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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
隣人とは……適度な距離が必要!
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147.逃げろ!

アルギリスから逃げられたのは、半分以下か。

これだと、助けられない者の方が多い。

どうすれば、全ての者に声を届ける事が出来るんだ?


「あの子達、一緒。蜘蛛達と一緒」


のろくろちゃんの言葉に首を傾げる。

あの子達、蜘蛛達……一緒?

蜘蛛達と少しでも一緒にいた事があるという事かな?


「やっぱり、蜘蛛達に動いてもらうしかないのか?」


でもそれでは、アルギリスの攻撃は止められない。

それに、爆発する直前の闇に入ってしまう可能性だってある。

蜘蛛達を、そんな危険な場所に行かせるわけにはいかない。


「蜘蛛達と一緒だと、何が起こるんだ?」


闇に囚われた神達に起こった事が分れば、他の方法が思いつくかもしれない。


「違う力。温かい力。ぽかぽか。ふわふわの力」


力?

のろくろちゃんの言葉は難しいな。

えっと……違う力というのは、アルギリスとは違う蜘蛛達の力という事だよな、たぶん。

その蜘蛛達の力が、ぽかぽかでふわふわで温かいのか?

蜘蛛達の力って、そんな感じだったのか?


「主の力を受けて、変わったんだ」


ロープの言葉に視線を向ける。


「変わった?」


「うん。呪界に住む者は、主の力に影響を受けて変化したんだ」


そうなのか?

全く気付かなかったけど。


「主の力が近くにあった者達は、守る力が異常に強くなったんだ。おそらく闇に囚われた者達は、その力を温かな力だと思ったんだと思う」


仲間達は、守る力が強くなっているんだ。

異常という言葉が、少し気になるけど。


「本当に?」


えっ?

親蜘蛛が、ロープに確認を取ったので少し驚く。

知らなかったのか?


「本当だよ。主と一緒にいる仲間達の力は、俺が初めて会った時と比べるとかなり変わった」


それは、力を制御せず垂れ流している俺のせいなんだろうな。

まさか、仲間の力を変えてしまうとは思わなかった。


「そうか。主と一緒」


親蜘蛛の嬉しそうな言葉に、孫蜘蛛も嬉しいのか前脚を2本上げた。

もしかして、ばんざいか?


ドーーーン。

ドーーーン。


あっ!

少し音が止んでいたのに。


音の発生源が遠いのか、光は見えないが連続して爆発音が届く。


「蜘蛛達の守る力か。俺の方が、その力は強いよな」


それなら囚われている神達に、俺の力を届けた後に声を届けたらどうだ?

力を届けたすぐに、俺の力が影響を及ぼすかは分からない。

でも、ここで何もせずに見ているよりは、いいはずだ。


アルギリスと囚われている神達に、俺の力を。


「という事は、神国全体か?」


俺の力、足りるかな?

すぐに復活すると言っても、少し不安だ。


でも、やるしかないよな。

彼等が逃げたいと思っているなら、手伝いたい。

それに攻撃を止めるには、彼等に協力してもらうしかない。


「主、何をするつもりだ?」


親蜘蛛の不安そうな声に、笑顔を作る。


「大丈夫。きっと成功させる」


アルギリスを探すために、神国全体を回っておいて良かった。

あれのお陰で、神国全体を把握する事が簡単に出来る。


頭の中に浮かぶ、神国。

その全体に、力を流していく。


「「「主!」」」


ロープと蜘蛛達の声が聞こえる。

あとで、怒られるかな。


「呪界王、俺の力を送ります」


創造神の声に、ちょっと驚く。

そうだ。

ここには、創造神がいたんだ。


「ありがとう」


神国は星が多いせいか、必要となる力が大量だ。

俺ですら把握できなかった大量の力を使っても、足りないなんて。

まぁ、すぐに新しい力が作られていくから、たぶん……大丈夫。


「あとすこし」


力は足りそうだけど、力を操るための体力がギリギリかもしれない。


「よしっ。力は、足りたな」


あとは、闇に向かって力を送ればいい。


『闇に囚われている神達に届け。そしてアルギリスから守れ!』


「浄化!」


体内の力が暴走したように、暴れ回るのが分かった。


「ぐっ」


膝をついて体を支える。

やはり神国全体に行き渡らせた力を操るのは、大変だな。


でもここで力を暴走させるわけにはいかない。

暴走している力を、なんとか抑え込んでいく。


「っつ」


右手に激痛が走る。

これまでの痛みとは全く違う激しい痛みに、左手で右手を押さえた。


しばらくすると、力を完全に落ち着かせる事が出来た。

痛みも同時に消えていく。


「はぁ」


んっ?

