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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
番外編 光
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4話 光

主の性格がだいたいわかってきた。

細かいようで大雑把。

そして無茶苦茶強い。

たぶん想像できないぐらいだと思う。

本人、知っているのか知らないのかは、よく分からないけど。

そしてすごく仲間思いで優しい。


「おはよう!」


ウサの言葉に、軽く頭を下げて挨拶を返す。

ウサは犬の獣人らしく、元奴隷だと聞いて驚いた。

その奴隷から解放してくれたのが主らしく、すごい尊敬しているし大好きなのが見ていて分かる。

同じ元奴隷のクウヒもウサに負けないぐらい主が好きみたいだ。


「ヒカ兄ちゃん、おはよう」


元気な声と共に、俺の体がひょいっと空中に浮かぶ。

前を見ると、盛大に廊下を滑っていく男の子。

名前は風太。

俺と同じように、主に引き取られた子供の1人だ。

それよりも、体が空中に浮いている。

天井を見ると、俺を糸で持ち上げてくれた子蜘蛛の姿があった。


「風太。光はまだしっかり立てないんだから、後ろから飛びついたら駄目だろう?」


「あっ!」


クウヒの言葉に、慌てて立ち上がって俺を見つめる風太。

目がぱちくりしてて可愛い。

なので、大丈夫という気持ちを込めて頷く。


「光、ちゃんと怒らないと」


なぜかクウヒに怒られた。

怒るなんて……。


「まだ、無理か」


「私たちだって、時間が掛かったよね」


クウヒとウサが空中からおろされた俺に手を差し出しながら言う。

2人に支えられながら立つと、首を傾げる。

時間とは何だろう?


「行こう、朝ごはん出来てるよ」


クウヒが俺を支えるように手を持ってゆっくりと歩き出す。

それに小さく頭を下げて、1歩1歩歩いて行く。

皆に紹介してもらってから、1ヶ月。

俺の体はそうとう弱っていたのか、なかなか歩くことが出来なかった。

両足で立って1歩、足が前に出た時は泣いてしまった。

それからも皆がリハビリに付き合ってくれて、ゆっくりとだが歩けるまでに回復した。

主が引き取った子供たちは俺も含めて8人。

7人は俺より小さくて8歳だと聞いた。

でも、俺より体力があって力もある。

主が言うには、7人の子供たちの力は神力とも魔力とも違うらしい。

まだまだ不安定だから、目が離せないと言っていた。


「おはよう」


「おはようございます」


リビングに入ると、あちこちから声が聞こえてくる。

部屋を見渡すが主がいない。

それにちょっと落ち込む。

何となく、いないと落ち着かない。


「おっ、おはよう。体の調子はどうだ?」


ポンと乗せられた重みに、パッと視線を後ろに向ける。


「どうした? どこか、痛みがあるのか?」


主から感じる暖かい風に笑みが浮かぶ。

首を横に振って、頭を下げる。


「大丈夫ならいいんだ。しっかり食えよ」


キッチンへ行くと、クウヒの隣の椅子に座る。

座ってから1分ほどで、テーブルの上に朝食を並べる1つ目たちは本当にすごい存在だと思う。


「「「「「いただきます」」」」」


主たちと一緒に手を合わせて、心の中で「いただきます」というと温かいスープから食べ始める。

しっかり形の分かる野菜と肉が入ったスープは、体が温まるし味もしっかりついていて美味しい。

皆と一緒の食事が出来るようになるまで3週間かかった。

最初は、胃に優しい味の薄い水みたいな物。

少しずつ味は濃くなったけど、なかなか固形物が出てこなかった。

なので、大きめの野菜と肉が入ったスープが出てくると、ついつい笑みが浮かんでしまう。

食事が終わると、ゆっくりと皆でお茶と果物を楽しむ。


「光」


主の言葉に、果物を食べていた手を止める。


「今日の午後、アイオン神が来ると連絡があったんだ。話がしたいらしい、大丈夫か? いやなら断っても問題ない。心配することは無いからな」


アイオン神というのは、主に頻繁に会いに来る神の名前だ。

いつもは主や龍たちとだけ話すのに、俺も一緒?

もしかして、ここから追い出されるのかな?

