76.可愛い!……いつまでやるのか
『どうぞ』
「ありがとう。お~、相変わらず美味しい」
『口にあって、よかったです』
一つ目たちが準備してくれたお茶とお菓子を楽しむ。
龍たちには俺より10倍ぐらい大きいお菓子が配られているようだ。
それでも体のサイズから考えると小さいかと思っていたら、飛びトカゲと水色がするするするっと見たことのない小ささになっていく。
それを唖然と見ていると、おそらく1mにも満たないサイズになった。
「小さくなれるんだ。初めて見た、そのサイズ」
少し困惑しながら2頭に声をかける。
「……このサイズの方がいっぱい食べた感覚になれるので」
2頭はちょっと恥ずかしそうにお菓子の前でふわふわ浮いている。
……なんだこいつ等、無茶苦茶可愛い!
「確かに満足感が違うよな」
「へへ」
水色が嬉しそうに笑う。
やはり大きさで随分と印象が変わるな。
今のサイズで笑うと本当に可愛い、2mぐらいの大きさでもまぁ、可愛いかなっと思う。
が、それ以上のサイズの時に笑っていると『食われる?』と思うほど怖い印象を受ける。
やはり大きさって重要だ。
あっ……食べ方は丸呑みの蛇スタイルか。
ワイルドだな。
(俺達の苦労も知らずに、いいたいことを言いやがって)
デーメー神はもう少し声を抑えてくれないかな。
煩い。
『ご主人様、子供たちにも配って来ました』
「ありがとう。一つ目たちもゆっくり休憩しろよ」
『優しい』
「ん?」
目の前の『一つ目』が何か言ったようだが小さすぎて聞こえなかった。
(本当のことを言われて逆切れか、少しは冷静に考えられないのか?)
(貴様!)
『いえ、なんでもないです。分かりました』
「あぁ」
本当に一つ目たちは働き者だ。
……ちょっとは俺も見習わないと駄目だよな。
「それで、主。どうするか決めたのか? 神とやりあうか?」
水色の言葉に飛びトカゲもこちらを向く。
そして言い合いをしている神たちを、一緒に見る。
正直、関わりたくないなという思いだ。
「どうしたモノか……あっ」
そうだ、現状をしっかり共有した方がいいかもしれない。
少し前まで会話が出来ていなかった事も含めて。
でも、信じてくれるかな……。
いや、俺の力のこともある。
ちゃんと話しておこう。
「ちょっと聞いてほしい事がある。これから話す事は記憶とは異なると思うが真実だ」
俺の真剣な表情に2頭の龍の顔も引き締まる。
「少し長い話だが……」
少し前まで会話が出来ていなかったこと、それがロープの力でできるようになったこと。
ロープがおそらく飛びトカゲが見せてくれた石だということ。
仲間の記憶が変わっていること、俺の記憶だけが変わっていないこと。
今この世界の主導権をロープが持っていること。
そして力の暴走についても話しておく。
記憶の部分でかなり驚いた様子の2頭だが、最後まで何も言わずに聞いてくれた。
「……主の力がまさか暴走しかかっていたなんて。今は大丈夫なの?」
水色が心配そうに、俺の周りをグルグルと回りながら訊いてくる。
それに少し笑って、頭を軽く撫でて「大丈夫」と答える。
「我らの記憶が……」
飛びトカゲが神妙な声を出す。
やはり知らない間に記憶が変わっているなど、信じられないかもしれない。
(だったら寿命を持てるように、変化したらいいだろうが。それを拒否し続けている理由は何だ?)
(それは)
(デーメー、もうやめろ。拒否し続けているのは子供たちのためだ)
おっ、とうとうアイオン神も参加しだした。
それにしても寿命を持てるように変化できるのか?
本当に何でも出来るんだな。
あれ?
アイオン神は、長く生き過ぎて全てに飽きた神が問題を起こしたとかなんとか……寿命を持てば解決するのでは?
