64.眠いのです……あれ? 解決?
そういえば日本語だな。
久々に聞いたな。
ちょっとノスタルジックだ。
『聞いておるか、主』
聞いていません。
そう言って逃げれたら楽だよな~。
逃げたいが……。
『お~い、主』
何か随分と軽い話し方だな。
それにしても眠いな。
「聞こえている」
『それは良かった』
「それより俺が創造したと言ったが、俺は記憶に無いのだが」
『それはそうだろう、我が勝手に主の送ってきた創造を利用しただけなのだから』
それって俺が創造したとは言わないよな。
まったく関係ないと言えるような……ふわ~。
欠伸が止まらないな。
ふ~。
『だが、力を送ってくれたからな。我の主である事に間違いない』
力を送った?
「それこそ覚えがないが」
『そんなはずはない、我に力を送ってくれたのは主だ。我はずっと意識を封印されて力を自由に使われてきた』
意識を封印して力を自由に?
なんだか似たような話を知っている気がする。
龍達を森に封印して力を利用……見習い共のやった事か。
「あの馬鹿ども」
う~、頭がボーっとしてくる。
本当に眠い。
『だが、主が利用された力を我に戻してくれた』
利用された力を戻した?
力なんて戻した事あったか?
あっ、呪いの術返しの事か。
呪いなら術返しだろうって勢いでやって、成功したみたいだから続けたんだよな。
まさか、アレがそんな役にたっているとは思わなかったな。
『失われ続けた膨大な力がどんどん戻って来たお蔭で、我は封印を中から壊すことが出来た』
よかったと思えばいいのかな?
それより、俺っていったい何と話をしているんだ?
封印されて力を使われていたって事は、他にも龍がいるのか?
「聞きたいことがある」
『なんだ、なんでも聞いてくれ!』
何でそんなにうれしそうなんだ?
「お前って龍なのか?」
『主が龍がいいと言うなら龍にも成れる。だが、力が足りないからすぐには無理だが』
龍に成れる存在なのか?
というか、龍に成ってほしいわけではない。
いや待て、龍はかっこいい。
確かにもう1頭龍が増えても……。
「いや、そうではなくて。はぁ、俺は何を考えているんだ」
どうも、頭が少しボーっとするな。
「今はどんな……姿をしているんだ? っふわ、眠い」
『どんな? そうだな黒い石だ。主が想像したしめ縄? の姿をしているぞ』
しめ縄?
最近しめ縄を見たような……あっ!
飛びトカゲが見せてくれた映像の中にあった。
この世界でしめ縄を見るなんてと驚いたからな。
……ん?
アレが俺の想像したしめ縄?
そんな想像いつしたんだ?
覚えがないが。
『どうかしたのか?』
「いや、なんでもない」
しめ縄といえば悪いモノを閉じ込めておくイメージがあるな。
もしかして、呪いが出てこないようにしめ縄を想像したのか?
……駄目だ、やはりいつ想像したのか思い出せない。
というか、飛びトカゲが見せてくれた『あれ』と俺は今話をしているのか。
すごいな、とうとう石と会話が出来るようになったみたいだ。
あまり喜びはないが。
『主、我はどうしたらいい?』
どうしたらと訊かれても、俺もどうしたらいいのか。
「あ~、そういえば名前は?」
他の話で誤魔化せるかな。
『ない』
「無いのか? 不便だな」
『ならば、つけて欲しい』
俺が!
名前つけるの下手なんだよな。
でも、意思があるのに名前が無いのはなんだか可哀想だ。
呼ぶとき『石』ではちょっとさびしいし。
名前か、石の名前。
何が良いんだ?
しめ縄……縄は英語で何だっけ?
「ロープ」
『我の名前はロープだな。分かった』
えっ!
今、なんて言った?
あっ、もしかして俺声に出していた?
「待った、今のは違う」
『主、ロープだ。これからよろしく頼むな』
遅かったのか、これは。
……疲れた。
なんだかどっと疲れが。
眠気もピークだ。
『で、我は何をしたらいいのだ?』
……忘れてくれなかったか。
残念。
「あ~、この世界を守る存在にでもなればいいと思う」
考えるのがしんどくなってきた。
というか、力があるなら今はこの世界を守る存在が欲しい。
俺の力が暴走してこの世界に被害が出る場合、この世界を守る存在が必要となる。
「そうだ。そうだよ!」
忘れていた。
俺の力が暴走した時、この世界を守る事が出来れば俺はまぁ、満足だ。
もちろん、力の発散方法を探すが。
もしもの時の対応があれば、安心だ。
『この世界を守る存在……我は必要か?』
「あぁ、絶対に必要だ」
俺に何かがあった場合、俺から世界を守る存在が。
『そうか! そうか! わかった。確実にこの世界を守る』
「頼むぞ」
『もちろん、主の命令だ。何があっても守って見せる』
よし、これで安心だ。
『ただ主、少し力が足りない。主から貰い受けたいのだが良いだろうか?』
力が足りない?
これは力を渡せばいいという事だよな。
今、力の行き場所を探しているのだから問題ない。
「問題ないがどうすればいい?」
『我に力を渡すイメージを想像し、移動魔法を』
いつもとあまり変わりないが……ロープ? のイメージが重要だな。
飛びトカゲが送ってくれたイメージはノイズが入っていたが、何とかなりそうか。
頭の中でロープ。
やはりちょっと残念な名前だな、間抜けのような……諦めるしかないんだろうな。
この世界に日本語が分かる者が来たら、爆笑されそうだな。
はぁ。
って、今は違うだろう。
……よしっ!
えっとイメージだな……ロープに俺から力を移動させるイメージだな。
「……移動!」
『ぅわ!』
「えっ……」
体からごそっと何かが抜けていく感覚に襲われると、同時に意識が薄れていった。
……………………
「んっ……ふわ~。よく寝た」
この感覚久々だ。
最近では、力が動き回るのか熱が上がって目が覚めていたからな。
いつか、体の中から焼かれるのではないかと不安だったんだが。
今日は静かだな。
何かあったのか?
体の中の力を調べる。
「ん? 何だ?」
昨日まであった膨大な力がない。
いや、あるにはあるがそんなに慌てる必要が無いぐらいだ。
昨日まで、すぐに対処が必要だと感じるほどだったのに。
何かあったっけ?
……………………あっ!
あったな。
えっと確か……しめ縄をした石……ロープだ。
そう、ロープに力を渡したから。
って、かなり膨大な力を一気に送り込んだが問題なかっただろうか?
あまりの眠たさに、力加減が上手くできなかった。
「ロープ? いないのか?」
名前を呼ぶが答えが無い。
まさか石が砕けたりなんて……いや、大丈夫のはずだ。
攻撃などしていない。
少し様子を見るしかないな。
そういえば、昨日は何の話をしたっけ?
何か重要な事を聞いたような気がするのだが……。
おかしいな、全然思い出せない。
えっと、確か俺が力を与えて。
記憶には全くないがしめ縄を飾ったのも俺のイメージらしい。
……ロープと交信? できたらもう一度話を聞こう。
全てがうろ覚えだ。
さて、今日から力の発散場所探しか……あれ?
力は昨日の事で随分と減っている。
新しい力も魔力も前の様に均整が取れて大人しい状態だ。
問題解決?
いや、根本的な解決にはなっていないよな。
でも、それほど慌てる必要は無い。
ハハハ、まさか自分の命を脅かす脅威が減ったのにそれに気が付かないなんて。
もっと喜びをかみしめたかった気がする。
……睡魔に負けた。




