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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
綺麗になったら修復です!
287/672

46.普通の人って?

ただの人だと何度か説明したはずなんだが、どうして崇める対象になっているんだ?

困った。

どう説明したら、理解してもらえるんだ?

ん~、……本当に困ったな。

何も思い浮かばない。

仕方ない、分かってくれるまで何度も説明するしかないか。


「いいか、俺はただの人だ。確かに力はあるが、普通の人なんだ」


「主は人ではないだろう?」


水色が不思議そうに俺を見る。

あれ、いつの間にここに?

周りを見ると、他の龍達も親玉さんたちまで集まってきていた。


「主?」


あぁ、水色の質問だったな。

えっと、ん? 人ではない?

……あっ、そうだった!

俺は人じゃない、よく分からない存在になっていたんだった。

忘れてた。

そうか、説明の仕方が悪かったのか。


「そうだな。俺は今は人ではない。だが、この世界に飛ばされる前は本当に普通の人だったんだ」


毎日仕事に追われる、普通の一般人!


「「「「「普通の人」」」」」


一つ目たちが、俺を見ながら首を傾げる。

何故、不思議がる。

一緒にいたら、俺がいかに普通の人……人じゃないならなんて言えばいいんだ?

あ~、もう!


「俺は、この世界の人と同じだと思う」


俺はこの世界の人を知らないが、大丈夫か?

何か、気になるな。

あっ、駄目だ。

この世界の人は、奴隷を当たり前に酷使するんだった。

慌ててクウヒとウサを見る。

2人とも、衝撃を受けている様子は無い。

良かった。


「ごめん。えっと、この世界の人と同じという事はないかな」


俺の言葉に、不思議そうな皆の視線。

そうなるよな。

分かる。

俺が聞く側でも、同じ反応すると思う。

とりあえず、落ち着こう。

慌てて説明しようとするから、こんがらがるんだ。


「主は、人だったと前もそう言っていたな」


親玉さんの言葉に頷く。

思い出してくれたみたいだ。

親玉さん、ありがとう。


「そうだ。その時の感覚を今も持っている。だから崇められるような存在と言われると、違和感があるから止めて欲しい」


よしっ、いい感じに説明出来たんじゃないか?

皆の様子を窺うと、それぞれ考えてくれているのが分かった。

良かった。

何とか、ここでちゃんと理解してもらわないとな。

森から出て宣教されたら、最悪だ。


「そうなのですね。森の神と言われているので、崇めるのが当然だと思っていました」


一つ目のリーダーが、小さく頭を下げる。


「いや、……ん?」


気にしないように言おうとしたけど、今何か不穏な言葉が混ざってなかったか?

森の……かみ。

まさか、神!?

そっと一つ目のリーダーに視線を向けると、短い腕を組んで何やら頷いている。

聞き直したい。

俺のあずかり知らない所で、俺がどう呼ばれているのか。

だが……非常に恐ろしくて、聞けない。

ここは聞こえなかった事にしよう。


「そうか。主は森の神と呼ばれるのは嫌なのか」


ふわふわの言葉が耳に届く。

しっかり、聞いてしまった。

誰だよ、森の神なんて言い出した奴!

止めてくれ。


「あぁ、俺はそう呼ばれるのは不本意だ。だから駄目だからな」


絶対にやめてくれ。

「森の神」なんて、すごい重いものが圧し掛かった気分になる。

それに、神という言葉に拒絶反応が。

……神の実態を見せられたからな。

うん、あれにはなりたくない。


「分かりました」


飛びトカゲの言葉にホッと胸をなでおろす。

良かった。

今回は前の時と違って、皆が納得したような気がする。


「主」


一つ目のリーダーが首を傾げながら俺を見る。


「なんだ?」


「普通の人とはどんな人ですか?」


「…………」


どう答えればいいんだ?

普通は、一般的な……感覚?

あれ?

普通って、なんだ?


「主?」


何か言わないと。


「あぁ、平均的な、一般的な人かな?」


一つ目たちを見る。

頷いているけど、分かってくれたんだろうか?

飛びトカゲを見ると、何か思案している様子。

これ以上の質問は遠慮したいが、許してもらえるだろうか?


