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異世界に落とされた…  作者: ほのぼのる500
片付けは隅から隅まで!
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54.黒い卵……見落とし

ようやく本日3番目の石像に到達する。

遠かった。

ものすごく遠かった。

既にヒールでは(おぎな)えない、足の疲れと痛み。

……まだ、帰りがあるのだが。


「何と言う絶望」


まぁ、それはさておき石像をぶっ潰す。

この石像が、こんなに離れた場所にあるのが悪い!


「粉砕!」


あっ、そういえばポーズは……両手が胸元で組まれているから祈りか?

表情は……こわっ!

無表情のように見えるが、目の印象が……表現しにくいが不気味だ。

こんな表情で祈りってありかよ。

もしかして祈りではなくて、呪い中か?

あいつらの作った物だからな、ありえそうだな。


それにしても、マガンという呪いに呪詛の骨、ここにきて呪いをし続ける石像?

どれだけ、心が病んでるんだよ。


目の前で3番目、おそらく最後の石像が粉々になる。

痛みを訴える足を動かして、3個目の石を探す。

2個目の石が微妙だったからな、何とか力がある石だといいのだが。

瓦礫を退()けていくと、黒い石が見つかる。

これだと分かるのだが、石の黒さに少したじろぐ。

最初に見つけた石も黒かったが、あれは黒光りしていた。

だが目の前の黒の石は、何もかもを飲み込みそうな怖さを感じる黒だ。


ちょっと緊張しながら石を取る。

何事も起きなかった事にホッとしながら石を見る。

……この石だとは分かるのだが、特に力を感じない。

違うのか?

いや、この石で間違いないと感じるが。


「この石でいいよな?」


少し離れた場所にいる水色に石を見せる。

水色は警戒しているのか、また少し離れる。


「これだな」


さて、帰ろうか。

……うん、帰るんだよな。

此処からだと、今走ってきた距離の半分ちょっとかな。

なるほど、半分か。

短いじゃないか。

だから、走れるはずだ。

思い込みも大切だからな。


「俺は走れる」


早く、この石を届けて楽にしてあげたいしな。

やるしかない。

グッと痛みを訴える足に力を入れて走り出すが、やはりすぐに立ち止まってしまう。


「今までにない痛みだな」


魔法でのヒールは既に効果がない。

新しい力を使うか。

だが……。

体の中の状態を探る。

熱は随分と落ち着いている。

使って問題ないように思うが、使う事でまた騒ぎ出しても困る。

はぁ~、試すしかないか。


結界を1つ解除する。

新しい力を間違って使わない様に、結界を張っていたのだ。

暴走しない様に気を付けながら、新しい力を意識して。


「ヒール」


体に溜まっていた疲れと痛みがふっと消える。

すぐに走りだしても問題なさそうだ。

だが、そのままじっとして力の様子を窺う。

少し熱が上がったようだが、すぐに落ち着いてくれた。

よかった。


体を動かしてみる。

特に問題はない。


「さて、帰るか」


足に力を入れて走りだす。

あれ?

何だか、足に違和感。

痛みではない……何だろう。

マイナスではなく、プラスに違和感というか。

ん~、自分でも良く分からないが……あぁ、速度が上がっているんだ。

走るスピードが今までにない速さだ。

新しい力の影響だろうな。

思いもよらない効果があったな。

早く家に戻れるから、ラッキーだ。


走りながら、少し空を見る。

少しずつ、日が傾き始めている。

本当に今日は1日中、走りっぱなしだな。

……新しい力の癒しで、体は全く疲れていないが。

魔力でも神力でもなく、犬もどき達の力でもない。

いったい、俺の新しい力って何なんだろうな。


家が見え始める。

横を確認する、水色が飛んでいる。

反対を見るとアイ達が走っている。

どちらの様子も、疲れた印象は受けない。

大丈夫だったようだ。


「タフすぎる」


何度もヒールの魔法を使った俺とは違うな。

龍はなんとなく異次元の力を持っていそうだが、アイ達もだとは侮っていた。


家にしている岩山に到着。

農業隊が収穫の準備を始めている姿に、畑に視線を向ける。

青々と茂った畑。

豊作間違いなしだな。

全てが落ち着いたら手伝いたいな。


家の中に入ってリビングへ向かう。

犬もどきのベッドの隣には土龍の飛びトカゲ。

ずっとここにいる。

初日は監視の様に感じたが、今は様子を見ているという印象だ。


ベッドに近づいて、今日集めてきた3個の石を全てベッドに並べる。

これで力が犬もどきに吸収されるのは、1個目で経験済み。

しばらく様子を見ると、2個目の石からは赤い光、3個目の石からは小さな光、最後の4個目の石からは毒々しい黒い光が飛び出して、卵に吸収されていった。


これで大丈夫なのか、まだ力が足りないのか。

卵の様子を見ていると卵に変化が起こりだす。

透明だった卵は最初の石の力を吸収して、うっすらと白く濁ってしまった。

今回はどんどん黒くなっていく。

そして、完全に真っ黒な卵になってしまった。

……さすが、悪魔関連の卵って事か?

