139.とうとう。
「繋がっている場所は分かったけど、どうする?」
創造神の言葉に悩む。
見つけ出したアルギリスに繋がる場所。
このままアルギリスが作りだした異空間を調べるべきか、それとも別の方法を考えるか。
ただ、他の方法は全く思いついていない。
「調べるしかないか」
遥か昔から、そこにいただろうアルギリス。
一体どれほどの力を蓄えているのか、怖いものがある。
神を襲っても傷1つ付けられないけど、世界を越えて魔界王を狂わせる事は出来た。
正直、どれぐらいの力があるのか予想が出来ない。
「大丈夫かな?」
創造神が不安そうに俺を見る。
「大丈夫だ」
しっかりしろ。
不安な表情は見せるな。
「結界を張って俺が調べる。ただ、何が起こるか分からないから……創造神は部屋を結界で覆ってくれ」
俺の結界だけだと、俺に何かあった場合が不安だ。
だから、創造神の結界を部屋に張ってもらおう。
こうしておけば、何かあっても部屋からは出られないはずだ。
もし、結界が破壊されるような事態になったら……考えたくはないが、もしもの時にはロープに動いてもらおう。
「呪界王。アルギリスの事は神国の問題だから、俺が調べるべきでは?」
「いや、創造神は神国を守って欲しい。俺の体は呪界にあるから、何かあっても最悪な事態にはならないはずだ」
まぁ、おそらくだけど。
でも体も魂も呪界にあるんだから、大丈夫だろ。
『ロープ。ロープ』
聞こえないかな?
『どうしたの?』
良かった。すぐに通じた。
『お願いがあるんだ。今からアルギリスの作った異空間を調べるから、神国全体に異変がないか見ていて欲しいんだ。そして何かあったら、すぐに知らせて欲しい』
『分かった。それと、主は大丈夫なの?』
心配そうな声に、つい小さく笑ってしまう。
『たぶん、大丈夫だよ』
「呪界王?」
創造神が不思議そうに俺を見ている。
「ロープに、何かあったら知らせるようにお願いしたんだ」
「そうか、ありがとう。あの呪界王、異空間で何かあったらすぐに逃げてくれ」
「もちろんだ」
無茶をするつもりは無い。
俺の傍でリーダーが、悲壮な雰囲気を出しているし。
「大丈夫だって」
リーダーを見る。
「主は、誰よりも強いです。ですが……前の事がありますから」
あぁ、命を懸けて呪界を守った事か。
それを言われると、何も言えないな。
でもあれは不意を食らったからで、今回は違う。
「危険を感じたら、絶対にすぐに手を引くから」
「絶対ですよ」
真剣な声に、リーダーを見て頷く。
仲間達を悲しませるわけにはいかないからな。
安全を最優先に、調べよう。
「呪界王。部屋を結界で覆ったよ」
「ありがとう。では、始めるな」
椅子に深く座り、目を閉じる。
創造神が住む建物の寝室に繋がり……次は天井に移動して……あった。
「結界」
天井にある、アルギリスに繋がる場所周辺に結界を張る。
準備は、これでお終い。
アルギリスの力が感じられる場所を、俺が持つ本来の力でゆっくりと探る。
神力だけの方がいいかとも思ったけど、なにかあった場合にすぐ対処が出来るように本来の力にした。
神力、魔神力、呪力が混ざった俺の力なら、色々な事に対処が出来るだろう。
「本来の力だと、アルギリスの力を感じやすいみたいだな」
アルギリスの力をゆっくり辿って行く。
ゆっくり……ゆっくり。
あまりに反応がないため、首を傾げる。
「力に触れたら、もっと反抗されると思ったけど。無反応?」
警戒を強めながら、アルギリスの力を辿って奥に行く。
この辺りから、アルギリスの力が強くなり始めた。
微かに感じていた力が、どんどん濃くなっていく。
あと少しで、アルギリスの作った異空間に出られそうだ。
濃くなっていくアルギリスの力を感じていると、ゾクッとした冷たさを感じた。
「んっ?」
『……』
アルギリスの力が変化した?
それに、何か聞こえたような……。
『にくい! にくい! 死ね!』
「うわっ」
「主!」
耳元で叫ばれた。
それに、体が引きずられるような感覚。
違う。
体は呪界にあるのだから、そんな事が起こるわけ無い。
「主? 大丈夫ですか?」
「あぁ。驚かせたな悪い。大丈夫だ」
あれが、呪詛?
