7..近況報告。
創造神とオウ魔界王と会う場所は、前に作った異空間。
ただその異空間は、創造神とオウ魔界王にそれぞれの力を足してもらった。
これで、3柱の内1柱に何かあっても異空間は維持できる。
まさか、最初に「何か」あるのが自分だとは、その時は思いもしなかったけどな。
「悪い。待たせたか?」
異空間に入ると、既に創造神とオウ魔界王の姿があった。
もしかして約束の時間を間違えていたかな?
「大丈夫。少し早く来てしまっただけだ」
創造神の言葉にホッとする。
「俺はちょうど来たところだ」
オウ魔界王がさっと手を横に振ると、テーブルとソファが現れた。
「どうぞ」
「「ありがとう」」
3柱がソファに座ると、創造神がテーブルの上に手を翳す。
「今日はお土産があるんだ。俺の護衛をしてくれている2柱が、自分達が管理している星で人気のお菓子を買って来てくれたんだ。どうやら呪界王とオウ魔界王に食べてもらいたいらしい」
テーブルの上には、お皿に載ったオレンジ色したゼリーのようなお菓子が現れた。
「これ、焼き菓子なんだよ」
焼き菓子?
透きとおったオレンジ色だから、ゼリーのような物だと思った。
お皿から1個を手に取ると、想像よりしっかりした硬さを感じた。
ちょっと香りを確かめてみるが、ほぼ香りはしない。
「いただきます」
一口食べると、ふわっと花の香り広がった。
それに少しビックリする。
食べるまで、花の香りなんて全くしなかったのに。
「不思議なお菓子だな。それに、美味しい」
甘さもちょうどいいな。
「気にいてくれたみたいで良かったよ」
創造神に「ありがとう」と伝えると、嬉しそな表情をした。
「食べながら、まずは近況報告をしようか」
オウ魔界王の言葉に、創造神が頷く。
「神国の復興を本格的に始めたため、神達がかなり忙しそうだ。あと闇が現れないから、アルギリスは探せていない。それとアルギリスを支持している者達の一部が判明したので、確保した。数名はこちらの動きを察知して逃げ出したので、探し出すように言ったぐらいかな」
少し考えこんだ創造神は、「あっ」と小さな声をあげた。
「どうした?」
「壊れた星を修復するか完全に破壊するかで、少し神達が争っているんだ。呪界王、オウ魔界王は、どちらがいいと思う? 破壊された星の中に、生命体が確認されているところもある。ただ、修復となると神にかなり負担を掛ける事になる」
「生命体が確認されている星は、神に負担がかかっても修復の方がいいだろう」
オウ魔界王の言葉に、創造神が神妙に頷く。
「修復は、そんなに負担になるのか?」
俺の言葉に、情けない表情になる創造神。
「通常なら問題ない。ただ今は、……神が足りないんだ」
「そういえば、神の数が足りないと言っていたな?」
「あぁ。そのせいで軽い問題には目を瞑っている状態だ。まぁ、罰を与えるまでに少し猶予があるだけだが」
俺の言葉に頷く創造神。
罰という言葉を言った時に、微かに見せた苛立ちがちょっと気になるな。
「それなのに奴等は許されたと思って、神族達に横暴な態度を取る。本当に愚かだと思わないか」
あぁ、なるほど。
だから苛立ちが見えたのか。
「悪い。呪界王達は話を聞いてくれるから、つい言い過ぎてしまうな」
創造神が少し恥ずかしそうに言うので、オウ魔界王とつい微笑んでしまう。
「そうだ。星の移動はいつ頃がいい? 復興が終わるのを待っていたらいつになるか分からない。だから2柱が希望する日を言ってくれたら、それに合わせるつもりだ」
「そうだな、1週間後ぐらいでどうだ?」
オウ魔界王の言葉に、創造神が頷く。
「呪界王は?」
「魔界に星を移動させて、神国に影響が無いか確かめた後でいいぞ」
星の移動なんて初めて事。
