149.消えた。
神国がアルギリスに襲われた日から5日目。
創造神、オウ魔界王と会う機会を設けた。
といっても、パネル越しだが。
この5日間、俺達は自分が守る世界の変化に警戒した。
3柱の王が異空間で会った事が、世界にどう影響を及ぼすのか未知数だったからだ。
「大きな変化はないが、魔界に流れている力に少しだけ変化があった。どうも魔神力に神力が少しだけ含まれたようだ。あと、おそらく呪力も」
オウ魔界王の言葉に、創造神が頷く。
「それは、神国でも見られた変化だ。良く調べないと分からないレベルだが、神力の中に魔神力と呪力が混ざっている」
この話の流れから呪界でも神力と魔神力が含まれてと言いたいが、呪界に流れる力には既に神力も魔神力も含まれている。
「悪い。呪界は既にどちらの力も含まれているから、今回の事で変化が起こっていたとしても分からないと思う」
俺が全ての力を持っていて、垂れ流しているからな。
微かに増えた程度では、全く分からないだろう。
「そうか。呪界王は全ての力を持っていたな」
「うん。悪い。他に変化や違和感は?」
俺の言葉に、オウ魔界王も創造神も首を横に振る。
「悪い影響は出なかったな。心配したが、良かったよ。今は色々問題が重なっているから」
創造神の言葉に確かにと頷く。
「確かに、覚悟してたのに悪い変化は1つも無かったな」
オウ魔界王の言葉に、苦笑する。
やはり、覚悟していたのか。
「悪かったな。いきなり巻き込んでしまって」
異空間で2柱が目の前にいた時は、俺もさすがにビックリした。
まさか、イメージを作っただけで会えるとは思わなかったから。
「あぁ、いいよ。実際に会ってみたかったから」
「それは俺もだ」
オウ魔界王の言葉に、創造神も問題ないという。
もしかしたら、全員が実際に会ってみたいと思っていたから、異空間に連れて来てしまったのかもしれないな。
「あの……呪界王は気付いていると思うが」
俺を見た創造神は、スッと視線を下げた。
「アルギリスの気配が消えた事か?」
「うん」
今日、アルギリスの気配が完全に消えた。
昨日までは微かに、アルギリスの力の残骸というか気配というか……アルギリスの何かを感じていた。
それなのに、今日は全く感じられなくなった。
「アルギリスが作った異空間に繋がってい部屋は、どうだ?」
「あの日に見た闇は、その日には消えていた。それと同時に道も消えた。あの日から様子を見ているが、変かは無い」
創造神の言葉に、溜め息が出た。
これではもう捜しようがない。
まさか、道が消えてしまうとは思わなかった。
アルギリスの作った異空間が消えた可能知も考えたが、それなら姿を現すはず。
その報告が無いという事は、まだ異空間は消えていないのだろう。
そして異空間が消えていないなら、神国のどこかに道が出来たはずだ。
まぁ、その道はとても小さくて、見つけるのは簡単ではないだろうが。
「アルギリスについては、このまま警戒を続けるしかないな」
オウ魔界王の言葉に頷く。
今のアルギリスには、どれぐらいの力があるのか分からない。
もしかしたら、今回の事で弱体化したかもしれないし、逆に怨みが増して強化したかもしれない。
まぁどっちにしろ、アルギリスを見つけ出さないといけない。
放置していい相手ではないのだから。
「ただ、今の状態で探し続けるのは無理だ。そろそろ神国の復興に力を入れないと」
今、ほとんどの神がアルギリスを探してる。
それは、現状を考えると限界だ。
オウ魔界王が言ったように、神国の復興を優先させないといけないから。
「分かっている」
オウ魔界王の言葉に、神妙に頷く創造神。
アルギリスの攻撃で、神国は大きな被害にあった。
誰もいない星だけでは無く、多くの命が育まれていた星にも被害が出ていたのだ。
一気に大量の命が奪われたため、その対応をしなければならない。
このまま放置しておくと、多くの魂が苦しむことになってしまう。
「そうだ。命を生み出す場所は、問題は起こっていないか?」
