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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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34天使の浄化。

天使を白帰箱から出すにしても、まずは苦しみから解放するのが先だろうな。


「浄化魔法か」


魔法を色々使って気付いたが、浄化魔法はかなり高度な魔法になる。

おそらく今の俺が使えば、体に負担がかかる。

でも、苦しんでいる天使をこのままには出来ない。


「翔、無理ならこのまま――」


「大丈夫だ。必ず助ける」


ただ、先の事を考えたら俺のこの判断は間違いだろうな。

アルギリスの現状が分からない以上、体に不安のかかる魔法を使わない方がいいだろうから。

でもそれで目の前の天使を見捨てたら、俺は絶対に後悔する。

だから、助ける。

未来、この判断を悔やむ事になるかもしれないけど。


「さて、やるか」


白帰箱の中に俺の力をゆっくりと浸透させていく。

浄化に必要な力が溜まったので、天使が黒い影に押しつぶされる姿をイメージし、そこから解放され自由に飛んで行くイメージを作る。


「浄化」


白帰箱の中が白く光ると、ずっと聞こえていた天使の悲鳴が止んだ。

そして光が消えていくと、天使の姿がはっきりと見えた。


「成功したのかな?」


天使の表情はとても穏やかで苦しんでいる様には見えないが、判断が難しい。

目を覚ましてくれたら、直接確認が出来るのだけど。


パーーーン。


「「「うわっ」」」


目の前の天使がいきなり光に包まれ、視界が光に覆われた。

腕で目を守るが、少し遅かったのかチカチカする。


「びっくりした」


アイオン神の言葉に、そっと腕を下ろす。

周りを見るが、特に攻撃されたような痕跡はない。


「何が起こったんだ? 天使は大丈夫か?」


天使が入っている白帰箱を見て、動きを止める。


「どうしてこうなった?」


アイオン神の問いに首を横に振る。


「さぁ、俺に聞かれても……」


白帰箱の中に、天使はいた。

しかも目を覚ましてくれている。

それにはホッとするが……どうしてまた赤ん坊なんだ?

見た目から判断すると、3歳か4歳。


「「うわ~、かわいい」」


スミレとモモの声に視線を向ける。


「いつの間に?」


さっきまで、この2人は部屋にはいなかった。


「今、来たところです」


リーダーの言葉に頷くと、スミレとモモに声を掛ける。


「どうしてこの姿になったのか分かるか?」


「この姿って、赤ちゃん?」


「うん」


俺の質問にモモが首を傾げる。

スミレは、何か考えているみたいだ。


「スミレ、分かるの?」


モモの質問に、スミレは白帰箱の中の天使に視線を向ける。


「主が、天使に何も求めないからだと思う」


「えっ? 俺?」


俺が求めないからとは?


「あぁ、なるほど」


アイオン神が納得した様子で頷くので、視線を向ける。


「天使は、生まれた瞬間から神の遣いとして動き出す。天使にとっては仕事だ。でも翔は、天使に何を求めた?」


天使に求めた事?


「苦しみから解放される事と、自由だな」


「それは、何も求めていない事と同じだ」


まぁ、確かにそうだな。

苦しんで来た天使に何かさせようなんて思わない。


「だから、ゆっくり傷を癒すためにその姿になったんだろう」


別に大人の姿でもゆっくり傷を癒せると思うけど、天使はそう思わなかったのかな。


「問題は?」


「おそらく無いだろう」


アイオン神の言葉に、ホッと安堵する。

俺のせいでこの姿になって、問題があったら申し訳ないからな。


「失礼します」


部屋に1体の一つ目が入ってくると、白帰箱の中から天使を抱き上げる。

そして、普通に部屋を出て行った。


「えっと?」


リーダーを見ると、頷かれた。

いや、どうして連れて行ったんだ?


「あの子をどうするんだ?」


アイオン神が、不安そうにリーダーを見る。


「お風呂に、ご飯。準備は完璧です」


「……そうか」


呆然とした様子でアイオン神が、俺を見る。

が、俺を見られても困る。

俺も知らなかったから。


「次だな」


答えようがないので、次の白帰箱に向かう。

さっきの事があるので、気持ちを落ち着けてから中を確かめる。

やはり聞こえて来た悲鳴に、小さく息を吐き出す。


大丈夫。

すぐにそこから解放するから。


続けての浄化なので、イメージを作る必要は無い。


あっ、天使に仕事を求めた方がいいのかな?