腕に、誰かの手の温かさを感じる。

地面に座り込み、腕を掴んでいた者に視線を向ける。


「アイオン神?」


「良かった」


あっ、攻撃の音が止んでいる。

成功?

違う、まだだ。

あとは声を届けないと。


「ふ~、ありがとう。あとは――」


「俺がやります」


創造神の声に視線を向けると、体が震えていた。

大量の力を使ったせいで、体が限界なんだろう。


「大丈夫か?」


声を届けるためには、力が必要になる。

今の創造神では、おそらく無理だ。


「全てを掛ければ」


「それは駄目だ。これからの神国に、君は必要だ」


俺の言葉に、眉間に皺を寄せる創造神。


さて、攻撃を再開される前に神達に声を届けよう。

力は既に溜まってるから、問題なし。

体力は……微妙だな。


「だが呪界王も力が……あれ? 力が戻っているのか?」


創造神も気付いたのか、目を見開く。

まぁ、いくら世界の王でもこの戻り方は異常だろうな。


「大丈夫だ」


さて、アルギリス。

お前から神達を解放させて見せる。


おそらく全ての神達は助けられないだろう。

でも1柱でも多く、守ってみせる。


「主、闇が」


ロープの声に視線を向けると、先ほどまで無反応だった闇に変化が起こっていた。

どうやら浄化の力が、闇に囚われた神達に変化を起こしてくれたみたいだ。


「アルギリスから逃げろ!」


力を籠めた声が、神国全体に響き渡る。

溜まった力が急激に減っていく。


「っつ」


激痛ではないが、右手に痛みが走った。


「翔? どうした? どこか、痛いのか?」


アイオン神の不安そうな表情に、首を横に振る。


「声が届いたか心配しているだけだ」


静まり変える神国。

いつもなら、神達や神族達の力が動き回っていたり、何処かから声が聞こえたりして賑やかなのに。

全く音がしない。


「成功したのかな?」


失敗していたら、攻撃が再開されてしまう。

どうだったんだろう?


「主!」


ロープの視線の先。


「「「「「あっ!」」」」」


俺や創造神。

蜘蛛達も、成功したあとの事を考えていなかったな。


目の前に迫る、大量の黒い粒。

成功したようで嬉しいが、ちょっと?

いや、かなり恐ろしい光景が目に入った。


「どうする?」


「創造神に任せるぞ」


「いや、ごめん。さすがに無理だ!」


あははっ、そうだろうな。

本当に、あの大量の黒い粒をどうしようかな?

1つひとつが、神だった者の魂なんだよな。


「どうしたらいいかな?」


彼等を受け入れる場所は、今の神国にあるかな?

アルギリスの事もまだ終わってはいないし、少し距離を開けたいかも。


「こっち、こっち」


「えっ?」


のろくろちゃんの声に視線を向ける。


「僕達、あの場所。一緒に、眠る」


あの場所? 眠る?

のろくろちゃんの眠っている場所?


「もしかして、墓場にある湖の事か?」


「そうそう。疲れてる、休む。一緒にやすむ」


いいかもしれないな。

囚われていた神達は呪いに落ちているから、呪界の方が落ち着けるだろう。


「創造神、彼等は俺の世界に連れて行くよ」


俺の言葉に、神妙に頷く創造神。


「うん。その方が落ち着けると思う」


「ありがとう」


というか、周りを黒い粒に囲まれだしたな。

急ごう。


呪界にある地下神殿。

墓場の空間にある湖。


彼等を送る墓場に意識を向けると、パッと目の前に扉が現れた。


「繋がったのかな?」


扉をそっと開けて確かめる。


「主?」


驚いた妖精の表情に、笑ってしまう。


「見守りありがとう、ちょっと呪いに落ちた神の魂を大量に送るから」


「えっ? えっ?」


不思議そうに、扉の前で飛ぶ妖精に離れるように言うと、扉を大きく開ける。


「こっち。こっち。みんな、こっち」


先頭を、のろくろちゃんが入っていくと、それに続いて黒い粒も扉を通って行く。


「……湖が黒い粒に占領されそうだな」


呪界に戻ったら、確認しないとな。

それにしても、本当に多いな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主、痛みを素直に話さないと後で皆に怒られるぞ。絶対面倒なことなんだから。
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