音が消え、目の前が暗くなりだす。


「光! 光はこの世界の住人で俺の家族だ」


主の『家族』という言葉が耳に入る。


「?」


「いいか、光。光は俺の大切な家族だ。ウサやクウヒの家族でもある」


主の言葉に、隣に座っていたクウヒが「そうだぞ」と頷く。


「そんな大切な家族を追い出すわけがないだろう」


あっ、俺の不安を知っていたんだ。


「アイオン神は光にずっと会いたいと言っていたんだ。確かめたいことがあるからと。それをずっと断っていたんだが、煩いから1回だけでいい、会ってやってくれ。どうしても無理なら、追い返すから問題ない」


追い返す?

神様を?


「光は心配するな。光が会いたくないなら、あんな奴はすぐに追い出してやる!」


そう言って、俺の頭に顔を乗せる風龍の水色。

視線を背後に向けると、頭から顔を上げて俺を見る水色の澄んだ綺麗な瞳があった。

口を開くが、声が出ない事を思い出し口を閉じる。

こういう時、話せたならと思う。

ちゃんとお礼が言いたい。


「会えそうか?」


主の言葉に頷く。


「分かった。悪いな」


それには首を横に振る。

それから、広場で皆の特訓の様子を見る。

いつか、あそこに交じって強くなろう。

皆に恩返し出来るように。


「雷、翼、紅葉! 火魔法は力加減をしっかりしないと駄目だぞ」


主のため息を隣で聞きながら、笑ってしまう。

子天使と一緒になって空中に飛びながら、地面に向けて火の球のようなモノを連続で落としている3人。

その下では親蜘蛛たちが、火の球を木の棒のようなモノで打ち返している。


「まったくあいつらは」


「随分と飛ぶのが上手くなったな」


主とよく一緒にいるコアが、主の足に顔を乗せて寝そべると主がゆっくりとコアの頭を撫でる。

一緒に来たチャイがそれを見て、少し不貞腐れた表情をする。


「コア、チャイが拗ねてるぞ」


「拗ねてはいない」


チャイはそう言うが、表情を見ると不服だとすぐにわかるほど険しい顔をしている。

しかも、声のトーンが低くなっているので心情が丸わかりだ。


「ふっ」


コアが小さく笑ったのが分かる。

主は何も言わず、ただコアの頭を撫でる。

コアの近くに座ったチャイの前足が、コアのお腹に乗る。

そっと視線をずらし、雷たちを見る。

今のチャイを見たら、笑いが止まらなくなりそうだ。


「ん? 来たな」


主の視線が空に向かう。


「はぁ、またあ奴か。懲りないな」


コアのため息交じりの声。

それに笑う主。


「そう言ってやるな。ここには愚痴を言いに来ているようなものだ。今日は、光に会うという理由もあるが」


「光。会うのか? 面倒くさいなら、攻撃してやるぞ」


コアに慌てて首を横に振る。

ここにいる皆は、神様をちょっと小ばかにしているような気がする。

きっと俺の知らない事があるのだろうけど、大丈夫なのかと心配になる。


「コアは過激だな」


主は笑っているが、コアの目は本気の目だ。

広場の隅に光が集まると、神様の姿になっていく。


「真中に堂々と姿を見せればいいのにな」


「あはははっ」


コアの言葉に主が笑う。

神様がここに通い始めの頃、広場の真中に登場したことがあると聞いた。

そしてなぜか、広場に居た者たちから一斉攻撃をされたそうだ。

「敵だと思った」と皆が主張したらしいが、神様は俺でも分かるほど独特の気配を持っているからな~。

きっと、二度と広場の真中には現れないだろう。


「光」


主の言葉にコアが主の足から顔を上げて、「ぐるっ」と喉を鳴らす。


「大丈夫だって」


コアの頭を撫でて立ち上がると、主の手が俺の手を掴む。


「行こうか」


俺の歩くスピードを見ながら、ゆっくりと歩く主。

記憶の中で俺は、15歳だった。

なのでクウヒたちは弟や妹の感覚なのだが、主と手を繋ぐのはちょっと恥ずかしい。


「久しぶりだな。元気だったか?」


「2週間前に、仕事をさぼって来ていたのは気のせいかな?」


アイオン神の言葉に、笑顔で返す主。

何だろう、寒い?


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― 新着の感想 ―
[一言] 神=面倒事を持ってくる役に立たないヤツ(笑)
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