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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
綺麗になったら修復です!
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01.第三騎士団ピッシェ

―エンペラス国 第三騎士団 ピッシェ視点―


封筒から1枚の紙を取り出すと「辞令」という文字が目に入った。

心臓がドキドキとうるさく鳴っているのが分かる。

ふ~、よしっ、見るぞ!


「……よっしゃ!」


辞令内容が目に入った瞬間、ガッツポーズを作ると手の中で紙がクシャっと音をたてた。


「うわっ、大切な辞令書が」


慌ててよれた紙を綺麗に伸ばして、もう一度辞令書を眺める。

そこには「特別調査部隊」への異動が決定したことが書かれてあった。


「ピッシェ? ……まさか、それって辞令書か?」


俺の様子を見た同僚アッピが、驚いた表情を見せる。


「おう。『特査(とくさ)』への異動が決まった」


特査とは、森の調査のために組まれた新しい部隊「特別調査部隊」の事だ。

前王の時代は第四騎士団が森の調査を請け負っていたが、その目的は主に侵略のため。

今の王に代わり森の調査の目的が大きく変わったため、専門の部隊が作られた。

そして数週間前から異動希望者が集められていたのだ。


この特別調査部隊は、森の調査をしつつ森の王や森の神に、王の「謝罪」を伝える事が任務となる。

森の神がいるであろう、最奥に足を踏み入れる事は許されていないため決してしないが、それでもある程度は森の奥へ足を踏み入れる事になる。

その分、強い魔物が現れることが予測され、決して安全な任務ではない。

が、その危険を知った上で多くの騎士達が異動を希望した。

俺もそうだが、彼らも「もしかしたら森の神をこの目にする事が出来るかもしれない」と思っているのだ。

もちろん森を侵略しようとしたエンペラス国の俺たちに、会ってくれるとは思ってはいない。

ただ遠くからでもいい、あの圧倒的な力を持つ存在を一目見たいと思ってしまったのだ。


「まじか! 羨ましい。いいな~。俺は駄目だった」


アッピが、羨ましそうな表情で辞令書を見る。


「悪いな。だが、まだチャンスはあるだろ?」


森へ行ったとしても、すぐに森の王達に謝罪を伝えられるわけではない。

遠くから見る事も、許されないかもしれない。

謝罪を伝えても、許されない可能性もある。

許されたとしても、長い時間が掛かる事も考えられる。

王は全てを理解したうえで「何年掛かろうと諦める事は無い」と、断言した。

だが、森での任務は過酷である事が予想され、騎士達が疲弊すれば命の危険につながる。

それを防ぐために、隊員はある程度の期間任務に就いたら入れ替わることが決定した。

なので、今回選ばれなくてもまだチャンスはあるのだ。


「そうかもしれないが……はぁ」


目の前で落ち込んでいるアッピには悪いが、ものすごく嬉しい。

喜びに叫びだしそうな口を片手で押さえて、もう一度辞令書を見る。

「ピッシェ・ロングラに特別調査部隊への異動を命じる」の文字が見えた。


「にやけすぎだろ」


アッピの一言に笑みが深くなる。


「あはははっ、やばい。笑えてくる」


「まぁ、そうなるよな。それでいつから異動するんだ?」


「この辞令書には、何も書いてないからまだだと思う。それに、特査の隊長もまだ決まってなかっただろ? それが決定してから異動だろ、たぶん」


「隊長か……噂では、獣人が隊長になるんじゃないかって話だけどな」


「それは俺も聞いたが……本当なのか?」


隊長が獣人であっても問題はないと言いたいが、少し(わだかま)りがある。

小さい頃に「獣人は人になり損ねた出来損ない」だと教わった。

「奴隷になって当然」なんだと、親からも周りからも幾度となく教えられてきた。

ずっとそれが俺の中での真実だった。

だが、それは間違いだった。

獣人は、そもそも人とは異なる種だったのだから。

頭では理解しているのだ、あの教えは間違いだったと。

だが、長年思い込んでいた事を急になしには出来ない。

心が追いついていないんだと思う。

こんな状態の俺が、獣人の下で命を懸けて任務をこなせるだろうか?

特査に異動できるのは嬉しい。

でも、隊長が獣人になるとか、考えた事も無かった。


「猫の獣人じゃないかっていう噂もあるな」


「そうなのか? それは初めて聞いたな。猫の獣人か……」


森での任務は、たった1つの連絡ミスが命取りになる。

だから、隊長や隊員達との関係はとても重要となってくる。

猫の獣人が隊長になって、俺はその人物にどう接したらいいんだ?

そもそも、獣人たちは俺たちを恨んでいないのか?