黒くなる前の3匹の表情は、少し落ち着いたように見えたが。


「今、見えたのが俺の願望でない事を祈るよ。元気になれよ」


それにしても、疲れた。

体は元気になったが、精神的な疲労は無理だな。

クウヒが持って来てくれたお茶を受け取って、ウッドデッキで休憩する。


お茶を飲んで一息ついてから、空を見上げる。

見張りはいないのか?

それとも……。


この世界と俺について、神から話を聞いたあの日から6ヶ月が過ぎた。

毎朝、木の板に1つずつ穴を開けているので間違いない。

6ヶ月と3日だ。


あの日俺は、聞いた情報を整理するのに少し混乱状態だった。

あまりにも、俺の培ってきた常識と違ったためだ。

だから、色々と見落としてしまったのだ。

例えば、この世界を作った『世界の実』のあった場所について神は『神様候補だけが入れる場所』と言ったと、記憶している。

だが、候補だけが入れる場所にそんな重要な物を置いておくだろうか。

普通は『候補が入れない場所』に置いておくだろう。

言い間違いなのか、それとも見習い達が盗めるように、本当にそんな場所に置いたのか。


他にもこの世界を『監視する神がいない』という表現。

俺の神様のイメージは『見守る神様』もしくは『導く神様』だ。

まぁ、神からしたら世界を監視している感覚なのかも知れないが。


見落としたと言えば、最初の時もそうだ。

見習いが勇者召喚の失敗で騒いでいた時に神が来たのだが『召喚術など使いおって』と叫んだのだ。

『使う』つまり、召喚術は既に発動していると知っている言い方だ。

ならば、その召喚術に巻き込まれた存在がいる事も分かりきっているはず。

だが、誰も俺を探さなかった。


これらの事に気が付いたのは、比較的早い時期だった。

そして迷った。

話をした神が味方なのか、敵なのか。

なので、とりあえず何も知らないという態度を貫き通すことにした。

見張りがいる可能性を考えたからだ。

神も『この世界を監視する神を選別しよう』と言っていたしな。


正直、俺としては味方でいてほしかった。

だが、神が言った『この世界はもう大丈夫』と言う言葉を、信じきれなかった。

その理由は『神になるか?』といった時の印象だ。

あの一瞬、違和感というか恐怖に近い何かを感じた。

あの時は、味方だと思い込んでいたためあまり深く考えなかったが。


味方でいて欲しいと言う希望は『俺自身の意識が乗っ取られそうになった』事で、答えが出た。

そして神にとって『この世界はどうでもいい世界』なのだと感じた。

その答えに俺は『何も考えていない自分』を作った。


3人の見習いは、愚かでクズではあるが馬鹿ではない。

この世界を作り、龍達の力を使って世界を回す方法を考え実行したのだ。

そんな3人が目指す神様という存在が、抜けているという事はないだろう。

特に、ここに来た神は比較的上の存在だ。

なぜなら『監視する神を選別』出来る地位なのだから。

間違いなく下級神ではない。

その神が、残念ながら味方ではないのだ。


先ずは、色々と知らなければならないと思った。

その為には警戒されない事。

それには『無知、馬鹿、考えない』が力になる。

そして見張りがいると考えて、何事もゆっくりとそしてだらだらと過ごした。

変化が無いモノを、ずっと見続けるのは苦痛だからな。

そして見落としが増える。

とはいえ、あの神に対してどれだけ通用したかは不明なのだが。

見張りがいたのかどうかも、分からないしな。


「まぁ、呪詛の骨の件で心が折れたからな~。演技ではなく本心でだらだらしていたが」


あの神相手に事を起こすとか、本当に勘弁してほしいよな。

でも、この世界を壊そうとするなら許さない。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が考え無しすぎるという感想に応える形で入れた話なのかなぁ? という印象。 行き当たりばったり感で考え無しなのは最初からで変わらない気がするし、行き当たりばったりだとしても敢えて…
[良い点] 思ったよりも色々考えてるんだね すべて行き当たりばったりなんだと思ってた
[気になる点] 考えなしなのは、わざと考えなしになってた? 確かに最近特に顕著だったけど、でも神と邂逅する前から割とそうだったよね?
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