126.喜んでいます。
―リーダー視点―
「こちらです」
カシュリア神の案内で、神国にある彼女の兄ガルアル神の執務室に向かいます。
執務室の入っている建物は真っ白な建物で、神国ではこれが普通だそうです。
全く色を使わないため、壁も廊下も真っ白。
綺麗ですが、窓から入る光で眩しいです。
隣を見ると、1mほどのサイズになった飛びトカゲが優雅に飛んでいます。
主が可愛いと言って気に入っているため、龍達にも人気のサイズです。
ただ、この大きさだと威厳が無くなってしまいます。
今回は、飛びトカゲも一緒なので創造神に許可を貰って神国に入りました。
その様子を見ていたロープが「あぁ、許可か」と言っていましたが、無断で入るより安全だと思います。
今まで、思いつかなかったのでしょうか?
「あれは」
カシュリア神が立ち止まり、窓から外を見るのでつられて視線を向けます。
赤い髪を持つ神が、少し怒った様子で向かいにある建物から出て行くのが見えました。
赤い髪を持つ神は、数人いるのですが誰でしょうか?
「向かいの建物は誰のですか?」
「私の執務室がある建物です」
つまり、あの赤い髪の神はカシュリア神に会いに来たのですね。
「今から追えば、会えますが?」
「いえ、会う必要は無いので」
少し低くなった声。
そして微かに感じる嫌悪感。
かなり嫌いな神のようですね。
という事は、第5位のカアシア神の可能性が高いです。
ロープの報告では、カシュリア神とカアシア神は周りが認めるほど仲が悪いそうです。
でも、仲が悪いのに会いに来るという事は?
「かなり重要な話が、あったのではないですか?」
私の言葉に、嫌そうな表情をしながら頷いたカシュリア神。
これは、分かっているが会いたくないという事ですね。
「あとで、用件を聞きに行きます」
本当に嫌っているんですね。
でも、カアシア神は真面目な神だとロープの報告書に書いてありました。
まぁ、怒りっぽく短気だとも書かれてあったのですが。
彼女の報告書を読んで首を傾げました。
真面目なのに、短気で怒りっぽい。
どんな神なのか、ちょっと想像が出来なかったんです。
「ここです」
大きな扉の前で立ち止まります。
扉の外には護衛の神がいました。
「第1位の神ともなると、神の護衛が付くんですね」
アイオン神の護衛は、補佐でもある神族のマッシュです。
神族が神の護衛になるのかと不思議に思いましたけど。
神と神族では力の差が大き過ぎますので。
「彼等は私の部下です。色々あったので、心配で付けました」
カシュリア神の部下ですか?
そうですか。
カシュリア神が扉を叩くと、中から疲れた声が聞こえました。
そっと中に入ると、大量の書類と空中に浮く直径3㎝ほどの白い玉が沢山見えました。
これは全て、あちこちから来る報告書ですね。
凄い量です。
「えっ? えぇ?」
中に入った私と飛びトカゲを見て目を見開くガルアル神。
あれ?
来ることを言っていなかったのでしょうか?
カシュリア神を見ると、にやりと笑っているのが見えました。
ワザと言わなかったのですね。
「確かめたい事があったから、呪界の王の側近リーダーと飛びトカゲに来てもらった」
「……そう、か」
戸惑った様子のガルアル神に、軽く頭を下げます。
「はぁ、カシュリア神。ビックリするだろうが!」
「はははっ。この頃、仕事詰めで苛立っていると聞いているから、ちょっとしたお遊びだ」
悪戯にも意味があるみたいですが、余計に疲れさせるのではないでしょうか?
「どうですか?」
隣を飛んでいる飛びトカゲに、そっと声を掛けると小さく頷くのが見えました。
やはりガルアル神は、カシュリア神と双子のようです。
それにしてもなぜ、神が年子で生まれたのに他の神達は疑問に思わなかったんでしょう?
普通は「変だ」と思いますよね?
