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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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37.この世界で生きる。

いつも通りヒカルに力を送る。

最近、ヒカルの中にある力が変わった。

呪力が、他の力を抑え中心的な力になったようだ。


でも、これでいいのだろうか?

呪神は、呪力より呪神力が中心的な力にならないと駄目なんだけど。


「どうしたの? 何か悩み事?」


ヒカルが俺の様子に気付き首を傾げる。


呪神力の事を、話した方がいいよな。

後回しにすると、話す切っ掛けが無くなる。

……忘れちゃうし。


「今、ヒカルに送っている力は呪力だと気付いているよな?」


「うん。呪神になるには、これでは駄目だよね」


気付いていたのか?


「神の魂を持っていると聞いてから、色々と考えて気付いたんだ。神は神力、魔神は魔神力。それなら呪神になるには呪神力が必要だって。そして俺の中には、呪力があるけど呪神力は無い。主から貰っている力は呪力だけだと。この話が出たって事は、呪神力を貰えるの?」


期待に満ちた目をするヒカルに驚く。


「呪神力が怖くないのか? あぁ、言ってないからか」


「えっ?」


俺の言葉に不思議な表情をするヒカル。


「呪神力なんだが、不安定なんだ」


「そうなの?」


「あぁ、記録装置で調べたが『未知の力』と『成長途中』と表示されるんだ。俺自身でも調べたが、大きく変化する時がある。だから、ヒカルに送って問題が起きるのではと心配している」


俺の言葉に、思案顔になるヒカル。


「心配してくれるのは嬉しい。でも俺は、挑戦したいと思う」


「えっ? 挑戦したいのか?」


「うん。主の力は守る力だよ。だからきっと呪神力もそうだと思うんだ。もし何かあっても、そんなに大事にはならないよ」


ヒカルの言葉に、首を横に振る。


「そう言ってくれるのは嬉しいが、呪神力はかなり強い力だ。何かあったら、これからの人生に影を落とすかもしれない」


呪神力は、神力や魔神力よりはるかに強くなってしまっている。

問題が起きたら、きっと大変な事になる。


「ん~、大丈夫だと思うんだけど」


ヒカルが信用してくれるのは嬉しいが、やはり危険は冒せない。


コンコン。


「誰だ?」


「オアジュ魔神がいらっしゃいました」


リーダーの言葉に首を傾げる。


オアジュ魔神が、新しい大地からわざわざこっちに?

何か問題でも起きたのだろうか?


「どうぞ」


「急に来てすまない。どうしても叶えてほしいお願いがあるんだ」


オアジュ魔神は部屋に入ると、真剣な表情で俺を見た。

その表情に少し緊張する。


「分かった。とりあえず座ってくれ」


「ありがとう。あっ、ヒカル? 悪い。邪魔をしてしまったみたいだな」


ソファに座るヒカルを見て、申し訳なさそうな表情をするオアジュ魔神。


「用事は終わって、話をしていただけなので大丈夫。それよりどうしたの?」


ヒカルの言葉に頷いてオアジュ魔神をみる。


オアジュ魔神はヒカルの隣に座ると、俺に向かって頭を下げた。


「俺を、呪神にしてくれないだろうか? 今はまだ、呪界に住む魔神だ。でも俺は、この世界で最後まで生きたい。そしてこの呪界に貢献したい。カーシャとマカーシャも同じ思いだ。2人も呪族になりたいと言っている。頼む」


「…………えっ?」


オアジュ魔神を呪神に?

カーシャさんとマカーシャさんを呪族に?


「それ、いいね! 俺は賛成。俺が次の呪界王だから、オアジュ魔神がオアジュ呪神になってくれていたら助かる」


「いや、んっ?」


呪界王を押し付ける事になるヒカルの希望は叶えたい。

それは本心だ。

でも今ヒカルに話した通り、呪神力は不安定だ。


「今は無理だ」


「俺では、無理だと言う事か? 力が足りない?」


「そうではなく。俺が持っている呪神力に問題があるんだ」


オアジュ魔神に、呪神力の問題点を話す。


「『成長途中』なのは仕方ないだろう?」


「「えっ?」」


オアジュ魔神の言葉に、ヒカルと同時に声をあげる。

どうして仕方ないんだ?


