38.やっぱり。
―ヒカル視点―
オアジュ魔神ではなく、オアジュ呪神の言葉を聞いて「やっぱり」と思った。
なぜなら、主の作り出した力が仲間を傷付けるはずが無いから。
それに呪界では、力の性質を無視して受け入れてきた。
光の魔力、闇の魔力、神力、魔神力。
こんなに色々な力があるのに、反発せずに共存している。
だから、呪神力だってすぐに馴染むのは当然なんだ。
主は不思議がっているけど、誰もこの結果に驚かないだろうな。
俺は数日前、主に俺の魂が人の物なのか聞いた。
別に俺としては、神でも人でも良かった。
まぁ、嫌いな神だとちょっと思うところはあるけど、昔ほど毛嫌いはしていない。
創造神とか、アイオン神とか神にも色々いると知ったから。
だから、正直疑問を解決したかっただけ。
でも、どう聞けばいいのか分からなかったから「俺も人の魂だよね?」と聞いてしまった。
もしかしたら、聞き方に迷っていたから不安そうに見えたかもしれない。
主に「不安にさせた」と言われて、聞き方を間違えた事に気付いた。
俺は本当に、どっちでもよかったのに。
というか、ただ答え合わせをしたかっただけなのに。
主の魂が限界で消滅すると聞いた。
そして、次の呪界王は俺だと。
あの時は本当に驚いた。
でも冷静になった時に「あれ? 俺も人の魂だよね?」と思った。
でも主が俺を苦しめるはず無い。
だから「もしかして」と、思った。
そして、オアジュ魔神からこの世界の主導権を奪ったと思い出した。
そういえばあの時使った力は、魔神力だったと。
「もしかして人の魂じゃないのかな?」と考えて、「なるほど」と納得。
主に聞こうと思ったんだけど、色々あってすっかり忘れてしまった。
だって俺の魂が人だろうが神だろうが、どうでもよかったから。
それより、皆の力でオープンしたお店の新商品の方が重要だった。
その新商品は、思いのほか売れた。
関わった皆と喜んだのはいい思い出だ。
そしてお店の事が落ち着くと、俺の出した答えが正解なのか気になった。
それで聞いただけ。
まさか、あんな聞き方をしてしまうなんて。
今も主を前にすると、ちょっと緊張するのが駄目なんだろうな。
主に話を聞いた後、飛びトカゲに報告。
彼は「やっぱり」と言って笑っていた。
ウサもクウヒも、子供達も他の皆も「やっぱり」と同じ反応。
考える事は皆一緒だね。
「主が、仲間が苦しむ事を選ぶはずが無い」と。
飛びトカゲに教えてもらいながら、自分の中にある力を調べてみた。
主は神の魂と言った、魔神ではなく。
でも俺は、魔神力を使った記憶がある。
それが疑問だったから。
調べて分かった事は、魔神力を持っていた。
これは予想通り。
そして神力も持っていた。
主と一緒だったので、ちょっと嬉しい。
そしていつ、呪神力が貰えるのかと期待した。
主から送ってもらう呪力は、世界に流れている呪力とは濃さも強さも全く違う。
初日は、その強さに体が悲鳴をあげた。
まぁ、それは一瞬だったけど。
オアジュ呪神を通じてオウ魔界王に聞くと、普通は数日寝込んでもおかしくなかったらしい。
なんというか、「さすが主の力だね」と飛びトカゲ。
そして、たまたま話を聞いていたウサとクウヒと笑ってしまった。
「ヒカル?」
主の声に、ハッとする。
「ごめん。何?」
「いや、何か考え込んでいたから。どうしたんだ?」
「あぁ、少し前の事を思い出していただけ。それより話は終わったの?」
オアジュ呪神を見ると、満足そうに笑っている。
それに首を傾げてしまう。
「凄いぞ、ヒカル。呪神力が、もう体に馴染んでいる」
「えっと、そうなの?」
それが、凄い事なんだろうか?
