10.森の神?
「失敗だな」
周りを見るが、間違いなく避けられている。
何かしたわけではないんだけど、どうしてだ?
チャイとチャイの子供が2匹。
コアは目立つだろうから待機してもらっている。
俺は……認めたくないが、彼らより背が低い。
そう言えば、クウヒとウサの身長が急に伸びたんだよな。
クウヒは、体つきもがっしりしてきたというか……。
「主、どうした?」
チャイがいつの間にか立ち止まっていた俺に声を掛ける。
現実逃避はよくないな。
「いや、なんでもないよ。ここでは何も聞けそうにないな」
村の中を少し歩いてみたが、耳や尻尾がある者たちには綺麗に逃げられてしまった。
そして人間はいないみたいだな。
ちょっと期待した耳の尖ったエルフもいない。
残念だ。
「他の所に行こうか」
話も出来そうにないし、ここにいてもしょうがないだろう。
諦めて、他の所へ行こう。
……まさか、ずっとこんな感じじゃないよな?
「ん? 森からこちらに向かってくる者たちがいるな」
「えっ?」
森から?
俺たちが出てきた森へ視線を向けると、腰に剣を差した団体がこちらに向かってくるところ。
ちがった。
俺を見たのか、チャイを見たのか分からないが立ち止まってしまった。
ん?
何だか、慌てているな。
先頭を歩いていた2人が、走って後ろに行ってしまった。
「急に攻撃されたりしないよな? 森を出る前に結界は張り直したし……」
「主の結界はそうそう破られる事はないから問題ない。もしも、破られても俺が守る」
チャイってコアの前以外では、意外に男らしいんだよな。
コアの前では、色々と崩れているけど。
「主、父さん。3人がこちらに来ます」
左右で俺を守っていたコアとチャイの子供達が、いつでも攻撃できる態勢になる。
……いやいや、そんな警戒するから誰とも話せなくなっているんだって。
「大丈夫だから、その攻撃態勢を止めよう。ほら、こちらに来ようとした彼らが、固まっているじゃないか」
「しかし、危険では?」
子供の1匹が、彼らに向かって威嚇する。
だから!
「大丈夫。どう見ても……」
怖がっている。
ものすっごく怖がられているから!
「襲ってくるようには見えないから。だから威嚇、駄目!」
俺の言葉にしぶしぶ従ってくれる子供達。
森を出る時に、手を出さない事をしっかりと伝えておいたんだけどな。
さて、せっかく話が出来るチャンスだ。
どう話を切り出そうかな。
「あの、失礼ですが」
あっ、向こうから話しかけてくれた!
「はい、なんですか?」
それにしても、背が高いな。
俺だって180㎝はあるのに……悲しい。
まぁ、背だけじゃないな。
かなり鍛えられているのが分かる。
格好から考えると騎士だろうか?
「森の神様でいらっしゃいますか?」
……森の神様?
なにそれ?
「そうだ」
「んっ?」
今、誰が答えたんだ?
確か隣。
チャイが、話しかけた者たちに答えたのか。
チャイって森の神なのか?
そんな話は聞いた事がないが。
「そうでしたか。お会いできて光栄です」
えっと、チャイではなく俺を見ているよな。
どういう事だ?
「森の神様? どうかされましたか?」
間違いなく視線を俺に向けて森の神と言っているな。
見間違いではないらしい。
まさかと思うが、森の神とは俺の事か?
「いや、大丈夫。それと森の神と言われるのはちょっと……あ――」
「主、問題か?」
ふわりと、空からコアが降りてくる。
待機していたが、心配になって来たらしい。
ん~、でも今は駄目だったかな。
目の前にいる者たちが、目を見開いている。
後ろの1人は、微かに震えているよね。
「申し訳ありません。森の神ではなく森の主様だったのですね」
いや、違う。
そうじゃない。
「あぁ、それでいい」
どうしてコアが答えるんだ!
それも、満足そうに!
それはそうと俺は、どうやら森のすごい人物だと思われているみたいだな。
このまま、そう思わせておくべきか?
誤解を解くべきか?
これから子供たちが、森から出てきた時に守れるのは……誤解をさせておいた方がいいような気がする。
すごい人物の保護下にある子供たちに手は出さないよな?
もし何かあっても、周りが手助けしてくれそうだし……。
あ~、ものすごく申し訳ないが、このままスルーさせてもらおう。
「森の王であるフェンリル様もご一緒でしたか。森の主様は、なぜこちらにいる……いらっしゃるのでしょうか?」
心がチクチクするな。
だが、子供たちの未来のため仕方ない。
それにしても、どう説明しようかな。
魔石を換金しに来ましたと、そのまま言うべきだろうか?
ただ、彼らを本当に信用していいのかが分からない。
格好から判断すると、騎士みたいに感じるが……。
「少し探し物をしているんだ」
換金場所と教師!
「そうだ……、そうでしたか」
「あなたがたは、何者ですか?」
「俺は、あっいえ。私はエントール国、第3騎士団団長ダダビスと言います。後ろにいるのは副団長のキミールと補佐を務めるカフィレットです。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
あっ、本当に騎士なんだ。
それとダダビスさんは、本来「俺」だな。
それに、今の話し方はかなり無理をしているみたいだ。
本来の話し方にしてもらうには、どうしたらいいかな。
「話し方はもっと気軽に。畏まられるのは苦手なので」
ものすごく苦手だ。
「しかし、あっいえ……分かった」
もしかして悪い事をしたのかな?
かなり緊張させてしまったみたいなんだが……。
「主、探している場所は見つかったのか?」
コアが不意に話しかけてくる。
見ると、ちょっと拗ねているような雰囲気を見せる。
この短時間で何があったんだ?
「いや、まだだ」
「何を探しているのでしょうか。あっ……何を探しているんだ?」
ダダビスさんが混乱しているな。
別に、絶対に砕けた話し方をしろとは言っていないんだが。
「話しやすい、話し方をしてくれればいいからな」
「はっはい」
どんどん顔色が悪くなっていくな。
大丈夫か?
でもこれって、俺のせいだよな。
森の神なんてたいそうな存在だと思われているみたいだから。
よしっ。
換金場所を聞いて颯爽と逃げよう、じゃない移動しよう。
それがきっとお互いのためにいいはずだ。
「魔石を換金したいんだ。換金できる場所を知らないか?」
俺の言葉に3人が驚いた表情を見せる。
えっ、何その表情。
俺、間違った事は言ってないよな?
生きていくにはお金が必要だから!
まぁ、俺の場合は必要ないんだけど、教師を雇うには必要。
「あっ、失礼。魔石の換金ですか?」
「あぁ、そうだ」
「えっと、魔石……。確かこの村ではなく隣の村に換金できるところがあったと思います」
隣の村か。
なら、とっとと移動しようかな。
「ありがとう。行ってみるよ」
コアに乗って行けばすぐだな。
「あのっ!」
ダダビスさんの声が少し大きくなったな?
まだ、何か用事でもあったのか?
早く俺たちが居なくなった方が、安心できると思うが。
「ご案内します」
「はっ?」
そんな状態で?
止めた方がいいだろうに、どうしてそんな無理をするんだ?
「いや、コアに乗って行けばすぐだしいいよ。それにダダビスさん、すごい顔色だよ。後ろの2人も」
すぐに休憩をした方がいいレベルだ。
金曜日は家の用事があるため、更新をお休みいたします。
申し訳ありません。
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