22.本質を知る光の玉。
今日も、ヒカルに俺の力を送る。
力が届いた瞬間……あれ?
「あれ?」
ヒカルもいつもと違う事に気付き、不思議そうに俺を見る。
「「……」」
2人で首を傾げる。
「ビリっと来なかったのか?」
「うん」
昨日までは、核の周辺に力が届くとビリっとした痛みを生んでいた。
そのせいでヒカルの体はいつもビクッと反応していたのだが、今日はその痛みが無かったらしい。
「あっ」
ヒカルが自分の胸に手を置くと、驚いた表情をする。
「どうした?」
「うん、俺の中で力がぐっと増したみたい」
ぐっと増した?
力の強化を始めてから今日で10日目。
送る力は少しなので、それほど変化は起こらないと思っていたけど違うのか?
「どれくらい増えたのか分かるか?」
「ん~? それはちょっと分からないけど、使える力が増えた事は分かる」
「そうか」
ヒカルの様子を見る限り、体への負担は無いみたいだな。
「今日はここまでだね」
ヒカルの言葉に頷く。
「そうだな」
「よしっ。増えた力を子供達に披露してくるね」
「んっ? 披露って?」
「あっ、言い忘れてた。えっと、主に力を貰い出してから、俺が作る光の玉に変化があったんだ。それで毎日、子供達にその変化を見せているんだよ。と言っても、変化していると気付いたのは3日前で、今日でまだ4日目だけど」
最近、子供達とヒカルが何かをしているのは、見たから知っていた。
でもまさか、力を披露しているとは。
それに光の玉の変化?
「どういう変化をしたんだ?」
「キラが、キラキラになったんだ」
キラ……えっ?
意味が分からず首を傾げると、ヒカルが楽しそうに笑う。
「これが俺の作る光の玉なんだけど。あっ、昨日よりキラキラが増えたみたい」
ヒカルが右手の上に、直径5㎝ほどの光の玉を出す。
「これが光の玉」
中心部分に強い力を感じるが、全体からはとても優しい力が伝わる。
まるで、ヒカルの性格を表しているようだ。
なにより、光の玉から小さな光の欠片が飛び出して消えるさまが美しい。
「キラキラしているでしょ?」
少し不安そうに聞くヒカルに、笑みを見せる。
「うん。光の欠片が飛び出す時にキラキラしているな」
「この飛び出す欠片の量が、主と力の強化を始めてから増えたんだ」
あぁだから、「キラが、キラキラになった」と言ったのか。
「なるほど。この光の玉は、どうやって作るんだ?」
光の玉から感じる力が、通常の力とは違うような気がするんだけど。
「えっ?」
俺の質問に驚いた表情をするヒカル。
もしかして、おかしな質問だったんだろうか?
「えっと。これは、俺の核周辺にある力を使って作っているんだ」
核周辺の力で作られていたのか。
「力をコントロール出来るようになったら、自分の本質を把握するために全員が作るんだけど、主は作った事が無いの?」
自分の本質が分かるのか。
だからヒカルの作る光の玉からは、ヒカルの性格が表れているように感じたんだ。
「俺は、ないな」
力のコントロールが出来た頃は、会話が通じなかった頃だからな。
知らなくてもしょうがないか。
あれ?
魔法を少し学んだけど、その時も光の玉について説明されなかったよな?
「そうなんだ。作るのは結構簡単だよ。核周辺の力を意識して、ギュッと集めて玉にすればいいだけだから」
「確かに簡単そうだな」
作ってみようかな?