「一般的ですか」


一つ目のリーダーの質問に頷く。


「なるほど。ん? しまった! 夕飯の用意をしなければ!」


一つ目のリーダーの言葉に、他の一つ目たちが慌てて動き出す。

どうやら話し合いはここで終わるようだ。

助かった~!

ありがとう、一つ目。

君たちの勤勉なところに感謝です!


「主、分かりました。普通の人がどのような者なのかしっかり勉強して、主に尽くしたいと思います!」


あれ?

通じたんだよね?

というか、普通の人を勉強?


「なるほど、我々もしっかり学ばなければ」


飛びトカゲの言葉に、眉間に皺が寄る。

なんで皆、学ぶ話になっているんだ?

それに学ぶって、まさか普通が何か学ぶのか?


「なんか、余計な事を言ったような気がする」


意思疎通に大切な言葉が通じるようになったはずなのに、なぜだろう。

物凄い巨大な壁が立ちはだかっていると思う。

おかしい。

言葉は通じているのに……。


「はぁ。まぁ、今日はこれぐらいで、次の機会に頑張ろう」


そうだ。

俺には、まだやることがあるんだった。

リビングに戻り、ベビーベッドに近付く。

そっと中を覗くと、1匹は目を覚ましていたが、2匹は目を閉じている。

寝ているのかな。


「……癒される」


あぁ、違う。

栄養? になるはずの闇の魔力をあげて様子を見ないと。

ズボンのポケットから、復元した闇の魔力を固めた魔石を出す。


「固めたけど大丈夫かな?」


溶かす方がいいのか?

でも、あの力をここで溶かすのはちょっと恐ろしいな。

とりあえず、魔石を卵に近付けて見るか。

勝手に闇の魔力を吸収してくれるかもしれない。


「上手くいくといいが」


魔石を卵の傍に置いてみる。

……何も起こらない。

やっぱり固めた闇の魔力を溶かさないと駄目かな。


「結界を厳重に張れば大丈夫か?」


あれ?

起きている1匹が魔石に反応しているな。

ピシピシッ。


「げっ」


魔石にヒビが入ってきてる。

固めたのが溶けてきたのか?

溶けるようなイメージは付けなかったのに!


「あれ?」


固める魔法をもう一度掛けようと、魔石に手を伸ばすが途中で止まる。

既に魔石のヒビからは黒い光が溢れていた。

が、黒い光は傍に在る卵にスーッと吸収されている。


「成功?」


あっ、卵の中の子達は大丈夫か?

卵の中を覗き込むと、3匹とも目を覚ましていた。

そしてきょろきょろと首を動かしている。

やばい。

何か、問題が起きたのかもしれない。

吸収を止めた方がいいのか?


「どうしよう……あっ、尻尾が揺れてる」


3匹はきょろきょろと不思議そうに首を動かしているが、苦しんでいる様子は無い

もう少し、様子を見ようかな。


「主、闇の魔力はケルベロスに届いたか?」


飛びトカゲがそっとベビーベッドを覗く。


「たぶん、大丈夫だと思う」


魔石にヒビが入ってから少し経つが、ケルベロスたちに変化は起きていない。

最初は戸惑っていたようだが、今は落ち着いている。


「そうだな。さすが主だな。まさか闇の魔力を作り出すとは」


「再現で作ったわけではないぞ」


飛びトカゲが、感心した様子で頷くが俺は記憶の中の力を真似ただけだ。

まぁ、今回は少し手こずったが。


「これで、生まれてくるかな?」


ちょっと楽しみだな。

あっ、ケルベロスがここにいるって魔界に知らせなくていいのかな?


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― 新着の感想 ―
いや、流石に無いだろう。 ここまでくると、自己認識のできない病気もしくは先天性の何かレベルで痛すぎ。 この辺りも、勇者スキル?弊害か、何かで歪められてるのかしら。
[一言] 無意識に認めたくなくて忌避してるのかも知れないけど、翔の自覚のなさはどうにかしたほうがいいと思う
[気になる点] 以前にエペラーン国?に行った時に「森の神」って呼ばれて、それを「森の主」に訂正してたやん この認知症ばりの記憶喪失も何かの伏線なのでしょうか?
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