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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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36.「終わり」を望む。

神国から呪界に来た10個の星。

そこに住む神と神族がこの世界の力に慣れたと報告が届いた。

全く抵抗なく馴染んだそうだ。


「驚くほど早く馴染んだな。予定では1年ぐらい時間を掛けようと思っていたんだけど」


俺の言葉に、リーダーから嬉しそうな雰囲気が漂って来た。

それに首を傾げる。


「皆さん、とても気に入った様です。特に呪力は、穏やかな気持ちになると言っていました」


なるほど、リーダーは呪力を褒められて嬉しかったのか。


「あっ、龍達と星を繋げないと駄目だよな」


星の管理者になるには、「星の中央に管理する者の力を流せばいい」らしい。

創造神が簡単だと言っていたので、問題が起こる事はほぼ無いだろう。


「それに関してですが、既に繋がっているそうです」


「えっ? 誰が繋げたんだ?」


「龍達です」


「そうか」


俺が行う予定だってけど、龍達が自分で繋げたのか。


「星や龍達に問題は?」


「大丈夫です。星にも龍達にも問題は起こっていません」


それなら良いか。

あとで龍達にお礼を言っておこう。


「主。今日はこれから時間がありますか?」


「大丈夫だけど、どうしたんだ?」


リーダーを見ると、安堵した様子が分かった。

というかリーダーは俺の予定を全て把握しているのに、どうしてわざわざ聞いたんだ?


「星に住む神達と神族達が主に会いたいそうです。時間があるならいいですか?」


「今日?」


「はい」


それは急だな。


「大丈夫だけど、ここに来るのか? えっ? 今、何をしたんだ?」


リーダーが、小さな緑の魔石が付いた封筒を取り出すと、手の中から消した。


「はい。皆さんこちらに来るそうです。用意しておいた手紙を、ロープに送りました」


皆さん?

もしかして全員で来るのか?


それにしても始めて見る手紙の送り方だな。

これもセブンティーンかナインティーンが作った道具なのかな?

気になる。


「主。ここに来るのは、各星の代表者達だけです」


「そうか」


そうだよな。

さすがに全員では来ないよな。

あれ?

口に出していないのに考えがバレた。

さすがリーダーだな。

あっ、ちょっと呆れた雰囲気で見られてしまった。


「時間は?」


「2時頃に、こちらに移動して来ます」


「分かった」


んっ?

2時?

あと、15分で2時だけど?


「1柱の体調がここのところ悪いそうです。その彼の体調に合わせたため、急に予定が決まったと聞きました」


体調の悪い神がいるのか。


「そんなに悪いのか?」


「今までの無理が、体調に影響を及ぼしているようです」


頼って来た神族達を守るために、星を隠し通して来た神か。

本当に大変だっただろうな。


「彼の体調に合わせたという事は、ここに来るのか?」


「はい。どうしても、一度会いたいそうです」


「『来るのが大変なら、俺から会いに行くから無理しなくてもいい』と、今からでも伝えて貰えるか?」


「もう、伝えています」


えっ?


「主ならそう言うと思い、勝手に伝えました。すみません」


「いや、それは良いよ。それで?」


「『王の手を、煩わせる事は出来ない』と言ったそうです」


「そうか」


無理をしなければいいけど。


2時を少し過ぎた頃、庭に扉が浮かび上がった。


「来ましたね。準備は終わっています」


リーダーが机の上を確認して頷く。

今日も完璧に準備が整っているんだろうな。


「お待たせ~」


俺の子供次代の姿をしたロープに先導されて来た、神達と神族達。

近付く神達から微かな神力を感じ取り、息を吞んだ。


あまりに弱い。

これだと……問題があるな。


「いらっしゃい。今日は会えて嬉しいよ」


ウッドデッキに上がって来た神達に軽く頭を下げる。

そんな俺を見て、神達と神族達が慌てた様子を見せた。


「呪界王様、我々に頭を下げないで下さい」


んっ?

顔を上げると、皆がホッとした表情を見せた。


「今日は時間を取っていただきありがとうございます」


深く頭を下げる神達と神族達に、仕方ないなと苦笑する。


「頭をあげて下さい。座ってゆっくり話をしましょう」


チラッと顔色の悪い1柱を見る。

リーダーが言っていた神は、彼の事だろう。


でも、彼だけではない。

どの神達も、かなり無理をしてきたのだろう。

限界を迎えている。


困ったな。

彼等には、呪神となってもらい星を見守ってもらおうと思っていた。

でも今の状態を見る限り、無理だ。


「この度は、我々を含め多くの仲間を守っていただきありがとうございます。呪界に来てすぐに挨拶をしなければならないのに、こんなに時間が経ってしまい申し訳ありません」


俺の前に座ったのは、体調の悪い神。

かなり無理をしているのか、少し呼吸が荒い。


「そんなことは気にしなくていい。新しい環境に慣れるために必要な時間だったのだから。星にいる神族達に、問題など起こっていないか? なんでも気軽に話して欲しい。あなた達はこの呪界を担う大切な者達なのだから」


俺の言葉に、安堵の表情を浮かべる神族達。

神国での経験が、彼等に余計な緊張感を与えていたのだろう。


「あの、1つお願いがございます。星が落ち着き、神族達が落ち着いたら……」


言葉を濁す神に、小さく頷く。


ここに来た神達は、既に力を使い果たしている。

そんな状態で、よく星を守り切ったものだ。

彼等も、自分達の状態を分かっているのだろう。

だから、目の前にいる神達の望みは「終わり」だ。


「ありがとうございます。ようやく解放されます」


目に涙を浮かべる神達に、笑みを浮かべる。

「彼等の最後が、どうか安らかであるように」と、力を籠めて祈る。


星での生活や神国にいた時の違いなどを聞きながら、星の状態を確認する。

話を聞く限り問題は無く、当分は現状維持で良さそうだな。


「今日はありがとうございました」


神達が、安堵した表情で各星に戻る。

誰も「また」という言葉を言う事は無かった。


「主、彼等はもう」


ロープが神妙な表情で俺を見る。


「分かっている。最後まで苦しむことが無いようにしよう」


「ありがとう」


ロープはお礼を言った後、星に向かった。

きっと神達の様子を確かめに行ったのだろう。


「どうしようかな」


星には管理する龍達がいる。

だから少しの間なら、神が不在でも問題はない。

でもずっとは駄目だ。

星を維持する力を持つ神は、絶対に必要となる。

これは早急に呪神が生まれることを「祈る」必要があるようだ。

そして呪神を生み出すために必要な力を呪界に流す必要も。


手の中に、ある力を出現させる。


「主、その力はなんですか?」


「これは、呪神力だ」


神国にいた時、神力に似た力を作り出した。

その力は俺が呪神になった事で、呪神力へと変化した。


ただこの力は、まだ安定していない。

だから、呪界に流せていない。

ヒカルにもまだ渡せていないから、彼は神ではあるが呪神では無い。

しかも呪力が思いのほか色々出来過ぎる力だったため、呪神力が必要と思わないんだよな。

いや、呪神になるにはぜったに必要なんだけど。


「どうしたら、この力は安定するんだ?」


呪神を生み出すには、祈りだけでは駄目だ。

呪神力がどうしても必要となる。

でも、こんな不安定な力を呪界に流す事は出来ない。


記録装置で「呪神力」を調べてみたが、「未知の力」「成長途中」としか出なかった。

未知の力という部分が怖いよな。

何が起こるか予測がつかないんだから。


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