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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
隣人とは……適度な距離が必要!
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146.届け!

創造神の住む建物から出ると、ロープの前で立ち止まる。

そしてロープや親蜘蛛の周りを見る。


「ロープ。その飛んでいる物は何だ?」


周りを飛び回る、黒い粒。

直径1㎝ぐらいだろうか?

それが……数は分からないが、とにかくいっぱいいる。

そして、小さいのに一つひとつに呪いの気配がする。


「主! この子達! この子達は、闇にいたの」


のろくろちゃんが、興奮した様子で俺の周りを飛び回る。

それに驚きながら、言われた言葉を考える。


闇にいた。

つまり闇の中に……魂を持つ者がいたという事か。

えっでも、闇の中を調べても、魂を感じる事は無かったよな?

魂がいる闇と、いない闇がいるという事だろうか?


「アルギリスの力と溶け合っていたから『そこにいた』のに、気付けなかったみたい」


ロープの説明に首を傾げる。

アルギリスの力と溶け合っていた?


「孫蜘蛛が話しかけた事で、力の中で漂っていた意識が少しずつはっきりしたそうだよ」


「一緒! 一緒だよね。そうそう」


ロープの言葉に、のろくろちゃんが楽しそうに空中で飛び跳ねる。

器用だな。

それと、何が一緒なんだろう?

のろくろちゃん達も、何かと溶け合っていたのか?


「そうか」


とりあえず、孫蜘蛛が頑張ったという事だな。


「んっ?」


闇の中にいたんだよな。

飛び回っている黒い粒を見る。

周りを見渡すと、あちこちに闇が見える。


「ちょっと待て」


今、この空間だけでも闇の数は30個近くある。

それが神国全体だと?


「どれだけの闇があるんだ?」


俺の言葉にロープが首を横に振る。


「分からない。闇の中に魂は無いと思っていたから、調べていない。でも、相当な数だと思う」


そうだろうな。

アルギリスを探している時にも、あちこちで闇を見た。

その数は、本当に凄い物だった。


「あれだけの数が、被害に?」


「主。この状態になってから、話せなくなったけど。彼等は神だったらしい」


「神?」


近くにある闇に手を伸ばす。


あれ?

今までと触れた時の感覚が違う。

前は、掴みどころがない感じだったのに、今は掴めるような感じがする。


「これが孫蜘蛛の起こした変化なのか?」


それだったら凄いな。

でも、闇の中に魂の存在は感じない。


「いるんだよな?」


ロープを見ると頷いている。

魂と意識がアルギリスの力に溶け合っている、という認識でいいのかな?

……怖いな。


「この子達、にげたい。にげる。にげる」


のろくろちゃんが、俺の前に飛んでくる。


「逃げる?」


「そう。うん。怖いやつ、逃げる。逃げれない。でも逃げる」


怖い奴というのは、アルギリスの事だな。

逃げる、逃げれない?

……アルギリスから逃げたいけど、逃げられない状態なのか。


親蜘蛛の周りを、飛び回る黒い粒を見る。

彼等は、アルギリスから逃げ出せた子達。


目の前にある闇を見る。

この中にいる子は?

まだ、意識がはっきりしていない子達はどうなる?

話しかける方法しかないのか?


「変わった。みんな、すこしこっち。みてる」


のろくろちゃんが闇の前でくるくる回る。


こっちを見てる?


ドーーーン。

ドーーーン。


「あっ! また!」


創造神が上空を見上げる。

その視線の先には、光。

アルギリスの攻撃が、また始まったようだ。


「主。アルギリスは闇を使って攻撃をしているんだ」


「闇を?」


つまり神の魂?


「うん。アルギリスは闇に力を送って爆発させている」


「はっ?」


ぐっと両手を握る。

膨れ上がりそうになる力をぐっと押さえる。


「つまり神達の魂を爆発させているという事だな」


「うん」


あ~、心の底から怒りが湧いて来る。

魂までも利用するなんて。


のろくろちゃんを見る。

親蜘蛛の周りと飛び回る黒い粒を見る。


アルギリスから、全員が解放されるべきだ。

今までの苦しみから、憎しみから。

そして全てを諦めてしまった絶望から。


でも、どうすればいい?

考えろ。

きっと方法はある。


「主?!」


「呪界王?!」


ロープと創造神が、戸惑っている様子が分かる。

そうだろうな。

膨れ上がった力が抑えきれず、溢れ出してしまった。


「すまない」


力を制御しながら、彼等を解放する方法が無いか考える。


んっ?

囚われている者達は、呪いに落ちているよな?

親蜘蛛の周りを飛び回っている者達が持つ気配から、それは間違いない。

アルギリスも、呪いに落ちた存在だ。

でも、彼等は別の存在だから彼等が使う呪力は別の力だ。

でも闇からは、1つの呪力しか感じない。


「溶け合っているからか」


これを分ける事が出来たら。

アルギリスから送り込まれる力を、拒絶出来るのでは?

それに、強制的に力を分ける事で、意識がはっきりするかもしれない。


「だって、闇の中に囚われている者とアルギリスは、別々の存在なのだから」


目の前に合った闇が、ぐにゃりと形を変えた。


「えっ?」


ビックリした。

何が起こったんだ?


「主、危険だ」


ロープがスッと俺の前に出る。

それに首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「何が起こるか分からないから」


もしかして、俺を守てくれているのか?


「ロープ。俺は大丈夫だ」


俺の言葉に、チラッと振り返るロープ。

でも、場所を変える気はないようだ。

それなら、


「ありがとう」


変化を続けていた闇が、落ち着く。

そして、暫くすると闇がスーッと消え始める。


「消えた」


創造神の言葉に、周りを見る。

囚われていた者は、本当に消えてしまったんだろうか?


「「「「あっ!」」」」


完全に闇が消えると、同じ場所に黒い粒が現れた。

そして、仲間達の所に飛んで行く。


どうやら、アルギリスの力から逃げ切れたようだ。

でも、どうしてあの子に変化が起こったんだ?


変化が起こる前……俺の言葉か?


俺が「闇の中に囚われている者とアルギリスは、別の存在だ」と言った声が聞こえていたのか?。

目の前にいたから、その可能性は高いか。


周りを見る。

実験をしてみればわかるはずだ。


変化していた闇の様子を見ていたけど、痛がっている様子も、苦しがっている様子も無かった。

だから、きっと実験で苦しい思いをさせる事はない。


「結界」


周辺にある闇と、俺を囲うように結界を張る。


「主?」


不安そうに見つめて来るロープに、笑みが浮かぶ。


「大丈夫」


周りにある闇に声が届くように、息を吸い込む。

そしてアルギリスがやったように、声に力を籠めるように意識する。


「闇の中に囚われている者とアルギリスは、別々の存在だ」


結界内に響く俺の声。

すぐに、闇に変化が訪れた。


「さっきと同じだ」


ロープの声に、ぐにゃりと形を変えた闇を見る。

ただ、形を変えた闇は半分程度。

残りは、特に変化は起こっていない。


「全てに声は、届いていないか」


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