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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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2.バレた? バレてない?

少し離れた所から、ちらちら見て来る魔族達には諦めた。

ただ、腕を動かすだけで盛り上がるのは止めて欲しいかな。

意味が分からないから。


「すまない。主は、魔界の救世主なんだ。だから、近付くのは恐れ多いが、一度だけでも見てみたいと思う者が多くて。彼等は、見たいと騒ぐ魔族の中でも、常識的な者達を選んで連れてきたんだが」


「はははっ。まぁ害がないなら良いよ」


救世主かぁ。

なんというか、重い言葉だな。


「オウ魔界王の邪魔になると困るから、魔界に広がっている救世主という考えを変えたいんだが、出来るだろうか?」


「…………」


無理なのか。


「今は無理でも、時間が経てば落ち着いて来るとは思う。でも、主が魔界を救った事実は変わらないから完全には消えないだろう」


「救ったのかな?」


俺は行く事を許可しただけで、実際に動いたのはサブリーダー達なんだけど。

だから、救ったのはサブリーダー達だよな?


「救ったさ。配下であるサブリーダーや蜘蛛達、アリ達を魔界に送ってくれたんだから」


配下ではなく仲間なんだけど。

いや、周りから見たら配下か。


「そうか」


考えを変えるのは時間がかかりそうだな。

諦めよう。


それにしても、チラチラ見られるのはけっこう気になるものなんだな。

慣れていないからかな?

あれなら、傍でジッと……いや、それは駄目だ。

もっと落ち着けなくなる。


「ふぅ」


慣れるしかないよな。


「悪い。見えない位置に奴等を移動させようか?」


小さなため息を聞かれたのか、ドルハ魔神が魔族達に視線を向ける。


「いや、大丈夫だ。すぐに慣れると思うから」


うん、あれ?

ドルハ魔神は「あと、数回こういう事があると思う」と言っていなかったか?


「あと数回?」


ドルハ魔神を見ると、申し訳なさそうな表情で頷いた。


「あと数回で、何とか全員を納得させる」


「あぁ、頼む。本当に頼むな」


魔族達は、このまま落ち着くのを待つしかないな。

まぁ、少しすれば飽きるだろう。

俺を見ても楽しくないだろうから。


「で、創造神からだっけ」


アイオン神の隣に立つ神を見る。

癒しの力が優れた神だっけ?

肩までの水色の髪に、真っ青な瞳が印象的だな。


「あぁ。彼はオータム神。神国では、優れた癒しの力を持っている事で有名な者だ。翔の体調を癒すために連れてきた」


神国での有名人か。


「呪界に連れてくる事を、止める神はいなかったのか?」


創造神が、無理矢理決めたとかではないよな?

そんな事をしたら、あとあと問題になるかもしれない。


「いや、全く」


全く?


「『すぐに連れて行け』と言う神がいたぐらいだ」


「はっ?」


「そんなことより、今日の体調はどうなんだ?」


そんなことって。

アイオン神を見ると、心配そうな表情で俺を見ている事に気付く。

それに笑みが浮かぶ。


「大丈夫だ。問題ない」


「本当に? 右手だったか? かなり痛みがあったんだろう?」


アイオン神の言葉に少し驚く。

まさか痛みを訴える場所がバレていたとは。

もしかして、創造神から何か聞いたんだろうか?


「本当に大丈夫だ。痛みも無いから」


アイオン神の前で右手を振ってみせる。

それをジッと見る彼女に、小さく笑ってしまう。


「本当に痛みはないのか?」


実際に動かして見せたのに、怪しまれているな。


「本当に痛みはない」


「調べてみようか? 痛みの原因も調べたいし」


オータム神の言葉に、アイオン神が頷く。


「頼む」


「わかった」


いや、待て。

俺の許可は?


「では手を」


オータム神が、右手を俺に向かって出す。


「まぁ、いいけど」


心配掛けているみたいだから、調べてもらうか。

記録装置ほどの力が無いと、原因がバレる事は無いだろうし。

いや、創造神にはバレているみたいだから隠す意味はないのか?


