えっ? まさか呪神力が? 確かに、結界を強める力があるみたいだけど」


神力で張った結界を、呪神力が強化?

そんな事が起きるのか?


「強める力か。なるほど」


「結界が完成したのは良い事だと思う。だが……」


呪神力が影響した。

創造神はどう思っただろう?


「創造神は大喜びだったので、問題ないだろう」


「……えっ?」


「周りの神達も『さすが呪界王の力だ』と大盛り上がりだった」


あ~ははっ。


「そうか。彼等が問題視していないなら良いんだ」


創造神に集まっている支持が揺らがないなら、それでいい。

でも……、問題だよな。


「ごちそうさまでした。美味しかった」


リーダーが出した4人前ぐらいあったお菓子を、見事に完食したカシュリア神は立ち上がる。


「仕事に戻るよ」


「うん、それが良い。皆、心配しているんじゃないか?」


姿を変えて来たという事は、黙って抜け出して来た可能性がある。


「あ~。たぶん」


カシュリア神が、少し嬉しそうに笑う。


「アリフィルによろしく」


俺の言葉にカシュリア神が、嬉しそうに頷く。

前では考えられないほど、いい関係になっているようだ。


「ありがとう」


「どういたしまして」


気分転換が出来たなら、それでいい。


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