俺の知っている呪詛とは、明らかに籠められた力が違う。
以前、のろくろちゃん達が俺に聞かせていた呪詛は、どうする事も出来ない思いが溢れ出しているようなものだった。
でも、今の呪詛は……確実に聞いた相手を殺したいと望んでいた。
そんな力を、強く感じた。
あれ?
俺の力が不安定になっている。
ふぅ、抑えないと。
アルギリスの力は、相当なものだと判断した方がよさそうだ。
神を傷つけないのは、もしかしたら神を仲間だと思っているから?
いや、それなら襲わないな。
「呪界王? 大丈夫か?」
あっ、創造神とパネルで繋がっていたんだった。
「悪い。強い呪詛の攻撃を受けたんだ」
ちゃんと説明した方が良いよな。
「『にくい、死ね』と言われて、引っ張られた」
俺より、創造神の近くにアルギリスはいるのだから。
「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。創造神の結界に、何か変化は?」
あれだけ強い呪詛を生み出せるんだ。
創造神の結界を、壊すかもしれない。
「結界には何も起こっていない。とても静かだ」
「そうか。良かった」
あれだけの力があるのに、静か?
アルギリスの作った異空間だったから、強い呪詛が生み出せたのか?
「呪界王のお陰で、アルギリスが呪いになった事が確実になったから、浄化が出来るな」
呪詛を生むのは呪いだ。
アルギリスが呪いになったと予想はしたが、呪力に似た力だったから絶対とは判断できなかった。
でも、今の事で間違いなくアルギリスが呪いになったと分かった。
確かにこれは、いい報告だな。
「そうだな」
ただ、呪詛の力から考えて、そうとう強く濃い力を溜めこんでいる。
俺だけの力で、浄化が出来るだろうか。
「俺と呪界王の力があれば、きっと何とか出来る」
「えっ?」
俺と呪界王?
創造神を見ると、「よしっ」と気合を入れている姿が見えた。
あぁ、そうだよな。
創造神は守られる側では無く、守る側。
俺と同じだ。
「そうだな。俺達で呪いになったアルギリスを浄化しよう」
「あぁ」
あとは、どうやって浄化するかだな。
アルギリスの異空間で浄化が出来れば一番だろうか?
でも、あの空間に入ると呪詛に飲み込まれるかもしれない。
いや、襲ってくる事が分かっていれば対処は出来る。
呪詛は聞こえる声より、心に影響を及ぼす力の方が問題だ。
それを防げば、飲み込まれる事も無いだろう。
つまり心を守る結界……どうやって張るんだ?
心なんて、見えない物に結界なんて張れないだろう。
「どうしたんだ?」
「アルギリスの作った異空間で、浄化を行うのが一番いいと思うんだ」
「そうだろうな。アルギリスを守る場所」
「うん。だが、そこに行くと呪詛に襲われる。だから呪詛をどうにかしたいんだけど、方法が無くて」
体に結界を張ったら、心も守られるかな?
……無理だな。
『主! 創造神!』
「えっ、何?」
不意に聞こえたロープの声に、創造神が慌てた様子で周りを見る。
「どうした? 創造神、ロープだ」
「あぁ、ロープか」
『今、蜘蛛達から連絡がきた。神が襲われて怪我をした』
ロープの言葉にぐっと手に力を入れる。
今という事は、俺が異空間に入り込んだせいか?
「怪我の具合は?」
『腕が切り落とされたけど、すぐにヒールで治したから大丈夫』
「怪我を負ったのは1柱だけ?」
『そうだ。一緒にいた神族は襲われなかったから』
今回も神だけを襲ったのか。
それの意味も分からない。
「場所は?」
『アイオン神の住む建物の前』
ロープの言葉に、彼女の顔を思い浮かべる。
すぐに、元気に走り回るアイオン神の姿が頭に浮かんだ。
彼女はどうやら元気なようだ。
それにホッと息を吐き出す。
「我々が探し当てたから? 警告?」
創造神の言葉に、首を横に振る。
「分からない」
どうして急に実際に傷を負わせたのか。
創造神が言うように、警告なのか?
それなら、神達が危険だ。
襲われた神達がいた場所を、ロープに調べてもらった。
その結果、アルギリスは神国ならどこでもその力を振るう事が出来ると分かった。
つまり、神達に逃げ場がない。
『そうだ。怪我をした神から呪力を感じたんだ。たぶん襲った相手の力の残滓だと思うんだけど。アルギリスは呪力に似た力だったよね? でも似た力ではなく呪力だった。何故だろう?』




