116.第12位の神。
―第12位の神視点―
「危なかったわ」
あの集まりで、少しでも創造神に対して反抗する態度を見せたら潰されるところだった。
まぁ、あの青二才に命令された苛立ちは隠せなかったけど。
でも私は、今回は何もしていないのだから目を付けられても、普段通りに過ごせばいい。
「創造神の傍に、神族を送り込みますか?」
同じ志を持つ神。
第22位のターガス神の言葉に首を横に振る。
「いいえ、今は動く時ではないわ。あの集まりで分かった。創造神を甘く見ては駄目よ」
「そうでしょうか?」
私の言葉に不思議そうな表情を見せるターガス神。
そんな態度に、溜め息がこぼれる。
「創造神が住む建物の開放をあんなに簡単に行ったのよ。かなり力がある事は間違いないわ」
創造神が住む建物には、歴代の創造神が重ね掛けした結界や守りの魔法が掛けられていた。
それを、あんな短時間で全ての魔法を解除してしまった。
「あんな若造に何が出来ると思っていたけど……全くの予想外だわ」
「あの、少し不思議に思ったのですが」
「何よ」
ターガス神を見ると、首を傾げて何かを考えている。
「あの建物を開放したら、何か変わるのですか?」
「えっ?」
あの建物は、創造神を特別な存在にするための力が眠っていると聞いた事があるわ。
でも、その眠っている力がどんな物なのかは知らないのよね。
あれ?
開放したら、眠っている力はどうなるのかしら?
……もしかして、創造神は弱まるのでは。
「それは、私にとってチャンスになるわよね」
でも待って。
創造神は「中に閉じ込められたせいで私は創造神としての力を失うところだった」と言っていた。
つまりあの建物には、眠っている力なんて無かったという事?
もしくは、今の創造神では眠っている力を利用できなかった。
駄目だわ。
情報が少なすぎて、判断が出来ない。
もう少し詳しく調べないと。
「アピーシュ神? どうしました?」
ターガス神の声にハッとする。
「あら、ごめんなさい。少し考え事をしていたの」
「いえ。それで、あの建物を開放したら何が変わるのですか?」
「それが開放したらどうなるのか、私は知らないのよね。そうだ、ターガス神。あなた、開放したら何が起こるのか調べてくれない?」
私の言葉に、驚いた表情をするターガス神。
「私がですか?」
「えぇ」
ターガス神は、少し口が軽いところがあるけど仕事は出来るのよね。
「分かりました。調べてみます」
「よろしくね」
でも、開放したらどうなるのか、どうして知らないのかしら?
「アピーシュ神が知らないという事は、開放しても特に変化は無いという事なんでしょうね」
ターガス神の言葉に首を横に振る。
「それは違うわ。開放したら、影響を受ける神達や神族達がいるわ」
開放する前は、創造神の身の回りの事をする神族と、創造神に認められた少数の神達しか中には入れなかった。
だから、中に入れる彼等は特別な存在として扱われた。
神としての地位が弱くても、あそこに入れるだけで特別になれた。
神族達にとっても、目標の場所になっていた。
地位の弱い神より、周りを動かす力があったからね。
まぁ目標にして頑張ったとしても、創造神が属していた派閥に仕える神族が優先されていたけどね。
それが原因で派閥に神や神族が集まるから、派閥の力も増したのよね。
あれ?
今の創造神になっても、前の創造神を送り込んだピスリアリ神の派閥から神族が選ばれていたわね。
どうしてかしら?
あっでも、昨日見た創造神に仕える神族は、ピスリアリ神の派閥ではないわね。
ピスリアリ神の派閥に入れる神族は、髪と目の色が同じなのよね。
あれは、神族の中でも力が強い者に現れる特徴。
でも昨日見た神族は、黒い髪に青い目を持っていたわ。
知らない間に、創造神に仕える神族が変わったのかしら。
「確かに、あの場所に入れる者は特別扱いでしたよね」
ターガス神の言葉に頷く。
「開放されたなら、派閥関係なく誰にでも特別になれるチャンスがあるという事ですか?」
「それは違うわ。特別になれたのは、会えない創造神に意見や声を届けてもらうために、周りが彼等を特別に扱ったからよ。より多く、自分の意見を創造神に伝えてもらうためにね。今は直接、自分の意見や声を創造神に伝えられるのよ? 誰も創造神に仕える神族を優遇する事はないわ」
「あぁ、そっか。その通りですね」
創造神の周りも気付かない内に変わっているようね。
「あっ、そろそろ俺は行きますね」
「用事でもあるの?」
「はい。第9位のダジャ神に呼ばれているんです」
ダジャ神。
彼は、ガルアル神の派閥に入っているけれど中立の立場だったわね。
そんな者が、私の仲間だと公言しているターガス神を呼んだの?
ダジャ神が、私の仲間に……なる事は無いわ。
彼は、揉め事を本当に嫌う。
「ターガス神。ダジャ神の用事が何だったのか、後で教えていただける?」
「もちろんです」
「ありがとう」
部屋を出て行くターガス神を見送る。
「創造神は、何をしようとしているのかしら?」
建物を開放する事で、特別な神と神族を作らないようにしたのだと思う。
でも、それだけなのかしら?
創造神は、神達にとって偉大で特別な存在。
そんな存在が自ら、我々の元に下りてきた。
「創造神の弱みを握りやすくなったと思うべきなのよね」
接触が増えれば、相手の弱みは握りやすくなる。
でも、どうしてかしら。
なぜか触れてはいけないような……そんな気持ちになっているのよね。
思っていたより力が強かったから?
それとも、あの建物を開放したのが原因?
「はぁ、分からないわ。とりあえず、出来ることからやるしかないわね」
まずは、あの集まりの時に問題を起こした神達の処分がどうなったか。
処分が厳しいなら、私から離れて行く神達もいるはず。
離れて行くだけならいい。
裏切り者になる場合もあるから注意しないと。
あと、創造神の周りの神族が入れ替わったのか確認も必要よね。
創造神が席を置いていたリースリア神の派閥から多く神族が採用されているなら、あの派閥との関りも考えないと。
そしてあの時の、黒い塊。
棚にある箱を開ける。
そこには、黒い塊が閉じ込められたガラスの入れ物がある。
そのガラスには、魔法陣が描かれている。
神力で描かれた魔法陣なので、かなり強力な封印がされているのが分かる。
「これが、あんな不気味な力を生み出すなんて聞いていないわ」
どうして、彼はこれを私に贈ったのかしら。
確かに、創造神を消す力が欲しいとは願った。
でも、あんな不気味な力を閉じ込めているとは思わなかったわ。
もしあの不気味な力が、あのまま広がったらどうなっていたのかしら?
ふっ、考えたくもないわね。
箱を元の場所に戻し、小さく息を吐く。
これの扱いは、注意しないと。
間違って割れてしまったら、大変だから。
「これをくれた彼についても、調べないと駄目よね」
情報は大切だわ。




