42.えっ2m!…お風呂最高!
夕飯を食べながらウサとクウヒを見る。
あの子達はまだ小さい。
子供だからな。
だが、俺よりデカくなる。
それが分かってしまった。
実は家に戻って来る前に、どうしても気になったので確認をしてしまったのだ。
この世界の人と獣人の身長と体つきを。
止めておけばよかったと、今は後悔しかないが。
「なんであんなに逞しい体つきをしているんだ」
思い出してげんなりする。
確認に協力してもらったのは、おそらく一般人だとおもう。
……正確にはいきなり空からお邪魔して驚かせたのだが。
町から少し外れた道で人と獣人、数人が一緒にいるのを見かけたので降り立ってみたのだ。
間近で見た彼らは、想像した以上だった。
コアに乗っている俺と視線がほとんど同じなのだ。
いや、中には見上げる必要がある者もいた。
凡そだが2m以上ある事になる。
ショックを受けながら、人と獣人を見比べてみる。
人より獣人の方が体つきは良いようだが、それは獣人の種? によるかもしれない。
全体的に背丈は獣人の方が高かったが、逞しさは獣人によって違った。
人の方が逞しい場合もあるようだ。
人の女性は男性よりは華奢だったが、背は確実に俺より高かった。
獣人の女性はいなかったので分からないが、男性の身長を考えたら俺より背が低いとは考えられない。
いや、もしかしたら種によっては背が低い者もいるかもしれない。
人だって平均より低い者はいるだろう。
それが、俺の身長より低いかは分からないが。
期待はしない方が良いな。
急に現れた俺達に、目を見開いて固まっていた彼ら。
悪い事をしたと思うが……あれは、仕方がなかったのだ。
言葉は通じないが誠心誠意謝っておいた。
気持は伝わったと信じよう。
それにしてもショックだ。
何と言うか、色々あった中で一番ショックを受けている。
この世界に来て色々あった。
3馬鹿に対しては、不平を言いたい事ばかりだ。
だが確実に、一番この問題について苦情を言いたい。
何で身長が2mもあるんだ!
人間をいつの間にか止めていた事よりショックだ。
何気にその事実に衝撃を受けたのだが。
普通、人間を止めていた事の方がショックだよな。
まぁその事実を知った時は、他の情報も一緒だったから衝撃が少なかったのかも知れないな。
しかし、俺はこの世界の基準ではチビになるのか。
小学生の低学年の時、俺は周りより背が低かった。
その為、からかわれた嫌な過去がある。
なので身長は、俺の中ではコンプレックスになっているのだ。
今から、身長って伸びないかな?
昔みたいに、身長を伸ばす体操でも始めてみようかな。
……どう考えたって無理だな。
はぁ~。
「大丈夫?」
クウヒとウサが心配そうに俺を見ている。
やってしまった。
子供達に心配を掛けさせてどうするのだ、いい大人が。
身長が何だ!
逞しさが何だ!
………………………3馬鹿のクソッタレ!
「大丈夫。ありがとう」
考え込んでいる間に、いつの間にか食事が終わっていた。
まったく食べた記憶は無いのだが、手と口は動いていたようだ。
どれだけ衝撃を受けているんだ俺。
たかが身長に……されど身長って違う!
よし!
ゆっくりお風呂に入ってリラックスしよう。
「ウサ、クウヒ。ゆっくりお風呂に入ろうか。で、もう寝てしまおう」
「お風呂~」
「ふろふろ~」
2人の元気な声を聞いていると、下降気味だった気持ちが軽くなる。
一つ目達と一緒に後片付けをして、2人とお風呂へ向かう。
その後ろから、小さくなった水色と毛糸玉がついて来る。
龍達は本当に自由自在に大きさを変化出来るな~。
……羨ましい。
「お前達は本当にお風呂が好きだな?」
マシュマロ以外の龍達は、お風呂が好きだ。
結構な頻度で一緒にお風呂を楽しんでいる。
特にこの2匹は多い。
最初の頃はお風呂という物に戸惑っていたな。
だが、俺がお湯につかっている姿を見て一緒に浸かりだした。
一番最初にお湯に入り込んだのはふわふわだ。
あの時は俺が驚いて慌てたっけ。
最初の頃のお風呂は、日本の銭湯をイメージして作った小型のお風呂。
さすがに2mぐらいの龍が入ると狭かった。
龍達が一緒に入りだして、慌ててお風呂を改造。
今は3回改造して、かなり大きなお風呂となっている。
5匹の龍と一緒に入れるぐらいにはデカい。
そしてこのお風呂には段差がある。
龍達の体がしっかりと浸かれる深さと、俺達が座って浸かれる深さだ。
龍達が浸かる場所の深さは3mぐらいある。
この深さは相談して決めた。
小さくなりやすいサイズが3mなのだろうか?
家の中でもだいたいそのサイズでいる事が多くなった。
広い家と廊下でよかった。
体を浄化魔法で綺麗にして、掛け湯をしてからお湯につかる。
ウサとクウヒの浄化魔法も俺がかける。
龍達は自分たちでかけている。
正直魔法があるからお風呂は要らないのだが、ここが日本人なんだろうな。
お湯に浸かりたくなるのだ。
俺が毎日お風呂に入るからなのか、ウサとクウヒもお風呂が好きになったようだ。
最初の頃の、ビビっていた姿はどこにもない。
2人ともお風呂の中で体を伸ばして寛いでいる。
頭をクイッと軽く押される。
視線を向けると口に布を咥えた水色。
布を受けとって軽く絞る。
それを水色の頭に載せてあげる。
それに満足して、深い方へと体を移動させてふちに顔を載せて目を閉じた。
龍達がお風呂に慣れた頃、面白半分で濡れた布を頭に載せたのだがなぜかそれを気に入ってしまった。
お風呂に入るたび、布を咥えて持ってきて頭に載せてと催促するようになった。
何とも可愛い行動だ。
頭に布を載せお風呂の淵に顔を置いて目を閉じている姿は、微笑ましい。
「ぷふ~」
お風呂に入っている水色と毛糸玉から鳴き声が洩れている。
気持がいいのだろう。
俺もお風呂で体を伸ばして、今日の疲れを取る。
うん、いいお湯だ。
何だか気持ちが落ち着く。
あ~、そろそろ3馬鹿の問題に取り掛からないとな~。
面倒くさいが、早くした方が良いと感じるからな。
頑張るか。