「初めて作るなら、外の方がいいかもしれない」
あっ、そうだな。
簡単そうだけど、何があるか分からないからな。
「ありがとう。そうするよ」
ヒカルと一緒に、子供達が待っているという広場に向かう。
ここ3日は、力の強化が終わると真っすぐ子供達の下に向かっていたそうだ。
「あれ? 主だ~」
太陽の言葉に、子供達が嬉しそうに俺の下に駆けて来る。
「どうしたの? 今日は一緒に遊べるの?」
翼の言葉に子供達がわっと盛り上がる。
「本当? それだったら嬉しいな?」
桜がギュッと俺の手を握る。
「あ~」
子供達の「遊べるの?」は注意が必要だ。
何も考えずに頷くと、追いかけっこを数時間する羽目になったりする。
返事をするために、子供達に視線を向ける。
「……あぁ、遊べるけどほどほどにな」
まぁ期待を込めた子供達の視線を無碍には出来ないから、注意をしても結果は同じなんだよな。
「やった~! 今日は何をする?」
紅葉の言葉に子供達から声が上がる。
あっ、追いかけっこが出た。
あとはかくれんぼ?
これは楽そう……いや、森全体を使ったかくれんぼ?
いやいや、どれだけ広い場所でかくれんぼをするつもりなんだ?
あとは、缶蹴り?
容赦なく蹴った缶を探すのが、もの凄く大変なんだよな。
野球?
身体強化した体から投げる球は、凶器だから!
「あっ、その前にヒカルお兄に見せてもらわないと」
ヒカルお兄?
雷の言った言葉に首を傾げる。
今まで、そんな風に呼んでいたかな?
「そうだった。ヒカルお兄、お願い」
他の子もヒカルお兄と呼んでいるみたいだな。
「あぁ、これだよ」
ヒカルが執務室で見せてくれた光の玉を出す。
その光の玉を見た子供達から、歓声があがる。
「昨日よりキラキラが増えている!」
「主も見せてくれるって」
えっ?
子供達の前で作るのか?
「「「「「……」」」」」
子供達の期待の籠った目は、やっぱり裏切れない。
「初めてで失敗するかもしれないから、少し離れた所で作ってみるよ」
俺の言葉に驚いた表情をする子供達。
光の玉を作る事は、皆の中で当たり前の事みたいだな。
「さて、少し離れたから何かあっても大丈夫だろう」
えっと、核周辺の力を……確認できた。
これをギュッと集めて、丸めて玉にする……そして、掌の上に出す。
「んっ?」
掌の上を見る。
何も無いように見えるが、これは……。
少し離れた場所にいる子供達から、驚きの声が上がる。
「透明ですね」
ヒカルが少し戸惑った様子で傍に来て、俺の掌を見る。
そう、何も無いように見えるが確かにある。
もの凄い力を感じる何かが。
「まさか透明だとは、思わなかったな」
俺の本質は透明?
これは、どういう意味なんだろう?
「すっごい。何もないのに、何かある」
傍に来た風太の言葉に、子供達が真剣に頷く。
その表情にちょっと笑ってしまう。
そんなに真剣に見つめなくてもいいのに。
「皆のはどんな感じなんだ? 見せてくれるか?」
作った光の玉を消すと、子供達を見る。
「「「「「もちろん」」」」」
次々と子供達が光の玉を作っていく。
どの光の玉からも元気な力強さを感じる。
「あれ? 中心の色がそれぞれ違うんだな」
翼と風太、それに桜はオレンジか。
雷は緑。
紅葉は、青だ。
太陽と月は、黒?
これって本質なんだよな?
黒が表す本質とは?
「えっ、いやいや。まだ子供だからな。うん」
「主?」
ヒカルが首を横に振っている俺を、不思議そうに見る。
「なんでもない。皆、ありがとう」
順番に皆の頭を撫でていく。
「よしっ、皆。今日はかくれんぼにしよう!」
太陽の言葉に、子供達が楽しそうに頷く。
「あっ、それに決まったのか」
周りで話を聞いていた蜘蛛達とアリ達が参加を表明。
気付けば、森全体を作った蜘蛛達対アリ達対子供達の対決かくれんぼとなった。
「注意していたはずなんだけどな」
あっ、のろくろちゃん達も参加するのか。
んっ?
武器の使用?
魔法はどこまでならOK?
あっ、俺が何か言う前に決まっていく。
「皆、怪我はしないようにね」
あっ、こら!
皆でヒールと呟かない!