アルギリスに囚われていた神達が、命花を変化させて守った場所。
「大丈夫だ。あと少しで通常通りに動き出すと言っていた」
囚われていた神達は、自分達の解放と共に命花も解放されたと言った。
その通り、命花に侵食していた呪いはその日に消えた。
でも、あの場所の権限が創造神に戻らなかった。
原因は、アルギリスの協力者が持って行った魔石。
その魔石が、命を生み出す場所の全てを司っていたのだ。
すぐに別の魔石を探したが、大きな力を制御しなければならず簡単に用意できる物では無かった。
創造神はすぐには見つけられないと諦めかけたが、ロープが魔幸石を持って来たお陰で問題は解決。
さすが、上級神が作ったとされる伝説の石。
その日の内に、命が生み出す場所の権限が創造神に戻った。
しかも魔石替わりの魔幸石には、意思がある。
何かしてくる者がいれば、反撃するとロープが断言したそうだ。
頼もしい。
「あっ、そうだ。魔幸石から話があると言われているんだった。なんでも、命を生み出す場所を調べて分かった事があったらしい。それを教えたいから、時間を作って欲しいと」
創造神の言葉に首を傾げる。
あの場所で新たに分かった事か。
ちょっと怖いな。
「分かった事?」
オウ魔界王も気になるようだ。
「うん。内容は全く分からない。でも魔幸石の言い方から、重要な事だと思う」
「その話の内容を、今度聞かせてもらえないか? もちろん話せない内容だったら、言わなくもいいが」
俺の言葉に、視線を向ける創造神。
「神国の存続に関する情報は、言えない。でも、それ以外の情報は共有したいと思っているんだ。情報を隠しておいてもいい事は無いだろうからな」
そんな風に思っているのか。
それだったら呪界についても話せる事は、言っておいた方がいいのかもな。
……別に隠し事は無かったな。
「確かにそうだな。魔界に情報で言える事は……」
オウ魔界王と視線が合うと、2柱で笑ってしまう。
「そもそも、何も隠していなかったな」
オウ魔界王の言葉に笑って頷く。
「聞かれた事には、全て答えていたしな。それに、俺の仲間達が魔界で自由に動き回っているから、隠したくても隠せないだろう」
俺の仲間があちこちにお邪魔しているせいで、魔界の事は筒抜けだ。
「それを言うなら、呪界でお世話になっている魔族達も、自由に動き回れるんだろう?」
そうだな、彼等の行動に制限は設けていない。
「あぁ、知られて困る事は無いから」
「魔界も呪界も、開放的だな」
オウ魔界王の言葉に笑ってしまう。
「羨ましい」
「「えっ?」」
創造神に視線を向けると、本当に羨ましそうに俺とオウ魔界王を見ていた。
「どうしたんだ?」
その様子に戸惑いながら声を掛ける。
「神達は、本当に色々な事をしていて……。記録装置で、アルギリスの協力者を探しているんだけど……まぁ、その途中で色々と知るというか」
「それは……」
一体何を知ってしまったのか、諦めたようにため息を吐く創造神。
「あれ? 以前も記憶装置で調べ物をしていたよな? その時には、その色々な事は出てこなかったのか?」
オウ魔界王の言葉に、パッと視線を向ける創造神。
「あっ、言い忘れてた! 前は記録装置を完全に掌握出来ていなかったんだ。外部の力が入り込んでいて」
外部の力?
「記録装置のある異空間に、闇がいたんだよ。ロープにお願いして、連れて行ってもらったから今はいないけど」
「そうなのか?」
異空間にも闇がいた?
「あぁ、神国と繋がっている道から入り込んだんだろうな。全ての闇が移動をしたら、出来る事が増えてビックリしたよ。一番良かったのは、記録装置の動きが速くなった事だな。まぁ、隠されていた情報が、出て来て事には驚いたけど」
その隠されていた情報の中に、神の色々な事が含まれていたんだろうな。
「明るみに出た神達の情報のせいで、調べる時間が増えたのも問題だけどな。はぁ。また、睡眠時間が削られる」
そんなに神達は、情報を隠していたのか?
……まぁ、予測できるような気がするな。