「あ゛~」


「うわっ、びっくりした。ピッシェ、急に叫ぶなよ」


不意に大声を上げた俺に、アッピが驚いた声を出す。

悪いと思うが、どうも気持ちが落ち着かない。


「あのさ、第一騎士団は既に獣人達が一緒に仕事をしてるんだよな?」


第一騎士団は今のエンペラス国の王、ガンミルゼ王がいたところだ。

その第一に獣人が入団するとわかった時、騎士団全体に衝撃が走った。

なぜなら第一騎士団は王の警護という重要な役目があるからだ。

貴族の中には反対する者もいたというが、王は決してその決定を覆すことは無かった。


「あぁ。もう半年以上一緒に仕事をしているな」


「初めの頃は色々噂もあったけど、最近は減ったよな。アッピは何か聞いてないか? その人と獣人の関係とか、仲間としてどうなのかとか……」


なんか俺、嫌な奴だな。

どんな話が聞きたいんだ?

仲間として仲良くやっているという話が聞きたいのか?

それとも、上手くいっていないと聞きたいのか?


「俺さ、元は第四にいたのは知ってるよな?」


アッピの言葉に首を傾げる。


「あぁ、聞いているがそれがどうしたんだ?」


「第四と第一の団長って仲が良かったんだよ」


「そうらしいな」


前王がまだいた時、第四は大きな失敗をして全員処刑される可能性があったらしい。

それを第一の団長が止めたという噂を聞いた事がある。

どこまで本当なのかは分からないが、俺はその噂は嘘だと思っている。

前王が、誰かの話を聞いて意見を変えるなんて想像できない人物だからだ。

でも、第一と第四の団長の仲が良かったのは、有名な話だ。


「だから、第一の団員達とは今も会ったら話をしたりする仲なんだよ」


「そうなのか? あっ、もしかして第一の獣人に会った事があるのか?」


「会った事というか、獣人達とも普通に話す仲だよ。それに最近は、時間が合えば獣人達の訓練にも参加させてもらっているんだ。俺、弱いからさ」


はっ?


「えっ? そうなのか? というか、アッピは弱くないだろ?」


アッピの予想外の言葉に、少し唖然としてしまう。

話をするのは分かるが、獣人たちと特訓?


「ピッシェは、俺の事を弱くないと言うが、強くもないだろ? まぁそれは良いんだが、獣人達と付き合ってみて思ったんだ、普通だって」


「普通?」


どういう意味だ?

何が普通なんだ?


「会って話す事と言えば、何処の店に可愛い人がいたとか、失敗して怒られたとか、休みが待ち遠しいとか、彼女と喧嘩したとか。普通なんだよ」


確かに普通だな。

なんかもっと、違う事を話しているのかと思ってた。


「種は違うし見た目も違うけど、同じところもある。だから隊長が獣人になったとしても、そんな身構える事は無いと思うぞ。それに同じ騎士団の仲間だろ。王を守り王が治めるこの国を守る。目的は同じだからさ」


「同じ?」


「あぁ、一緒に特訓してる奴らが話してたよ。守ってもらったから、今度は俺たちが守るって。きっとガンミルゼ王の事だと思う」


アッピの言葉に、顔が少し赤くなる。

「騎士は王を守り、王の治める国を守る」と、騎士になった時に宣誓する。

獣人も騎士になったのだから、この宣誓をしている。

なのに俺は……獣人というだけで、守らないのではとひねくれた見方をしてしまった。


「悪い。なんか……」


恥ずかしいな。


蟠り(わだかまり)があるのは仕方ないよ」


仕方がない?

……消す必要はないのか?


「それはきっと時間が解決してくれる」


アッピの言葉に、心に有った重い何かが少し軽くなった気がした。


「……ずっと後ろめたかったんだ。知らない事も罪だろ?」


俺の言葉にアッピは神妙な表情で俺を見る。


「知らない事じゃなくて、知ろうとしなかった事は罪だと思う」


奴隷だった獣人の事を、俺は知ろうともしなかった。

ただ、与えられた事だけを信じた。

それが、どれだけ愚かな事なのか、今なら分かる。


「俺もそうだよ。だから今、知ろうとしてる」


アッピは微かに笑みを浮かべる。


「遅くないと思うぞ、今からでも」


「……そっか」


獣人達の真実を知った後に、蟠りが残った。

その感情は駄目なんだと、何度も思い込もうとした。

でも、どうしても消えてくれなくて。

彼らの事を知れば知るほど、自分がどれだけ無知だったのかを知った。

そして、知ろうとしなかった過去の自分が恥ずかしかった。

あっ、……なんだ、俺は自分の不甲斐なさを認めたくなかっただけか。


「みっともないな、俺」


「あはははっ。確かにな」


アッピがバンと背中を叩いた。


「いてっ」


睨むと、笑われた。


「特査に行くんだ、気を引き締めて行けよ」


「そうだな。隊長にも頼ってもらえるように頑張らないとな」


ゆっくり更新していきます。

よろしくお願いいたします。

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