スミレとモモを見る。

期待した様子で、白帰箱の周りとフワフワと浮いている。


「まぁいいか。よしっ。浄化」


先ほどの天使より、少し大きな赤ちゃん。

今回もすぐに一つ目が連れて行ってしまった。

もしかして廊下で待機しているんだろうか?


「主、どうしました?」


リーダーの言葉に、首を横に振る。


「ちょっと……まぁ、何でないよ」


気になるけど、今は次の白帰箱に向かおう。

後で聞けばいい事だからな。


白帰箱に触れようと手をあげると、ズキッとした痛みが走る。

一瞬だけ動きを止めるが、すぐに白帰箱に手を置く。

ズキズキとした痛みが、両腕に感じられる。

そっと腕に力を籠めると、痛みが増した。


「ふぅ」


痛みに天使の悲鳴。

少しつらいな。


息を整え、白帰箱に力を送り込む。


「あれ?」


天使の悲鳴に違和感を覚える。

1人目、2人目の悲鳴を聞くと、頭がぐらぐらと揺さぶられ、憎しみが湧きあがった。

でも、最後の天使の悲鳴は誰かに対する憎しみより、苦しみが強い。


「早く解放しないと」


浄化を言いかけて、イメージを少し変える事にした。

前の2人より苦しんでいるような気がしたので、黒い影に包まれ苦しんでいる天使が解放され、自由に飛び立つイメージに。


「浄化」


白帰箱の中が白く光る。

そして、そのまま光が部屋の中を覆った。


ビシビシビシ。


不気味な音が部屋中に響くが、眩しすぎて調べられない。


何が起こっているんだ?

天使は大丈夫だろうか?


パン。


破裂音と共に、光が一瞬で消える。

慌てて部屋の中を確かめると、白帰箱が砕けていた。

そして天使が、空中に浮かんでいた。


「白帰箱が壊れた音か?」


アイオン神の言葉に、肩の力が抜ける。

白帰箱が壊れただけなら、


「「あっ!」」


スミレとモモの声に、ビクリと肩が震える。


「どうし、えっ?」


空中に浮かんだ天使の体が、ぽろぽろと崩れ始めていた。

何が起こったのか分からず、ただ愕然とその光景を見つめる。


「主、これは?」


ヒカルの言葉に、ただ首を横に振る。


「どうして、こんな……天使の体が」


アイオン神に応える事なく、ジッと天使を見つめる。

すると、天使の中に丸い光る珠が見えた。

でも、その球には沢山ヒビが入っている。

今もまた、大きなヒビが入った。


ぼろぼろぼろ。


「天使の魂が、限界を迎えてしまったんだ」


何が起こっているのか、分かった。

魂が消滅しかかっているんだ。

これはもう、誰にも止められない。


「魂? 限界?」


アイオン神が、天使に手を伸ばしかけて止まる。

彼女も知っているのだ。

魂の消滅が始まると、もう手立てが無いという事を。


ぼろぼろになって消えていく天使を見つめる。


「助けられなかった。ごめん」


手足が消え、下半身が消え、上半身が消えていく。

最後に残った顔がボロボロと崩れる瞬間、天使の顔が苦痛に歪んだように見えた。


天使の姿が完全に消えた空間を見つめる。

両腕から感じる痛みはかなり酷く、気を緩めると倒れてしまいそうだ。


「スミレ、モモ。ごめんな、最後の天使は助けられなかった」


俺の言葉に、2人は首を横に振る。


「助けたよ。だって、もう苦しまなくて良くなったもん」


モモの言葉に、スミレも笑って頷く。


「そうか」


苦しみからは、解放出来たのか。

それだけは良かった。


申し訳ありません。

2月26日の更新はお休みいたします。

次回の更新は2月28日です。

宜しくお願いいたします。

ほのぼのる500

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