21.神力……失敗? 成功?
弾き飛ばされない様に、ゆっくりと穴に向かって手を伸ばす。
指先に、微かにだが何かを感じる。
だが異常は感じられないため、もう少し穴に近づけると指先に少し痛みが走った。
おそらく穴を守っている結界に、触れたのだろう。
弾き飛ばされる事は無かったが、これ以上近づけば攻撃されるだろうな。
ん~、どうすればいいかな?
前の時は、風を凝縮して塊を作ったんだよな。
もっと簡単に壊せないかな。
神力で作られているなら、神力を使った方が簡単に壊れるのかな?
そう言えば魔力と神力って何が違うんだ?
影が差したので上を見ると、魔物の石が上空で旋回していた。
手を伸ばして、降りてくるように魔法を発動する。
手の中に納まった魔物の石から、神力だけを取り出せるか試してみる。
「見える形で出ろ」
白いふわふわした光が、空中に出て来た。
まさか本当に見えるようになるとは、やってみる物だな。
魔力も見える形で出たりするかな?
自分の中にある魔力に、魔法を発動させてみる。
黒いふわふわした光が、体の中から出て来ると白い神力の隣に並ぶ。
自分の体から黒い光の塊が出て来るのは、思ったより不気味な光景だな。
気を取り直して、2つを見比べる。
色の違いは、俺が区別するために付けた物だから調べる必要は無い。
ん~何かが違うとは感じるのだが、分からない。
…………違いってどうやって調べたらいいのだろう?
それぞれから感じるモノ?
そもそも魔力が何かも分かっていないのに、無謀だったかな?
とりあえず魔力を……どうしたらいいのだ?
駄目だ……頭が混乱する。
もっと単純に考えよう。
ん~、俺がしたい事は、壁を感知できて、攻撃を防御する事だよな。
問題を簡単に解決する方法は……魔力を神力に変えられたら、すべての問題が解決するのでは?
俺の魔力は、他者の魔力を感知できたし、防御も出来る。
と、すれば俺が神力を扱えるようになれば、3馬鹿の神力を感知できるようになるのか?
上手くいけば、神力で結界を作れる可能性もある。
そうすれば防御が出来るようになるのでは?
魔力を神力に変化させる。
……無理かな?
まぁ、やってみるしかないよな。
先ずは実験として、目の前にある魔力を変化させることが出来るか試してみるか。
目の前に浮かぶ2つの力は、表現しにくいが違うという事は感じる。
どうイメージしたらいいのか……難しく考えるな、単純にだ。
よし、魔力から感じる力が、神力から感じる力に変わっていくイメージを作る。
魔力の黒い光に手を翳して、魔法を発動させる。
「神力にチェンジ」
目の前から風がぶわっと吹き荒れる。
「ぅわっ」
魔力から、風が巻き起こったようだ。
周りに落ちていた葉っぱや枝が、風に巻き上げられて飛んでいく。
周りを見ると大木に少し傷が入っているが、問題はなさそうだ。
「ん?」
コア達がなぜか姿勢を低くしている。
親玉さん達も木から下りている。
あっ、やってしまった
「ごめん。大丈夫か?」
コア達を確認するが怪我は無いようだ。
親玉さんやその子供達も大丈夫だった。
よかった。
そう言えば、コア達の耳が寝ているが、それほど怖かったのだろうか?
悪い事をしてしまったな、まさか風が起こるとは思わなかった。
次から気を付けよう。
皆が落ち着いたようなので、魔力の黒い光があった場所へ視線を向ける。
おかしいな、白い神力に似せたはずなのだが、黒い魔力がどうして銀色に光っているのだろう。
何か化学変化みたいな事が起こったのかな?
どうしよう、何かやばいモノを作ってしまっていたら。
とっ、とりあえずどうなったか調べてみるか。
銀色に光る魔力に手を翳して、力を感じる。
……神力から感じる力に似ている……ような気がする。
神力にはならなかったか、残念。
これって失敗だよな。
でも何だか、神力より力があるような感じを受けるのだが。
気のせいだよな?
まぁ、神力の方は小さい力を寄せ集めた物だから、弱く感じるのかもな。
ふぅ、それにしても失敗してしまった。
……でも、せっかく作ったのだし試してみようかな。
もしかすると、壊せるかも知れないし。
ガラスが砕けるイメージを作り、銀色の光に手を翳し魔法を発動させて穴に向かって飛ばす
…………無理か、残念。
穴に向かっていた銀色の光が途中で消えてしまった。
やっぱり失敗か。
『ガッシャーン』
「っ! びっくりした」
森に響きわたるガラスの割れる音。
……成功したのか?
目の前には今まで見えなかった壁が、砕けて消えて行くのが見えている。
どうやら、成功したらしい。
「あれ?」
周りを見ると、なぜか俺から離れた所にいるコア達。
親玉さん達も、少し離れた大木の上にいる。
「ごめん」
恐る恐る近づく皆の姿に疑問が浮かぶ。
何だか俺を怖がっているように見えるのだが?
「どうした?」
近くまで来たコアの頭を撫でる。
するとようやく落ち着いたのか、尻尾がパタパタと揺れだした。
それを見て周りも安心したのか、ぐっと近づいて来た。
皆の頭を撫でながら、何が怖かったのかを考える。
銀色の光だろうか?
いや、音かな。
結構響き渡っていたからな。
ガラスをイメージしたのが悪かったのかもしれない。
次からは気を付けよう。
何だか風の塊を壁にぶつけた方が、簡単だったような気がするな。
まぁ、いいか。




