104.ここから。
ほんの少し緊張しながら、2枚のパネルの前に座る。
というのも、今日は王達の初顔合わせ。
俺が言い出した事だけど、一体どんな話し合いになるのか少し不安だ。
「まぁ、なるようになるだろう」
あまり考え過ぎると、無駄に緊張するからな。
うん、気楽にいこう。
ピピッ。
音と同時に、パッと左のパネルにオウ魔界王の姿が映る。
「おはよう。今日は宜しく」
「あぁ、宜しく頼む」
俺の言葉に、小さく頷くオウ魔界王。
少し顔色が悪いようだけど、何かあったのだろうか?
「何かあったのか?」
「あぁ、少し……。聞きたいんだが、植物というのはどのくらいの速さで育つんだ?」
植物?
魔界で育つ植物が見つかったのか?
「植物にもよるが、野菜だと速いものだと1週間。1カ月ぐらいで食べられるようになる野菜もあるな」
クレソンという野菜が確か1週間ぐらいで、小松菜やホウレンソウは1カ月ぐらいだったはずだ。
記憶が少し曖昧だけど……あっ、これは前の世界の野菜だ。
この世界だと……あまり変わらないな。
「……違う」
「えっ?」
オウ魔界王の言葉に首を傾げる。
「魔界で種が見つかったんだ」
そうなんだ。
そう言えばサブリーダーが、魔界で重要な物が見つかったと言っていたな。
結果が分かり次第報告すると言っていたけど、それが植物の種だったのか?
「それを植えたんだが、成長が凄いんだ。2週間で約2m。1カ月で5mになった」
2週間で2m?
1ヶ月で5m?
「それは、ちゃんと植物なのか?」
いや、聞き方がおかしいけど、本当にそれは植物なのか?
何か……魔物とか?
「サブリーダーが調べて、間違いなく植物だと言っていた。最近は、どうも蕾をつけた様子だ。このまま見守っていても大丈夫なのかが不安なんだ」
それは、不安になるだろうな。
それとも魔界で育つ植物は速く育つのか?
いや、それは無いな。
野菜は、普通の速度で成長をしているからな。
しかし、オウ魔界王も植物の事で悩んでいるなんて思わなかったな。
地下で揺れる植物を思い出す。
「どうした?」
「同じだと思って」
「同じ?」
「呪界でも、ある植物が育っているんだけど」
オウ魔界王に、呪界で育っている植物について話す。
彼はその話を聞いて、首を傾げた。
「呪界は、元々神国にあったんだよな?」
「あぁ」
「神国で花と言えば、命花だけど」
「あっ、そうだ。命花と言えば……」
待て。
命花に問題が起きている事は話していいのかな?
神国の重要機密だよな。
止めておこう。
「んっ?」
「いや、なんでもない。あっ、1つ疑問があったんだった。聞いても良いか?」
オウ魔界王に、聞きたい事があるんだった。
「なんだ?」
「魔界にいる者達は、元は神国で生まれた魂だよな?」
「あぁ、魔界では命は生み出せないからな」
「でも前にオアジュ魔神が『魔界では神が作った魂は存在しない』と言ったんだよ。どういう事だ?」
神国で生まれた魂なら、神の作った魂のはずだ。
それなのにオアジュ魔神は神の作った魂は存在しないと言った。
矛盾している。
「あぁ、それか」
オウ魔界王が小さく頷く。
「神国で生まれた魂は、生まれた場所と、見えないがずっと繋がっているんだ。だから死んでも、迷うことなく生まれた場所を目指す。この繋がりがある魂を、神の作った魂と判断するんだ。魔界に落ちたり移動したりした魂は、その繋がりが消える。そのため魔界で死んでも、神国に戻る事は絶対に無い。だから、神の作った魂とは言われないんだよ。それに死んで奇跡的に神国に戻れたとしても、神力に触れた瞬間に魂は消滅する」
なるほど。
神が作った魂でも、繋がりが切れたらそう判断されないという事か。
「魔界で子供が生まれるのは、魔界で死んだ者の魂が新しく生まれているんだよな?」
「そうだ。ただ……」
やはり気付いているか。
「これからは減っていく一方になる可能性があるだろう?」
俺の言葉に、ハッとした表情をするオウ魔界王。
そして神妙な表情で頷いた。
今までは神国に不要とされた者達が、強制的に魔界に落とされていた。
