9.今がその時。
オウ魔界王の言葉に驚きながら、彼を見つめる。
「最初は小さな違和感だ。前に会った時より微かにだが、力が揺れていた」
力の揺れは、不安定な状態になっているという事だ。
俺の力が不安定?
全く気付かなかった。
「ただ、問題になるほどでは無かった。本当に小さな揺れだから」
まだ、それほど問題視しなくても大丈夫か?
でも不安定な力は世界に影響を与えてしまう。
対策が必要になってくるかもしれないな。
「だから疲れているのかと思った」
疲れか
確かに力が不安定になる要素の1つだな。
でも、原因が魂だと気付いた。
何がきっかけで、バレたんだ?
「力の微かな揺れを、それほど重要の事だとは思わなかった。疲れる事なんて、この地位にいれば当然だ。解決方法は休む事だからな。でも俺が『寿命』に対する考えを話した時に、呪界王の胸のあたりに、何かが見えたんだ。そしてそれが魂で、しかも傷がついているのが分かった。たった一瞬だったのに、はっきりと見えたんだ」
寿命の話の時に?
あの時にオウ魔界王が焦った様子だったのは、俺の魂が見えたせいか。
でも、どうしてあの時なんだ?
……何も無かったよな?
あの時の俺は、オウ魔界王の話を聞いて、寿命と死について考えていただけなんだから。
そう、魂の消滅についてもだな。
「「あっ」」
オウ魔界王と創造神の声に、2柱を見る。
「今だ」
今?
創造神の言葉に首を傾げる。
「今、魂の姿がはっきりと見えた」
「今? 魂の消滅について考えたが……」
俺が言葉を発した瞬間、2人の視線が微妙に動いた事に気付いた。
もしかして、また魂が見えたのか?
「また?」
「あぁ、その様子だと無意識みたいだな」
オウ魔界王の言葉に、頷く。
どうして、魂が見られる状態になっているんだ?
それも「魂」の事を考えただけで。
あっ、という事は今も?
オウ魔界王と創造神を見る。
あれ?
今は、2柱とも反応していない。
魂の事を考えたら、見られるようになるのでは無いのか?
「今は、見えないか?」
「「えっ?」」
創造神とオウ魔界王が首を横に振る。
「そうか」
「魂」の事を考える事が、切っ掛けでは無いのか?
「呪界王。力の揺れが消えているみたいだ」
「えっ?」
創造神を見ると、安堵した様子で俺を見ている。
揺れ。
つまり、力が安定した?
「あっ、そうなんだ」
んっ?
揺れが無くなり力が安定したら、魂が姿を見せなくなった?
つまり魂が見えてしまう条件は、力が不安定で魂の事を考えた時?
力の安定を意識しておく必要があるな。
それと力が揺れた事に気付けなかった事も問題だな。
今までなら気付けた。
これも魂が傷を負ったせいなのか?
「呪界王? なぜ魂がそんな状態に?」
オウ魔界王の言葉に肩を竦める。
「元人間には、神の巨大な力に耐えられなかったんだ」
俺の説明に、2柱が息を飲む。
そして戸惑った表情をした。
「それはつまり……」
「あぁ。近い将来、魂の消滅を迎えるだろう」
俺に言葉に、2柱が悲壮感を漂わせる。
「そんな顔をしないでくれ。まだ当分は問題ないから」
当分がどれくらいなのか、俺は知らない。
もしかした、明日なのかもしれないけどな。
「そうだな、わかった。手助け出来る事があったら、何時でも言ってくれ」
「ありがとう」
次の呪界王の事を支えて欲しいと、言ったら……さすがに今は駄目かな。
これは、またの機会にしよう。
「随分長く話し込んでしまったな」
ここは異空間で、集まっているのは世界の王だけ。
時間が進んでいる感覚は、全く無い。
でも、おそらく夕飯の時間は過ぎてしまっただろうな。
「そうだな。そろそろ、仕事に戻るよ。大量の書類が待ってるし!」
創造神の嫌そうな表情にオウ魔界王と笑ってしまう。
こればっかりは手伝えないから、頑張ってもらうしかないんだよな。
「頑張れ、ほどほどにな」」
俺の言葉に、苦笑する創造神。
「また」
創造神が神国に戻るのを見送る。
オウ魔界王が、ポンと俺の肩を軽く叩くと魔界に戻っていく。
「さて、戻るか」
目を閉じ、皆を思い浮かべる。
あっ、このイメージは駄目だ。
「「うわっ」」
コアと飛びトカゲの驚いた声。
「「ひゃっ!」」
これは子供達だな。
おそらく桜と紅葉?
