47.アンフェールフールミ
-巨大アリ視点-
森を襲った魔眼魔法。
はじめのうちはそれほど脅威に感じることはなく。
ただ、それまでと同じ時を過ごした。
それが変化したのが森が変容してきたため。
森の姿が少しずつ変化していく中、森の王たちが反撃を繰り返す。
だが、何かに阻まれ王たちの攻撃は消されてしまう。
そうして長い時間をかけて森は姿を変え続けた。
気が付けば魔眼の力が森を覆い尽くすほどになり、
意思の弱い魔物たちは凶暴化していき、敵だけでなく味方も襲う存在に。
何処からともなく新たな魔物も現れ森は完全に変わった。
森の王たちはその姿をけし、その魔力も徐々に森から失われていった。
森の王の力が失われると闇の力が増え魔眼魔法の威力が増す。
そんな悪循環に襲われた森の中。
仲間を守るために戦った。
だが、いつしか私もその意思を闇に沈めることになる。
ただ、最後の意地で私は自分を聖なる湖の近くで縛ることに成功する。
これで少しは森を壊す存在になる時間を遅らせることができる。
ただの時間稼ぎにしかならないことはわかっているが。
長い間、闇に沈んでいた意識が光に導かれる。
暖かなその光は私に纏わりついていた魔眼魔法を無効化。
心の中にまで巣食っていた闇を消してくれた。
最初に見た風景は人間。
驚いたが人間を守るように立つフェンリルの王を見たときは目を疑った。
フェンリルの王が人を守るなど。
私は困惑し子らを確認したが、その数はかなり少なく。
それでも助かった子たちがいたことに喜びを感じた。
人間が私に近づき私の頭を撫でた。
…私をなでる人間が存在するとは。
固まった私をなで続ける人間。
反応に困る。
人間から先ほど感じた暖かい魔力が流れ込んでくる。
あぁ、この者が我々を助けてくれた存在かと理解した。
憎き人間、だがこの者は違う。
フェンリルの王が守る存在、それがただの人間のわけがない。
私もその一角となれるだろうか。
主と決めた人間を聖なる湖に連れていく。
その場所は見るも無残な状態。
悲しく感じ目を閉じた。
一瞬目の前が白く輝く、何事かと目をあけると…。
目の前には以前の姿に戻った湖。
主がこの湖を守ってくれたらしい。
この湖はこの森全体の水を司る龍が住む場所。
龍の姿は見えないが…きっとどこかにいると信じたい。
森に出ると森は魔眼魔法の影響を受ける以前のようになっている。
そして…チュエアレニエ。
その姿を見たものは必ず殺されるという、死の番人。
森を守る王の1つでもある。
その姿に殺気があふれる。
主からの一声でチュエアレニエから殺気が一瞬で消える。
驚いた、あのモノが…いや、主はそれだけの存在なのだろう。
チュエアレニエと話すそんな時代が来るとは。