「呪界はまだ完成されていない。星が増えているし、星を管理する神獣達もようやく決まったところだ。呪界の形が変われば、呪神力も変わる」


「そうなのか?」


「そうらしい」


「そうらしいとは?」


「元魔神王のボルチャスリ魔神に聞いたんだ。『呪神になるにはどうすれがいいのか』と。彼は魔神力を捨て、呪神力を受け入れればなれると言っていた。でも、この世界はまだ成長途中だから、呪神力が不安定かもしれない。まぁ、変化し続けている力を取り込んでも、死ぬ事は無いから挑戦してみたらどうだって」


「死ぬ事は無いの?」


ヒカルの言葉にオアジュ魔神が頷く。


「体に馴染むまで深い眠りにつくことはあるみたいだけど、死ぬ事は無いって」


オアジュ魔神の言葉にヒカルの表情が明るくなる。

そして、パッと俺を見る。


いや、そんな期待した目をされても。

深い眠りにつく可能性があるんだろう?


「あれ? どうしてボルチャスリ魔神が呪神になる方法を知っているんだ?」


「あぁそれは、神が魔神になる方法と一緒だからだよ」


「神から魔神?」


「そう。神国から落とされた神は、強制的に魔界で魔神力に晒されて魔神になるから。まぁ、無防備な状態で魔神力に晒されるから、亡くなる神も多かったみたいだけど。でも魔神から呪神には、問題は無くなれるだろうって」


「ボルはどうして『問題ない』と、判断したんだ?」


「呪界にいる者は、既に呪力を受け入れている。土台が出来ているから、問題ないって言ってたよ」


本当に?


「ボルチャスリ魔神の所に来ていたドルハ魔神も『大丈夫だろう』と言っていた。というかドルハ魔神は、呪神力の役目を担っている呪力が『恐ろしい力だ』と、言っていたよ。普通は、呪神力が呪界を支える基本の力になるんだろう?」


「まぁ、そうだな。呪力で上手く回っているから、深く考えた事が無かったけど……確かに呪界を回す力は呪神力だよな」


そうか。

呪力で呪界を回すのはおかしいんだ。

これも修正して行かないと駄目だろうな。


「それで主、俺の望みを叶えて貰えるのだろうか?」


「それは……」


どうすればいいんだろう?

まだ呪神力には不安を覚える。


「俺は主の呪神力が、誰かを傷付ける力だとは思わない。だから、大丈夫だ」


俺を見るオアジュ魔神。

その真剣な表情に小さく息を吐き出す。


「分かった」


「俺の中にある魔神力を全て呪神力に変える必要があるそうなんだ。ゆっくり呪神力を流して貰って良いか?」


オアジュ魔神の言葉に頷く。


「あぁ、座っているより寝っ転がった方がいいだろう」


「すぐにご用意します」


俺の言葉にリーダーが、執務室の隅に簡易ベッドを用意する。

どうしてそんな物が、この部屋にあるんだ?


「主が仕事で疲れた時に使えるように、準備しておきました」


俺が疲れたって……執務室でする仕事なんて、ヒカルに力を送る以外に無いんだけど。

あぁでも、星が増えていけばこの執務室にも書類が集まったりするのかな?


「ありがとう」


とりあえず、簡易ベッドがあって助かった。


オアジュ魔神がベッドに仰向けになり、目を閉じる。

彼のお腹の中心。

胃の当たりに手を載せ、小さく深呼吸する。


呪神力、オアジュ魔神を傷付けるなよ。


ゆっくり、ゆっくり。

呪神力をオアジュ魔神の中に流していく。

彼の中にある魔神力がどんな反応をするのか、正直怖い。

でも、彼が信じてくれた俺の力だ。

きっと、魔神力とも上手く馴染んでくれるだろう。


……あれ?

呪神力を流して随分と経つ。

オアジュ魔神の核から呪神力を感じられるほどになった。

おそらく上手く行っているのだろう。

というか、全く抵抗を感じないんだけど。


「呪神力が、飲み込んだ」


「えっ?」


オアジュ魔神が目を開け、なぜか笑い出す。


「はははっ、予想外だ。主、たぶんもう呪神になっているから調べてくれ。いや、こんな簡単だとは」


オアジュ魔神の言葉に、首を傾げる。

もう、呪神に?

オアジュ魔神を見て、鑑定魔法を掛ける。


「本当だ。呪神になっている」


俺の呆然とした呟きに、オアジュ魔神ではなくオアジュ呪神が起き上がる。


「まさか、魔神力を追い出すのではなく飲み込んでしまうとは思わなかった」


そうだろうな。

俺も飲み込むなんて考えて無かったから。


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― 新着の感想 ―
[一言] 追いつきました。 ( *´艸`) ゆっくり物語がすすみます。 (ここまで、一気に読み切ってしまい、寝不足です(笑)
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