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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
後片付けまでしっかりと
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1.さて、どうしようかな。

記録装置に表示された文字を目で追う。

『呪界王、魂の崩壊、初期状態』


「はぁ、何度見ても変わる事は無いか」


椅子に深く座って、背もたれに体重をかける。

目を閉じると、溜め息を吐いた。


目を開け、右手を顔の前に持ち上げる。

今、右手に痛みはない。

だが、魔法を使えばきっと痛みを訴えるだろう。

そしてこれが、初期症状なんだろう。


記録装置に視線を向け、先ほどの続きを読む。

『原因、許容量を超えた過剰な力。限界を超える力の行使』

うん。

思い当たる事しかないな。

だが、原因がわかっても、それについて後悔はしていない。

おそらくこうなると分かっていても、必要ならば俺は力を使うだろう。


「さて、どうしようかな」


続きを読んで、もう一度ため息を吐いた。

『魂の崩壊を防ぐ方法は無い。延命は力を使わない事。力を減らす事』

力を使わない事は、たぶん出来る。

でも力を減らすって、どうやって?


「それに、今も力が強まっているんだよなぁ。ははっ」


たぶん、魔界や神国で俺を支持してくれる者が増えているんだろう。

魔界も神国も俺が救ったように言われているから。


「リーダー達に、原因を知られる訳にはいかないよな」


仲間達の顔を思い浮かべる。


「過剰な力については、絶対に秘密にしないと」


それと、俺が居なくなった後の事も考える必要がある。


「呪界の事は、おそらくヒカルが対応できるだろう」


呪界にある唯一の星を、俺と一緒に支えているヒカル。

あの力は、俺とほぼ同じだ。

だから、呪界を支える事も出来るだろう。

ただ今のヒカルでは、力が弱い。


「力を増やす必要がある。でも、俺のようになっては困るから、ヒカルが抱え込める力の限界を調べないとな。あとヒカルの気持ちだけど……」


呪界王という立場を、押し付けるようなものだよな。

でも、他にこの立場に就ける者はいないし。


「お願いするしかないけど……はぁ」


気が進まない。

この立場は、非常に重い。

呪界に住む、全ての命を守る立場になるのだから。

でも、もしもの事を考えて、すぐにでもヒカルにはお願いするしかない。


「ヒカルは……」


優しい子だから、きっと俺の願いを聞いてくれるだろう。


「はぁ、駄目だ。全てを押し付けるのかと考えると、決意が揺らぐ」


自分が苦労するなら、いくらでも出来る。

でもその苦労を仲間に押し付ける決意なんて、出来るわけが無い。


「つらい決断だな」


もう一度目を閉じ、溜め息を吐いた。


ここ数日、ヒカル1人に押し付けない方法を考えた。

でも、世界に王は1人だけ。

それは決して変える事の出来ない、世界の決まり。


「ヒカルに、話すか」


彼を次の呪界王にする以外に、思いつく方法は無いのだから。


記憶装置のある空間から、皆の下に戻ると大きな声援が聞こえた。

それに首を傾げながら、広場に向かう。


「……何をしているんだ?」


なぜか広場では、アイオン神とドルハ魔神が戦っていた。


「あれ?」


2柱の戦う姿を見て、違和感を覚える。


「あっ、魔法の使用が禁止なのか?」


さっきから2柱は剣で戦っているが、1度も魔法を使用していない。

まぁ、あの2柱がここで本気の魔法を使ったら大変な事になるからな。


「主、お帰りなさいませ」


「ただいま」


リーダーが俺の隣に立ち、2柱の戦いに視線を向ける。


「どうしてこんな事に?」


「アイオン神が来た丁度その時、ドルハ魔神も魔族達を連れてやってきたんです」


魔神達を?

あぁ、観戦している者達の中に見慣れない魔族達がいるな。


「それで?」


「神と魔神、どちらが主の役に立てるかという話になって」


「はっ?」


どうしてそんな話になったんだ?

というか、アイオン神は創造神に。

ドルハ魔神はオウ魔神王の役に立つ事が重要だと思うんだが。


「どちらも自分の方が主の役に立つ譲らず、今のような事になりました。ただ、神や魔神が本気で魔法攻撃をすると大変な事になる為、飛びトカゲが2柱に魔法による攻撃を禁止しました」


飛びトカゲ、ありがとう。


「分かった。教えてくれてありがと」


さて、どうしようかな?

魔法攻撃が禁止されているなら、まぁ、特に問題は……無いな。


「止めた方がいいですか?」


リーダーの言葉に首を横に振る。


「星が傷つくような事にならないなら、放置でいいだろう。2柱とも、楽しそうだし」


「そうですね。楽しそうです」


最初はどうだったのか分からないが、アイオン神もドルハ魔神も楽しそうに戦っている。

なので、このまま続けても問題ないだろう。


「アイオン神、いけ~!」


んっ?