問題無いとは思うが、実際に移動してみたいと分からない事もあるからな。
「分かった。問題がなければ?」
「ん~、2週間後ぐらいかな」
魔界に星を移動させてから1週間ぐらい開ければ、神国もゆっくり準備が出来るだろう。
「分かった。1週間後と2週間後に、星を移動させるよう準備していくよ」
もう少ししたら、呪界に星が増えるのか。
今から楽しみだな。
「魔界には変わった事など、あっ、大木に咲いた花は命花で、数日前に新しい魂を誕生させたよ」
「えっ? 魂?」
オウ魔界王の言葉に、創造神が目を見開く。
「それに関しても俺も報告がある。呪界でも命花が咲き、新たな魂が生まれたようだ」
創造神が、俺とオウ魔界王を見て神妙な表情をした。
「そうか。既に変わっているのか」
創造神の言葉に首を傾げる。
「神国の命花について、魔幸石が管理する事になった事は知っているよな?」
「あぁ、魔幸石には意思があるから、これまでのように神が好き勝手する事は出来なくなるんだろう?」
オウ魔界王の言葉に創造神が苦笑する。
「いろいろな制約があるから、今までも好き勝手出来たわけではないんだけど。でも、今までの事を考えると……好き勝手と言われても仕方ないか」
創造神が渇いた笑いをこぼす。
「魔法石が命花の管理を始めてすぐ、異変に気付いたそうだ」
異変?
「新しく育ちだした命花の数が、過去の数よりかなり少なかったんだ」
数が少ない。
もしかして呪界と魔界で新しい魂が誕生するから?
「調べたら、命花の咲く場所が増えている。しかも、咲く場所を調べると1つは呪界に、もう1つは魔界に繋がっていたそうだ」
繋がっていた?
「もしかして命花の咲く場所は全て繋がっているのか?」
オウ魔界王の言葉に創造神が頷く。
「魔幸石の話ではそうらしい。そして、魔幸石の話では星で一生を終え戻って来た魂の扱いが、以前と比べると大きく変化したようだ」
あっ、これはエルフの下に誕生した新しい命に繋がっている話では?
「どう変化したんだ?」
「……どうも、神達は信用されなかったようだ」
眉間に皺を寄せる創造神は、なんとも言えない表情をする。
「神の力で作られた魂は、一生を終えると傷ついている事が多々ある。だから神は、その傷を癒して綺麗にしてから輪廻に戻す」
以前に聞いた内容だな。
「一生を終えた魂は、生前のしがらみを切ってから帰って来るのが普通。でも中には、生前のしがらみに絡みつかれている者達がいる。彼らのほとんどが、生前に多くの怨みをかった者達で怨みというのは凄い執念があり、対象の人物が死んでも切れずに一緒に戻って来てしまう」
これも聞いた内容だな。
「その中に呪いに落ちる魂がいるんだったよな」
「そう。魂に絡みついている怨みはとても厄介で、神の力では癒す事が出来ない。怨みは、魂をゆっくり侵食しながら苦しめていく。そして怨みの濃くなった魂が、呪いに落ちる」
創造神が、1つため息を吐く。
「3つの世界が新しい関係を築いた事で、怨みが絡みついている魂はすぐに呪界に」
「えっ?」
怨みが濃くなる前に、呪界に来るのか?
まぁ、問題がないならいいけど。
「そして、傷を負った魂は魔界に送られる事になったんだ」
「あれ? 神国に残る魂は?」
不思議そうにオウ魔界王が創造神を見る。
「信用されなかったと言ったのは、綺麗な状態で戻って来た魂だけを扱うようになるからだ」
「「あっ」」
そうか。
傷を負った魂は魔界に、怨みが絡まった魂は呪界に。
残りは綺麗な魂か。
おそらく魂を神達に利用させないため、だろうな。
エルフに新しい命が誕生したのは、怨みの絡まった魂が呪界に送られたからか。
絡まった怨みはどうなったんだろう?
新しい命を少し見守る必要がありそうだな。