……あれ?

今、オータム神は「痛みの原因も調べたい」と言ったよな。

つまり、痛みの原因はバレていないのか?


あっ、そうか。

記録装置で知る事が出来るのは、その装置がある世界の事だけだ。

他の世界の事は、俺が実際に関わった時の事だけが、記録装置記載されるんだった。


創造神が、記録装置から俺の不調の原因を知る事は出来ないんだ。

となると、アイオン神から俺の不調を聞いて、オータム神を送ってくれたのかもしれない。

うん。

「バレた」と思うのは、俺の考え過ぎだな。


後ろめたい事があると、もしかしてという考えに陥りやすい。

気を付けないと。

俺がバラシてしまいそうだ。


オータム神の手に右手を乗せると、彼は俺の手を両手で包み込んだ。


「神力で調べるのはいいが、呪力や魔神力に悪影響はないのか?」


「あっ」


ドルハ魔神の言葉に、オータム神が少し困った表情を見せた。


「分からないのか?」


「はい。すみません」


オータム神の両手が、俺の右手から離れていく。


「大丈夫だと思うぞ。俺が持つ魔神力も呪力も、神力に慣れているから。とりあえず、やってみてくれ。違和感を覚えたら、すぐに知らせるよ」


俺の言葉に少し迷ったオータム神は、差し出している俺の右手を両手で包み込んだ。


「ゆっくり進めます」


「あぁ、頼む」


オーラム神が目を閉じると、彼の両手から温かな熱が伝わって来た。

これが彼の力か、温かいな。


ゆっくり流れて来る力に、ふと体が軽くなる。

別に不調では無かったはずだけど、疲れかな?


「気持ちのいい力だな。全身が温かくなってきた」


「そう言ってもらえると、嬉しいです」


嬉しそうなオータムの様子に笑みが浮かぶ。


「終わりました」


しばらくするとオータムが俺の両手を離した。


「どうだ?」


アイオン神が不安そうにオータム神を見る。


「特に問題は見つかりませんでした」


やっぱり原因はバレなかったな。

それでもオータム神の力は凄いな。

本当に隅々まで調べていた。


「本当に?」


アイオン神が少し不審そうにオータム神を見る。


「本当です。俺の力で調べる限り、呪界王の体に、問題はありません」


「そうか」


ホッとした様子を見せるアイオン神に、少しだけ申し訳なくなる。


「でも、それならどうして痛みが出たんだ?」


「ん~、神力を使い過ぎたのかもな。まぁ、それについては調べるよ」


本当の事は、まだ言えない。

話すにしても、まず仲間からだ。


「アイオン神、安心したか?」


「あぁ、良かった。呪界に戻った翔の顔色がなかなか戻らなかったから、心配していたんだ。そういえば、今日は大丈夫みたいだな」


えっ、顔色が悪かったのかか?

気付かなかった。


「心配掛けて悪かったな」


だから周りにいる者達から、何度も体調を心配されたんだな。


顔色か。

それも初期症状の1つなのかな?

だって、毎朝ヒールで体調を整えていたから、顔色が悪いはずないんだよな。


「主?」


リーダーを見ると、何か言いたいそうな雰囲気だと気付く。


「どうした?」


「……おやつの時間ですね」


リーダーが話を誤魔化した?


「そうだな」


「では、皆さんとゆっくりお茶とお菓子をお楽しみください」


リーダーが、ウッドデッキを見ると既に色々と準備がされていた。

さすがだ。


「ゆっくりしようか。リーダーが準備してくれたし」


俺の言葉に、ドルハ魔神が嬉しそうに笑う。


「ありがとう。呪界で出る食べ物は何でもうまいから、気に入っているんだ」


「そうか。魔族達にもあるのか?」


リーダーを見ると当然とばかりに頷いていた。


「準備を、ありがとう」


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