50.第4騎士団 団長2
-エンペラス国 第4騎士団 団長視点-
森の中は以前と同様に静寂が広がる。
ときおり魔物の声がどこからともなく聞こえる。
そう、見た目も聞いた感じも以前と変わらない姿。
そのはずなのだが、体に纏わりつく不快感がぬぐえない。
奴隷部隊を前に調査隊として配置、その後ろに第4騎士団。
少しずつ森の中に入っていく。
どれほどの時間がたったのか。
不快感が続きそれは恐怖へと変わっていく。
森の奥に足を進めるだけで恐怖がどんどん積み重なり緊張感を生む。
何度、心を落ち着けようとしても意味がない。
今までの調査で魔物の数は4匹。
4匹目は今、部下たちにより過剰な攻撃を受けている。
緊張感からか連携が取れずただやみくもに攻撃をしている状態だ。
魔物の数が少ない。
この場所であれば10匹前後の魔物が出ているはず。
何より現れた4匹は我が国が魔石の実験で作り上げた魔物だ。
魔物を襲うように変容させ人は襲わないはず…。
どうなっている?
やはり、森の中心に何かあるのか?
4匹目の魔物が討伐された。
1つ息を吐き出す。
疲れが蓄積され部下たちの緊張感が緩む。
ここでそれは命取りになる可能性がある。
「休憩」
ひしひしと恐怖を感じる場所で休憩と言われても無理かもしれないが。
だからと言ってそのたびに森から出ることもできない。
仕方ないがこの場所で休憩だ。
奴隷部隊はそのまま見張り役をするよう指示。
生まれた瞬間から奴隷だった彼らに表情は一切ない。
奴隷に心は必要ないからな、おそらく恐怖心もないのだろう。
今はそれが羨ましい。
部下の状態を確かめるために周りを見渡す。
その時、光が森の中を走り抜ける。
一瞬のことで何が起きたのかわからなかった。
ほんとうに一瞬、何の前触れもなく。
防ぎようもない。
あちらこちらで悲鳴が上がる。
たった一瞬、その一瞬がそれまで以上の恐怖をたたきつけた。
何かをされたわけではない、自分と部下を見る。
傷1つない、倒れているものもいない。
なのにその一瞬で心臓がありえない速さで動き、額からは汗がしたたり落ちる。
手に武器を持ち見渡すが何も起こらない。
そんな恐慌状態の時に、大地から空に向かって光が広がる。
何処からともなく叫び声が聞こえ誰かが走りさる音がする。
あわてて声を出して制止しようとするが声が喉から出てこない。
足がふらつきその場で膝をついて全身で呼吸する。
落ち着かなければ、落ち着け!
何とか足に力を入れて立ち上がる。
周りを見ると恐怖の顔で倒れているもの、膝を抱えて蹲っているもの。
大きく深呼吸して撤退を下す。
森から出なくては。
森より少し離れたところまで移動する。
進みは微々たるものだったが、今は逃げるように誰もが森から走り出る。
「団長、奴隷部隊がいません」
周りを見てもどこにも奴隷の姿が見えない。
魔石で奴隷紋が強化され奴隷たちはかなり強固に国に縛り付けられている。
その奴隷が逃げた…。
どうなっている?
50話突破、うれしい!




