23.かくれんぼ?
「はぁ」
今から始まるかくれんぼに溜め息がこぼれる。
どうしてこうなったんだろう?
昨日、蜘蛛達とアリ達と子供達のチーム対決が決まったら、コアとチャイから不満が出た。
「我々も参加したい」と。
そこで、フェンリル達とダイアウルフ達も参加する事になり、続いてガルム達も参加が決まり、6チームでの対決になった。
カレンも参加したいと言ったが、さすがにあの巨体は大木でも隠せない。
俺が「無理だと思う」と言ったら、拗ねた。
それを見ていた太陽の提案で、上空から敵を見つける偵察隊として参加する事が決まった。
その様子を見ていた飛びトカゲが、龍達を呼び参加表明。
それぞれのチームに1匹ずつ就く事で話がまとまった。
そして、作戦が必要という事でかくれんぼは翌日に持ち越された。
うん、作戦が必要なかくれんぼっておかしいよな。
かくれんぼって、もっと気軽にできる遊びだと思っていた。
だけど夕飯後に参加した作戦会議で、俺が知っているかくれんぼとは少し異なる事が分かった。
俺が知っているかくれんぼは、鬼が隠れている子達を見つけたら終わりだ。
でも、終わらないらしい。
見つかった者は、見つけた者が所属するチームの作った確保場に連れて行かれる。
そして味方チームが確保場に来て、解放してくれるのを待つ。
あれ?
違うゲームが混ざってない?
作戦会議では、隠れる役と鬼役、そして確保場に突撃するメンバーを決めた。
えっ、身体強化で体当たり?
敵チームの動きを混乱させるため?
なんだか、随分と痛そうなかくれんぼだな。
そして今日。
朝からとても天気が良く……寒い。
そろそろ雪が降って来る季節だ。
こんな時に、森でかくれんぼ?
いや、魔法があるから寒さ対策は出来るけど。
「主、楽しみだね」
「うん、そうだな」
桜の楽しそうな表情に、笑みが浮かぶ。
まぁ遊ぶなら、楽しまないとな。
俺は子供チームに参加。
人数が少ないので、獣人の騎士達や神族の子供達。
それに魔族達も参加する。
お昼を食べて、ちょっと休憩後にゲームの最終準備に入る。
まずは捕まえた敵を入れて置く場所の確保。
場所を決めたら、少しだけ地面を掘って椅子を並べておく。
地面に座ると、体が冷えるという配慮らしい。
次に確保場を囲うように木の杭を打ち、縄を張って境界を作る。
この縄の内側でだけ、敵に体当たりをしてもいい。
「そろそろスタートの合図がくるよ」
紅葉の言葉に、全員が空を見上げる。
少しすると、「カーン」という音が響いた。
この音と同時にゲームは本格的に開始する。
「「「「「行ってきます」」」」」
子供達と神族の子供達が、楽しそうに森の中を駆けていく。
身体強化しているので、あっという間に見えなくなる子供達。
その速さに、騎士達が盛り上がっている。
「では、我々も行ってきます」
魔族達も、子供達に続いて森の中に駆けて行く。
彼等は、子供達より移動に時間がかかっているようだ。
「魔族は、身体強化が掛かりにくい体質なんだろうか?」
「えっ?」
「子供達より遅いから」
俺の言葉に、ダダビスが驚いた表情を見せる。
それに首を傾げる。
「掛かりにくい体質ではなく、魔力をどれだけ上手にコントロール出来るかで、使える身体強化の強度が変わるから」
「えっ? 魔力のコントロールが上手だと、身体強化が強く掛かるのか?」
俺の言葉に、戸惑った様子で頷くダダビス。
「知らなかった。俺はいつも適当に身体強化を掛けているから」
「適当で、あれなのか?」
「んっ?」
ダダビスが、何かをぶつぶつと呟いているような気がする。
ただ、声が小さすぎる。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
なんだか驚いているような、不思議がっているような、怖がっているような。
なんとも言えない視線を向けられたんだけど、何かしたかな?
