107.変わった!
なんだか、創造神の表情が変わった様な気がする。
それに「私」から「俺」になった。
本人は気付いていないみたいだな。
オウ魔界王も気付いたのか、少し面白そうな表情をしている。
彼の研究対象は、物だけでなく人や神もだからな。
目の前の存在に興味が湧いたんだろう。
んっ?
創造神を研究対象?
これは……魔界と神国で離れているから大丈夫か。
「『俺』が本来の創造神か?」
オウ魔界王の言葉に、ハッとした表情をした創造神。
そして今まで見せていた笑みとは違う、笑顔を見せて頷いた。
「はい」
何が良かったのかは分からないけど、いい方向にいったな。
「あの、翔呪界王」
「何?」
「さきほど、聞きたい事があると言っていましたけど、なんでしょうか?」
あっ、忘れていた。
創造神が言ってくれてよかった。
「フィオ神から話は聞いたと思うんだけど、星の移動の件。どうなったのか聞きたくて」
「星の移動?」
不思議そうなオウ魔界王に頷くと、創造神を見る。
「創造神。オウ魔界王に星の事を話しても構わないか?」
創造神を見ると、なぜか嬉しそうな表情で頷いてくれた。
「俺の意見も聞いてくれるんですね」
ぼそっと聞こえた言葉に、ほんの少し顔が歪む。
創造神なのに、彼の意見を聞く者がいなかったのか。
最悪な環境だな。
「ありがとう」
創造神にお礼を言ってから、オウ魔界王に落ち神やその仲間から隠れている神達の話をした。
「そんな存在がいるのか」
「そうなんだよ。ロープが接触をしたんだけど、外との関係を完全に絶っていたから隠れる原因となった落ち神は既に罰を受けた事も知らなかったんだ」
ロープはシーバー神だけではなく、残りの6個の星の代表とも話をした。
その全ての星で、落ち神の事を全く把握していなかった。
そのためロープはかなり苦労したみたいだ。
「どうすれば信じてくれるんだ?」と、頭を抱えていたからな。
「しかし、星の移動なんて可能なのか?」
オウ魔界王の言葉に、創造神も不安そうに俺を見る。
「それは大丈夫。既にイメージが出来ているから、あとは魔法を発動させて移動させるだけだ」
「凄いな」
「凄いですね」
オウ魔界王と創造神が、感心した様子で俺を見る。
それに肩を竦める。
「創造神。それで答えは?」
「あぁ、そうでした。星に住む者達が了承すれば、移動をしても大丈夫です」
よしっ。
「ありがとうございます」
創造神のお礼の言葉に首を傾げる。
「お礼を言うのは、俺の方だろう?」
どうして創造神が、頭まで下げてお礼を言うんだ?
「神国では神の数が圧倒的に足りない状態なので、少しでも管理しなければならない星が減るのはありがたいです」
「しなければ」か。
そうとう、星が重荷になっているみたいだな。
「悪いな。俺では手助けが出来そうにない」
オウ魔界王の言葉に、創造神が慌てて首を横に振る。
「オウ魔界王が謝る事ではないです」
神国の星を魔界に移動するのは、本当に無理かな?
神が星を管理しなければならないのは、そこに命があるからだ。
そして神国で生まれたから、魔神力と闇の魔力が害となる。
これが、今までの常識だ。
でも、魔神力と闇の魔力が害にならない場合もある。
それは、俺の住んでいる星で結果を出している。
俺のいる星は、神国にあった時から既に魔神力と闇の魔力が世界に流れていた。
でもその2つの力が、俺の星に住む者達に害になった事は無い。
おそらく、ゆっくり力に慣らしていけば害にならないのだと思う。
たぶん。
「どうした?」
オウ魔界王を見る。
「魔界にも星が移動出来る可能性を考えていた」
「「えっ?」」
驚きの声を上げるオウ魔界王と創造神。
その2柱を見て、俺の住んでいる星の少し前の状態を話す。
たぶん、既に話は知っているはずだけど。
「そういえば、神国にいる間から既に魔神力と闇の魔力が流れていたな」
オウ魔界王の言葉に頷く。
「あぁ、でもこの2つの力が、俺の星に住む者達に害を及ぼした事はない」
俺の話に神妙な表情を見せる創造神。
今までの常識が覆される可能性があるから慎重になるよな。
「試してみたいな」
「えっ?」
創造神から思いもよらない言葉が聞こえて、ちょっと固まる。
「試す?」
俺を見て頷く創造神。
なんだろう、目に力が入っている気がする。
「はい。試したいです。それで成功したら、魔界にも星の移動をお願いしたいです」
オウ魔界王と顔を見合わせる。
「本気か?」
戸惑った表情のオウ魔界王。
「はい。今分かった事なんですが、このままの状態が続くと半分の星が崩壊する可能性があるみたいです。それなら何でも試してみたいと」
半分が崩壊?
というか、「今分かった事」と言ったな。
オウ魔界王が、創造神の言葉に笑みを見せる。
俺も似たような表情になっているだろうな。
「どうしたんですか?」
俺達の顔を不思議そうに見る創造神。
「神国の状態を感知出来たのか?」
「……あっ、そう言えば……」
戸惑った表情を見せた創造神は、目を閉じ、そして開けると頷いた。
「まだ、少しですが。確かに神国の存在を少し前より近く感じます。あぁ、この感じ。創造神になった時に感じたものです」
安堵した表情をする創造神は、少し涙目になっているみたいだ。
まぁ、それを指摘する事はしないけど。
創造神が神国の状態を把握する時間を作る。
「ありがとうございます。まだ、全ては無理みたいですが、星の移動が可能な事は分かりました」
「創造神が協力してくれるなら、俺の力だけで移動させるより安全に移動が出来るな」
「そうですね。思ったより簡単ですね」
そうなんだよな。
星の周りに俺が結界を張って、1週間ほど俺の力を注ぎ、星に住む者達を俺の力に慣れさせる。
そして、ゆっくりと数日かけて星を神国から呪界に移動させるだけ。
結界があった場合は、一時的に結界を消さなければならないけど、今はその結界が無い。
だから、星の移動はスムーズに終われるはずだ。
「星に住む者達からの了承は貰っているのか?」
オウ魔界王が興味津々で聞いてくる。
「6個の星からは既に了承を貰っている。残り1個の星は、明後日に答えを聞きに行く事になっている」
「それなら、さっそく始めてみましょうか」
創造神の言葉に、フィオ神が「彼は、全てを変える創造神になれる」と言っていた事を思い出した。
そして、そんな彼だから俺が創造神に推薦したと言っていたな。
なるほど、彼は今までの常識や当たり前を壊す力を持っているのか。
今の神国に必要な存在だな。
「許可も貰ったので、星に住む者達に連絡して早い星なら明日から始めるよ」
「分かりました。俺は神国の力が作業の邪魔をしないように、結界を張って力が流れ込まないようにします」
「ありがとう」
どうやら、思ったより簡単に星を手に入れられそうだな。
龍達も楽しみにしていたから、良かった。
「見たい」
オウ魔界王の言葉に、苦笑する。
さっきから興味津々で俺達の会話を聞いていたからな。
「サブリーダーに協力してもらえば、見られると思うぞ」
「実際に見るのは無理だから、仕方ない。頼むか」
世界の王になって一番不便なのは、他の星に行けないところだな。
まぁ、仲間の頑張りで神国の事を映像で確かめられるようになったけど。