「オウ魔界王によれば、主力の力が変わるから体が反発する事も考えられるそうだ。まぁ、呪力に慣れた体だから、そうはならないだろうと言っていたけど。でも馴染むまでに、つまり呪神力を自由自在に使うには、1カ月ぐらいはかかるだろうと言われていたんだ」
あぁ、なるほど。
「でも、これ」
オアジュ呪神が指の先に力を出現させる。
その力を見て、息を吞む。
「呪神力?」
「そう。もう自由自在に扱えるんだ。凄いだろう?」
オアジュ呪神が楽しそうに、呪神力で白く光る玉を作る。
「こんな事も出来るぞ」
オアジュ呪神の言葉と同時に、白く光っていたのが黒い光に変わる。
「凄い」
本当に自由自在に扱っているみたい。
「この白い光は治癒の力が強い。そして黒い光は、強い結界を張る時に役立つようだ」
「「へぇ~」」
んっ?
隣を見ると、主が俺と同じ反応をしている。
オアジュ呪神が、それに呆れた表情を見せた。
「どうして主がその反応なんだ」
「未知数という言葉が怖くてずっと閉じ込めていた力だから、何が出来るのか全く知らないんだ」
主が怖がる時は、周りに影響を及ぼす可能性がある時だ。
おそらく呪神力が暴走して呪界に被害が出たらどうしようとか、考えたんだろうな。
「あっ」
オアジュ呪神を見る。
そうだよ。
彼が成功したんだから、次は!
「主。俺も呪神になりたいです」
真剣な表情で主に願い出る。
だって、呪神力が問題ないと分かったんだから。
「えっと……オアジュ魔、呪神。本当に体に異変は無いんだな?」
「あぁ、大丈夫だ。呪神力の流れもスムーズだし、力のコントロールも魔神力より良いぐらいだ」
オアジュ呪神に向かって小さく頭を下げる。
それを見て、彼は小さく笑った。
「はぁ、分かった」
やった!
これで本当に主を支える事が出来る。
先ほどのオアジュ呪神のようにベッドの上に仰向けになる。
そして目を閉じた。
やばい、期待でドキドキしている。
「行くぞ」
「うん」
ゆっくりとお腹の辺りから、今まで感じた事のない温かな物が流れて来る。
あれ?
この温かいのが力?
うわっ、体中に広がっていくのが分かる。
これ凄く気持ちいい。
「どうだ?」
んっ?
「大丈夫か?」
もしかして、終わったの?
俺の中にあった神力と魔神力に意識を向ける。
あっ、呪神力に入れ替わっている。
というか、いつの間に?
「どうした?」
「えっと、全く抵抗なくスムーズに呪神力に入れ替わったみたい。神力や魔神力を飲み込んだ感覚も無かったよ」
もしかして飲み込んだわけではないのかな?
起き上がって、指の先に呪神力を集める。
不思議な事に、既に呪神力が体に馴染んでいると感じる。
「うわっ、もう出来るんだ」
オアジュ呪神が、呪神力で作った白く光る玉を出すと驚いた声をあげた。
「うん。あと……」
呪神力の中に感じた別の力。
まさか……。
呪神力の力で作った白く光る玉の隣に、神力で作った光る玉と魔神力で作った光る玉を出す。
「「「……」」」
凄く簡単に、三つの力が操れてしまった。
「そういえば、主も出来たっけ?」
オアジュ呪神の言葉に、主は頷くとすぐに3つの力の玉を作り出した。
そういえば主は、必要な力だけを出現することが出来たんだった。
「ヒカルにも主と同じ力があるんだな。俺は呪神力の中に混ざった魔神力だけを取り出す事は出来ないようだ」
そうなんだ。
「えっと、今は問題がないと言ってもあとで問題が出るかもしれない。数日は無理に力を使おうとせず、様子を見てくれ」
主の言葉に、オアジュ呪神と頷く。
大丈夫だとは思うけどね。
執務室を出て、飛びトカゲの下に向かう。
「あっ」
「どうしたの?」
一緒に執務室から出てきたオアジュ呪神を見る。
「カーシャとマカーシャを呪族にしてもらっていない」
「あぁ、そういえば言っていたね。どうすれば呪族になれるの?」
カーシャさんとマカーシャさんが呪族になったら、ウサとかクウヒ。
それに子供達もきっと呪族になりたがるだろう。
「呪力を中心的な力にすればいいはずだと、オウ魔界王が言っていた」
呪力が中心的な力か。
そういえば最近、主から貰った力が俺の中で中心的な力になり始めていたよな。
ん~、あっ呪神力に変わってる。
「ヒカル?」
「あぁ、ごめん」
あとで、呪神力で何が出来るのか飛びトカゲと確かめよう。