「えっ? 主?」
ヒカルだ。
うん、やってしまった。
仲間をイメージしてしまったから、皆がいるウッドデッキに出てしまった。
いつもは、驚かせないために家の玄関をイメージしているのに。
「ごめん、間違えた」
早く皆に会いたいなって思ったら、イメージが仲間になってしまったんだよな。
気つけていたのに。
「おかえり~」
元気な声で太陽が俺の下に駆けて来る。
ポンと頭を撫でると、嬉しそうな表情になる。
「あれ?」
太陽を撫でていた頭を、ポンポンと撫でる。
「太陽、背が伸びた?」
「うん! 成長期だって、きっとすぐに主を越せるぞ」
それは、嬉しくない。
でも、間違いなく俺より大きくなるだろうな。
この子達は神の力が子供返りしているから、数日で大人の姿になったとしてもおかしくない。
大きくなるにしても、ゆっくり成長して欲しいよな。
「主?」
リーダーの声に視線をむけると、首を傾げて俺を見ている。
どうしたんだろう?
あっ、魔力が揺れているな。
安定した力をイメージすると、体の中に流れる力がスーッと流れていくのを感じた。
良かった揺れは収まったな。
「大丈夫ですか?」
リーダーの言葉に、ポンと頭を撫でる。
「大丈夫」
あれ?
今、微かな力の揺れに、気付く事が出来たな。
どうしてさっきは、気付けなかったんだ?
もしかして、無意識に彼等に助けを求めたんだろうか?
「分かりました。すぐに夕飯を準備しますね」
「ありがとう」
リーダーはきっと何かに気付いている。
証拠はないが、あのリーダーが俺の状態を見逃すわけが無い。
でも、俺が自分で話すまで、我慢してくれているんだよな。
今が話す時、なんだろうな。
「主、準備が出来ました」
リビングのテーブルに、今日の夕飯が並んでいる。
「ありがとう」
ウッドデッキからリビングに入ると足を止める。
そして振り返って仲間達を見る。
「……コア、飛びびトカゲ」
「どうした?」
寝そべっていたコアが顔を上げる。
「俺について話があるんだ。あとで時間を作ってくれないか? 他の仲間達にも声を掛けて欲しい」
俺の傍にいたリーダーの体が微かに揺れた。
俺がなぜ彼等を集めるのか、分かったのだろう。
「分かった。子供達はどうする?」
あっ、あの子達はどうしようかな?
「皆に話を聞いてもらってから、考えるよ」
「俺達は参加するからな」
クウヒの言葉に視線を向けると、ウサとヒカルがいた。
「あぁ。頼む」
反対されると思っていたのか、俺の反応に驚いたみたいだな。
「主、先に食事にしましょう。その間に、皆は集まるでしょう」
そうだ。
せっかく用意してくれたんだから、温かいうちに食べてしまう。
「分かった」
食べている間に、俺も覚悟しないとな。
俺の傍にいたリーダーの体が微かに揺れた。
俺がなぜ彼等を集めるのか、分かったのだろう。
「分かった。子供達はどうする?」
あっ、あの子達はどうしようかな?
「皆に話を聞いてもらってから、考えるよ」
「俺達は参加するからな」
クウヒの言葉に視線を向けると、ウサとヒカルがいた。
「あぁ。頼む」
反対されると思っていたのか、俺の反応に驚いたみたいだな。
「主、先に食事にしましょう。その間に、皆は集まるでしょう」
そうだ。
せっかく用意してくれたんだから、温かいうちに食べてしまう。
「分かった」
食べている間に、俺も覚悟しないとな。