「あっ、戻って来た」
キミールの言葉に視線を向けると、手を振っている太陽の姿が見えた。
「おかえり、早いな」
太陽が最初に見つけたのは、ガルムの子供みたいだ。
ガルムの子を、確保場に入れる。
ちょっと悔しそうだ。
次に月が、ダイアウルフの子供を。
なんだかダイアウルフの子供が怯えているように見えるんだけど、気のせいかな?
「大丈夫」
「くぅ~ん」
甘えるような鳴き声を出して、そっと体を寄せて来る。
えっと?
よく分からないけど、頭や首の辺りを優しく撫でて置く。
次々に確保されるガルムの子とダイアウルフの子。
そして、フェンリルの子が少し。
「やっぱり蜘蛛達やアリ達は難しいな。それに大人達も」
ダイアウルフの子を確保場に連れてきた雷が、悔しそうに言葉をこぼす。
それに、確保場にいた太陽と月が悔しそうな表情で頷く。
「今までどの辺りを探したんだ?」
雷の言葉に、太陽と月が探した場所を話す。
2人が話し終わると、雷が探した場所を話そうとした。
「来た!」
ダダビスの言葉に、緊張が走る。
捕まえた者達を解放させるべく、敵が傍まで来ているみたいだ。
「全員、確保場を囲うように移動」
ダダビスの言葉に、騎士達が確保場を囲うように立ち周りを警戒する。
太陽達は、傍まで来ている敵を見つけ出すため動き出した。
俺の仕事は、傍まで来た敵の動きを探る事。
ただし、俺が本気になると隠れられないので、適当にと言われている。
この適当が、とても難しい。
「あっ」
う~ん。
見つけたというか、はっきり俺の目には隠れている姿が見えてしまった。
ただ、普通は見えない。
だって、大きな岩の裏にいるから。
そしてその敵の反対側にも、大木の裏に隠れている敵がいる。
こちらも普通は見えない。
気配も上手に消している。
どうしようかな。
あれ?
敵は2匹じゃない。
木の上にも潜んでいるみたいだ。
あっ、やばい!
「左右と上から来る!」
ごめん、動き出してから報告する事になってしまった。
騎士達は素早く動き、体当たりしてきた2匹のダイアウルフを抑えた。
でも木の上に潜んでいたダイアウルフが、確保場内に入り込んでしまう。
「しまった」
ダダビスの言葉と同時に、確保場にいた者達が一斉に逃げ出した。
「あ~、残念」
太陽達が戻って来ると、時計を確認する。
確保場に敵が入ったら、その場にいた者達は解放。
そして、10分間のペナルティ。
「すまない。知らせるのが遅かった」
俺の目では、普通では見えない者まで見てしまうから、加減が難しい。
「大丈夫。また捕まえて来るから」
太陽の言葉に、「ありがとう」と伝える。
俺の参加はやっぱり駄目だったかもしれないな。
「ねぇ。一度味方の位置を確認するべきじゃない?」
月の言葉に、太陽と雷が頷く。
桜達は大丈夫だと思うけど、魔神や神族の子供達が捕まっていないか心配だ。
「それなら、すぐに――」
「見つけた~」
ふわふわの声に、月の言葉が遮られる。
「うわっ。すっごくいい時に来てくれたね」
月が嬉しそうに笑う。
「そうだな。これで各チームの確保場が分かる」
太陽も嬉しそうだ。
ふわふわの役目は、上空から敵チームの確保場を探す事。
場所が分れば、探しながら森を歩き回る必要がない。
「見つけたぞ」
地上に下りてきたふわふわに、月が笑顔で迎える。
「ありがとう。場所もだけど、味方が捕まっている所はあった?」
「うん。アリ達が作った確保場に魔神達がいる」
魔人達が捕まってしまったかぁ。
「アリ達か」
太陽と月が嬉しそうに笑う。
あれ?
笑顔なのに、なんだかちょっと……。




