49.第4騎士団 団長
-エンペラス国 第4騎士団 団長視点-
俺が団長をする第4騎士団に王から勅命。
森の調査。
調査とあるが問題があった場合はできるだけ解決してこい。
それが今回の王からの命令だ。
第4騎士団は元から森との接触が多い。
基本は魔物の捕獲、討伐だが森の調査も仕事の1つ。
今回、魔石に異常があると騒いでいるが通常の調査をすればいい。
俺にとって周りが騒ぐほど、今回の仕事に不安はない。
「王の森の中心、そこが問題かもしれないのにか?」
友人の言葉に、だが俺にとっては問題ない。
森の王など我が国の王にとって取るに足りない存在だ。
森から王が消えてすでに数十年と聞く。
その存在の何が恐ろしいのか。
……
魔石にひびが入ったという情報は騎士の間でも走り抜けた。
しかしよくよく聞けば魔石のひびはほんの小さいものだと言う。
魔石の大きさは通常のものとは比較にならないほどに大きい。
1mある魔石なのだ、それにほんの小さいひびなど、些細なこと。
それに魔石を見つけた当初はあちらこちらにひびが見られたと文献にも書かれている。
いまさら何を恐れるのか。
王が生きていて反撃していたとしてもそれを抑え込めばいいだけ。
たかが森の王など過去の産物にすぎん。
魔石にひびが入った当初は不安を感じたものも多い、それは騎士もだ。
だが、そのひびがごく小さいと聞くと恐怖を感じる者をあざ笑うように…。
当たり前だ、我が国は世界最強の力を有しているのだから。
「そうだといいがな…」
気弱に笑う友人を、俺は弱虫だと内心あざ笑った。
……
森に入る山道、森に踏み込むときに使用するいつもの道。
だが、俺は最初の1歩を踏み出せずにいる。
後ろを見ると部下たちの顔が強張っているのがわかる。
外から見える森に異変はない。
そのはずなのだが、森からは何かを感じる。
それが心にじわじわと恐怖を生み出す。
奴隷部隊に調査を命令する。
その間、通常では寝る場所などの準備を始める。
だが、誰もがその準備をしようとしない。
何かがこの場所での準備を拒否しているのだろう。
奴隷部隊が森から戻ってくる姿が見える。
森の入り口周辺は問題なし。
一つ大きく息を吸って吐く。
心が晴れることはないが調査は進めなければならない。
重い足を1歩前にだし森へ侵入する。
友人の憂い顔を思い出す。
あの時、しっかりと話を聞いていれば…。