拒否する理由は、意味が分からないな。
今の俺の状態を見て、子供たちのためになっているとは思えない。
「主、話してくれて感謝する。記憶がいじくられたのは悔しいが主と話せるようになったのはうれしい」
「信じてくれるのか?」
「主は俺達に嘘は言わないだろう?」
「もちろん。それに俺も皆と話せるようになってうれしいよ」
水色が俺の頭の上に頭をのせてくる。
サイズがお菓子の時より大きくなっているのでちょっと衝撃が。
それにしても、無条件で信じてくれる存在がいるのはうれしい限りだ。
「えっと、俺が知っていることはこれで全てだ……言い忘れは、あるだろうが今は思いだせないから思い出した時に聞いてくれ」
「忘れていることがあるのか?」
「絶対にある!」
「主はもっと完璧だと思っていたが、思いのほか抜けている部分があるようだ」
飛びトカゲの言葉に苦笑いしてしまう。
言葉が通じていない間に、いったいどんな俺がみんなの中で出来上がっているのか。
聞くのが怖い。
(子供たちのため? 馬鹿な事を)
(何が言いたい?)
(お前たち神は、ただ怖いだけだろう?)
怖い?
何でも出来る神が?
どうでもいいけど、いつになったらあの話し合いは終わるんだろう。
昼の仕事を終わらせた農業隊が、空中に向かって話している2柱を不思議なモノを見るような目で見ているのだけど。
意外と気付かないものなんだな。
……農業隊、そのちょっと憐れみを感じさせる視線は止めてあげて。
さすがに可哀想だから。
(馬鹿な事を言うな、我々に恐い物などない)
(死ぬことで、地位も力も全て失う。それを恐れているのだろう?)
(……)
(違う! なぜアイオンはそこで黙るんだ!)
アイオン神はまだ話が出来そうだが、デーメー神の方は駄目だな。
あそこでそんなキレかたをしたら「そうです」と言っているようなモノだ。
そういえば前の話し合いの時、一方的に話すだけでこちらの話は聞かなかったな。
あれは、本当の性格を隠すためだったのかな?
「神と関わるの、面倒くさいな」
「そうだな」
「うん」
ゆっくりお茶を楽しみながら、2柱がロープと言い合いをしている風景を眺める。
正直、聞いているのも馬鹿らしい内容だ。
解決策というか、変化を起こせる方法がある。
なのに、その地位に縋りついてしまって身動きが取れない。
この辺りものすごく人間臭い。
手に入れた物は死んでも離さん……ちょっと違うか?
「そういえば主はどうやってこの星にきたのだ? 俺達のように知らない間にか?」
「あれ? もしかして話し忘れた?」
「「あるじ~」」
「ハハハ」
仕方ないよ。
思い出さなかったのだから。
とりあえず掻い摘んで簡潔に説明。
話が終わると、水色から怒りの気配を感じた。
「主をそんなくだらないことに巻き込むなんて!」
「ありがとう、水色。怒ってくれて」
「主はもっと怒ってもいいと思うぞ」
「まぁ、そうなんだが」
確かにもっと怒り狂っても良いとは思うが。
「主?」
「最初の頃、そんなことを思う時間もなかったな。日々を生き延びることで必死で。巻き込まれた事を知った時は、衝撃が大きすぎてただ神の話を聞いているだけだった」
「そうか」
「今は怒ると言うより……」
デーメー神とアイオン神を見る。
「とりあえず関わりたくない」
「ハハハ。その意見に賛成だな」
アイオン神は、本気で心配してくれていた。
だがデーメー神は頭を下げたくせに、謝罪の気持ちが全くなかった。
おそらくこの場を納めれば問題ないとでも思っていたのだろう。
頭さえ下げておけば問題ないと。
……ギフトの力なのか、相手の気持ちが伝わるんだよな。
前にデーメー神に会った時は、まだこの力はなかった。
なんで力が増えているんだろうな?
……デーメー神になにかされていたりしてな、前回会った時に……。
「まさかな」