「それで今日の用事は何なんだ? 呪界の者達にまで迷惑を掛けて」
ガルアル神の言葉にカシュリア神が飛びトカゲを見ます。
「間違いなく2人は双子だ」
飛びトカゲの言葉に、カシュリア神は嬉しそうに笑ってガルアル神に飛びつきました。
「はっ?」
カシュリア神の急な行動に、驚いた声を出すガルアル神。
さすがに私も、今の行動に驚いてしまいました。
カシュリア神は、冷静な性格だと思っていたのですが違うようです。
「どうしたんだ? それに双子?」
「あぁ、私とガルアル神は双子だったんだ」
ガルアル神は少し唖然とした次の瞬間、嬉しそうに笑みを見せました。
双子なのが嬉しいんですね。
神国では不吉な存在とされているのに、何故でしょうか?
「喜んでいるな」
「そうですね」
飛びトカゲの言葉に頷いて、ガルアル神の執務室にいた補佐の神族に視線を向けます。
彼も、なぜか双子と聞いて喜んでいます。
本当に、不思議です。
少し落ち着いたのか、ガルアル神に椅子を勧められました。
お礼を言って座ると、隣に飛びトカゲが座ります。
いえ、この場合は寝そべったが正解ですね。
「本当に俺達は、双子なんですね?」
正面に座ったガルアル神が、神妙な表情で私を見ます。
まるで嘘を言っていないか、確かめているようです。
「はい、間違いなくお二人は双子だと思われます」
「そうか。はははっ、母も隠す必要なんて無かったのに」
ガルアル神の言葉にカシュリア神が、何度も頷きます。
「双子なのが嬉しいのですか?」
「はい。俺達は年子で生まれたせいで、陰で色々と言われていまして」
悪い噂があるという事ですね?
「俺は神として生まれましたが、神力が本当に弱くて」
「そうなんですか?」
「えぇ、もしかしたら成長と共に神力が無くなるのではないかと心配されたほどです」
神国では、生まれた時に神か神族か判断されますが、その時の判断材料が神力の有無です。
神力が感じられれば神、感じられなければ神族でしたね。
消えてしまいそうでも、神力があったのでガルアル神は神として育てられたのでしょう。
今の強さからは、全く想像が出来ないです。
「そしてカシュリア神……妹は瀕死の状態で生まれたと言われています。年子で生まれた神は今までにいませんでした。だから、奇跡と言われながら陰では父親が違うのではないかと言われ続けました。妹が瀕死だったのは、母の力が足りなかったから。でも生き延びられたのは、俺の神力が弱くそれほど母の神力を奪わなかったからだと」
なるほど、双子だと分かって喜んだのは、陰で言われた事が嘘だとはっきりしたからですね。
なんだか、いい事をした気分ですね。
「双子だと分かった事を、両親に話してみてはどうですか? 彼等も『知っている』と分かれば、本当の事を話してくれるでしょう」
最後はやはり、両親から話を聞くのが一番です。
「「えっ」」
どうして、そんなに困った表情になるんでしょうか?
もしかして、
「お亡くなりに?」
私の言葉にハッとした様子を見せ、2柱が首を横に振ります。
「いいえ! 生きてます! ただ以前、生まれについて聞こうとしたら凄く拒絶された事があって」
カシュリア神が、困った表情でガルアル神を見ます。
でもそれは、双子という事を隠すためだと思います。
だから、双子だと知ってしまった以上は、もう拒絶はされないと思うのですが。
「でも話を聞きたいな」
ガルアル神の言葉に、カシュリア神が少し戸惑ったあとで頷きました。
やはり本当の事は、親から聞きたいのでしょう。
「あの、一緒に両親に会ってくれませんか?」
ガルアル神の言葉に、一瞬何を言われたのか分かりませんでした。
ゆっくり意味が分かると、首を傾げます。
「なぜですか?」
「本当の事を知ったと言っても、信じてくれるか分からないので」
確かに、それはあり得るかもしれません。
「分かりました」




