09.違う生き物だ!……急には止まれない。
……やってしまった。
目の前の巨大ムカデが、俺の様子に気が付いたのか落ち込んでしまったようだ。
俺から距離をとるように後ろに下がり、雪に中に隠れようとしている。
「待った!」
さすがに俺の態度は悪すぎる。
この子は日本のムカデとは違うのだから。
日本のムカデに挨拶された事なんてないから!
夜中、布団の中に現れてビビらされた事はあるが……あれは怖かった。
それにしても、落ち込む姿が何気に可愛い。
ムカデが可愛く見える日が来るとは。
落ち込む姿に、混乱していた頭が冷静さを取り戻した。
もう一度、全体を見ると真っ白い体が光に反射してキラキラ綺麗だ。
しかも、光る銀色の鱗が見える。
……鱗?
鱗はしっぽ?に近い所にぽつぽつと点在している。
巨大ムカデに近づき銀色の部分をよく見ると、鱗に似ているが少し違うようだ。
触ってみると、硬く感じるのに柔らかい、でも硬い?
……何とも表現できない不思議な触り心地だ。
巨大ムカデが体を捻って後ろに居る俺を見ている。
不思議なモノだな、冷静になると先ほど感じた怖さが無い。
ムカデは苦手だが、こいつは怖くないと言うか随分と愛嬌がある。
銀色の部分を撫でると、体がちょっとフルフルと揺れるのだ。
嫌がっているようには見えないので、大丈夫だと思っておこう。
名前を付けようかな?
見た目はムカデなんだよな……ダメだ、全然思い浮かばない。
だからと言ってムカデと付けるわけにも……あっ!
「ムーってどうだ?」
やはり形がムカデなので、そこから離れられないらしい。
俺の頭も頑固だよな。
まぁ、ムーが気に入ってくれたみたいなので問題なしとしておこう。
小さい子ムカデ達は……サイズの違いぐらいでは見分けがつかない、諦めてください。
……
クウヒとウサを連れて雪山へ。
今日はアイ達が一緒だ。
何故かアイと同じ種の犬が、みんなでついて来た……雪山で遊びたいのかな?
一つ目達に、木を加工して作ってもらったそりも一緒だ!
雪と言えば滑る……単純な俺の思考回路だが気にしない。
一度は滑ってみたいのだ。
クウヒとウサに、そりの使い方を俺が使って説明していく。
2人とも最初は戸惑っていたが、俺がそりで雪を滑ると声を上げて喜んでいた。
ちょっとそわそわと落ち着きがなくなったので、どうやら早く挑戦したいようだ。
2人にそりを渡すとさっそく乗り込み……その後ろにアイが乗って滑りだす。
……やはり滑りたかったのだろうか?
今度はアイ達のためのそりも、作ってもらった方がいいのかな?
後ろからツンツンと突かれる。
後ろを見ると、ムーが俺に向かって背中を見せている。
……撫でてほしいのだろうか?
撫でてみるが、どうやら違ったらしい。
何だろう?
ムーがそりに乗って遊んでいる2人に視線を向ける。
そして自分の背中を見て俺を見る……まさか、乗れと?
「ぅわ~……!」
雪山の頂上からムーに乗って滑っている。
と言うかムーすごい!
足を浮かせて胴体で雪を滑るのだが、すごいスピードだ。
想像を超えているスピードだが……ジェットコースター好きにはたまらない。
しかも胴体にあるくぼみを掴んでいるのだが……正直飛ばされそうで……ドキドキワクワクする。
……安全装置の無いジェットコースターだな。
ん?
これって止まる時どうなるんだ?
あっ、やばい、考えてなかった!
なるほど、ムーが止まる、俺は吹っ飛ぶ……ふわふわの雪でよかった~。
ムーが慌てて駆け寄ってくるのが何とも可愛いな。
しかしこれ、面白いのだが。
ん?
クウヒとウサがこちらを見ているな……真似をしたら危ないよな。
もう1回挑戦したいが……やめておこう。
「ムー、ありがとう。楽しかったぞ!」
あっ、また!
ふわふわがムーのマネをして滑ってくる……俺に向かって!
何だろうこの先の未来が見える。
舞い上がった膨大な雪で全身が雪に埋まった。
ムーが慌てて雪から引きずり出してくれた。
ありがとう。
……ふわふわに乗って雪を滑った。
雪山ではマシュマロばかりを相手にしていたので、拗ねていたらしい。
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