でも神国が変われば、魔界に落とされる者がいなくなる。
つまり魂の補充が無くなる。
それは呪界でも同じ。
今までは神国の中にある星だったから、魂の補充があった。
でも呪界として独立したため、魂は補充されない。
魔界や呪界でも、命花が咲けば魂は補充されるのだろう。
でも、その気配は今のところ無いからな。
「さっきの植物の話に戻るが、地下で育っている物は命花ではないのか?」
オウ魔界王の言葉に首を横に振る。
「カルアタ神という者に確認してもらったけど、違うそうだ」
リーダーが見に行った神国の命花。
かなり雰囲気が違ったそうだ。
でももしかしてと、カルアタ神に呪界の地下にある植物を見てもらったけど、答えは「違う」だった。
「そうか。お互いに色々と問題を抱えているな」
オウ魔界王の言葉に、つい笑ってしまう。
「そうだな。まぁ、こんなもんだろう」
世界の王になったのだから、何も考えずに過ごせるはずがない。
もっと気楽な人生が良かったけどな。
ピピッ。
来たみたいだな。
「すみません……えっと、遅くなりました。あっ、えっと」
緊張し過ぎだろう。
「初めまして。魔界の王で、オウ魔神です」
あっ、色々スルーした。
「初めまして。呪界の王で、翔です」
それにしても、少し驚いたな。
「初めまして。神国の王で、創造神のミルフィースです」
神だからと、威厳を感じられる姿になって来るかと思ったけど、まさかの10代?
いや、10代という表現は神には正しくないか。
年齢と見た目は全く一致しないからな。
「若いな」
オウ魔界王の言葉に首を傾げる。
神の見た目は、全く当てにならないはずなのに。
「あの……」
「まだ、500年も生きていないんじゃないか?」
魔神も長生きだからな。
俺の感覚でいたら駄目だな。
というか、500年は若いと言われる年なのか。
……俺は……何歳だっけ?
この世界に落とされた時が33歳で、あれから3年?
いや、4年目か?
だいたい37歳?
えっと、500歳で若いという事は37歳だと?
「はい。388歳です」
「まだ400歳にもなっていないのか」
オウ魔界王の声が少し大きくなる。
それだけ驚いたって事だよな。
年齢については、黙っていよう。
「はい、まだ神としても未熟です」
「いや、創造神に抜擢されるぐらいなんだ。年なんて関係ないだろう」
俺の言葉に、驚いた様子をみせる創造神。
「ありがとうございます。あの、魔界にも呪界にも色々とご迷惑をおかけして、すみませんでした」
パネルに、頭を下げる創造神が映し出される。
少し焦ってしまうが、なるべく落ち着いた声を意識する。
「大丈夫なので、顔を上げて下さい」
「ですが……」
まぁ、本当に神国は色々な事をしでかしたからな。
だから、その世界の王に謝って欲しいとは思っていた。
そしていま、その願いは叶った。
それなら、もういい。
「俺は謝って貰えたので許すよ。オウ魔界王は、色々思う事もあるんじゃないか?」
魔界に住む者達は、想像もつかないほど長い間苦しめられてきた。
だから、こんな謝罪では許せないだろう。
でも、この謝罪を関係改善の1歩にしたい。
「許す」
「えっ?」
オウ魔界王の言葉に、創造神が驚いた表情をした。
俺も驚いた。
そんな簡単に許せるわけが無いと思っていたから。
「魔界は少しずつ変わってきている。その1つが、神国の者達に対しての気持ちだ。以前なら苛立ちや不満が強かった。でも、今は……どうでもいいかな」
それは、神国に関心が無くなった?
ん~、恨み辛みが消えるのはいいけど、無関心はどうなんだ?
創造神も反応に困っているな。
「だから、これからの関係に期待する」
これは、いい方向に流れたな。
良かった。
これでお隣さん同士のいざこざは、1歩前進だな。
オウ魔界王が言ったように、これからが重要という事だ。
いつも読んで頂きありがとうございます。
次の更新はお休みいたします。
次回は6月2日(金)の予定です。
宜しくお願いいたします。
ほのぼのる500