聞きなれない声に視線を向ける。


「誰だ?」


リーダーに、アイオン神を応援しているおそらく格好から神について聞く。


「アイオン神と一緒に来ました。初めて見る神ですね」


そうだよな。

それにしても、すっごい応援だな。

まぁ、ドルハ魔神を応援している魔族達も凄い応援だけど。


「勝負あり!」


コアの言葉に、アイオン神とドルハは魔神の動きが止まる。


「ドルハ魔神の勝利!」


「やった~。ドルハ魔神、お見事です」


コアの宣言に、魔族達が盛り上がる。


「ふぎゃぁわ~」


反対に、アイオン神を応援していた神が、変な声で叫んだ。

そんな中、2柱は握手したとその場に座り込んだ。


「疲れた~。こんなに動いたのは久しぶりだ。最近は書類仕事ばかりだったからな」


アイオン神の言葉に、ドルハ魔神が同意する。


「アイオン神もか?」


「ん?」


「書類仕事が多くなっているのか?」


ドルハ魔神の言葉に、嫌そうな表情で頷くアイオン神。


「あぁ、今はアルギリスが起した問題の処理に追われている。少し前は、落ち神の処理に追われていたのに。いい加減、書類仕事を誰かに押し付けたよ」


あれは本気だな。

一緒に来たらしい神が、苦笑している。


「あっ、翔」


アイオン神の言葉に、ドルハ魔神もこちらに視線を向ける。

そしてちょっと視線をさ迷わせた。


「悪い、主。許可も貰わずに好き勝手してしまって」


ドルハ魔神の言葉に、アイオン神が驚いた表情を見せる。


「あっ、悪い。そうだな。勝手をしてしまった」


アイオン神も少し困った様子で俺に謝った。

今まで自由に行動していた事に気付いたのだろう。


「別に大丈夫。何かあればリーダーが止めるだろうし」


「もちろんです」


俺の言葉に当然とばかりに頷くリーダー。

そんな彼の態度に、アイオン神の顔色が少し悪くなる。


「どうしたんだ? あのゴーレムが何か?」


ドルハ魔神がアイオン神の変化に、リーダーを見る。


「リーダーだ! あのゴーレムだなんて! いいか、絶対に怒らせるなよ」


アイオン神の勢いに、戸惑いながら頷くドルハ魔神。


「リーダー、アイオン神に何をしたんだ?」


「なんでしょうか? 特に思い当たる事はないんですが。あぁ、少し前にちょっと1発……特にありません」


1発?

……まぁ、いいか。


「そうか。それより2柱は、どうして呪界に?」


アイオン神は新しい神を連れてきたし、ドルハ魔神は新しい魔族を連れて来た。

昨日までに、呪界に誰かを連れてい来るという話は来ていないんだけど。


「創造神から、癒しの力が優れた神を選出して、呪界に送り届けるように言われたんだ」


癒し?

あぁ、俺の不調に創造神は気付いていたのか。

もしかして、原因もバレているのかな?


「俺は……悪い。毎日懇願されて仕方なく」


ドルハ魔神の説明に首を傾げる。

懇願?


「『一度でいいから呪界を見てみたい』と毎日、毎日俺の下に来ては願われるんだ。本当に毎日だぞ。いい加減、どうにかしたくて。連れて行くだけならと思って、一緒に来た。あ~あと、数回こういう事があると思う」


そんなに呪界に来たがる魔族が多いのか?


「目的は何なんだ? 呪界に来て、彼等は何がしたいんだ?」


もしかして、何か食べたいんだろうか?

呪界から戻る魔族達が作る料理は、凄い評判みたいだから。

呪界に来たらもっと色々食べられると考えたのか?


「違います! 我々はお礼を言いたくて、そして一度でいいので呪界王にお会いしたかったんです」


少し離れた所から、俺に向かって魔族の1人が叫ぶ。

というか、彼と俺の間にある10mぐらいの距離はなんなんだ?


本日より「異世界に落された」の新しい章を始めます。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


ただ、11月の中頃まで少し更新が不安定になります。

なるべく頑張りますが、更新が飛んだらすみません。


ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴーレムでも、今見た神々の眷属でもなんでもいいが常時力を分けるようにすれば解決。 一番は自作で動くゴーレムたちに魔石とか使いつつ上限を増やして力をがっつり使えるのをたくさん用意すればいいだ…
[一言] 更新ありがとうございます!楽しみにしていました あまり翔が苦しまないといいなあ ずっと自分の力を目いっぱい使ってきたから少しのんびりしてほしいよね
[良い点] 新章楽しみです [気になる点] 初対面の相手ではなくても1mくらい離れるのは普通では?叫んでるとあるし10mとかでしょうか?
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