149.無意識の俺に感謝!…他の世界にお願いします。
「…それが、分からんのじゃ。本来ならお主は死んでおるはずなんだが…」
…衝撃だ。
気のせいにしたいが…確実に俺の耳に届いた。
俺が何者か…不明?
それより…死んでいるはず?
はぁ、落ち着こう。
心の平穏が…リスか、ありがとう。
撫でさせてくれ、落ち着く。
よし。
話は聞いた。
俺の無意識に感謝だな。
通常は勇者4人分の魔力を受け止める事は不可能。
この時点で魔力が暴走して死ぬのが当たり前となる。
だが俺は生きている。
俺が死ななかった理由はこの世界。
【まがん】の浄化を繰り返した事で余分な魔力を使用したようだ。
それだけでは危なかったのだが結界を作ることで暴走の回避に成功。
結界は絶えず魔力を使う上級魔法…最初から上級魔法を使えたんだな俺。
通常であれば魔力が枯渇して死ぬが俺は逆に暴走を食い止め死を免れた。
過去の俺、えらい!
勇者には3段階で魔力が増やされるらしい。
元が人だから体を慣らすためなのか…考えられているな。
で、俺も3段階で増えた…4人分。
2段階目は危なかったらしいが、結界を広げて張ることで回避。
2回目と言えば湖まで広げた事かな。
3段階目も結界を広げて回避。
…かなり広範囲に結界が張れて喜んでいたあれかな。
結界様様だな。
4人分の魔力となれば結界だけでは無理なのだが
俺の行ってきた事が絶えず魔力を必要としたらしい。
要約すると。
【まがん】の浄化を1日に何度も繰り返した事…繰り返し?、覚えがないな。
仲間に魔力を分け与える事…いつの事だろう?
同時に多数の【ゴーレム】を動かす事…【ゴーレム】?
魔力を含んだ風を結界内の森に流す…風の魔法なんて記憶にないぞ?
【ユグドラシル】の進化の手伝い…進化?
【ユグドラシル】の防御と守りの強化…そもそも【ユグドラシル】が分からない。
森全体の【まがん】の排除…森全体を綺麗にしたあれだな。
…とりあえず魔力を使うことを、毎日何かしら行ったらしい。
無意識とはいえ毎日か…全く覚えがないほうが怖いな。
ただ魔力を消費しただけならいいのだが、
俺の体は徐々に4人分の魔力に慣れ、膨大な量の魔力を保持しても問題ない体へと変化した。
おそらく人としての器では無理になり、徐々に人外へと移行したと思われる。
最後は神様たちの考え、なんせ前例がないため予測の範囲を出ないらしい。
…身体の神秘、もうそういうことにしておこう。
「大丈夫かの?」
「…大丈夫です。今さら何をしても変わらないでしょうから」
「ふむ」
4人分の魔力か、しかも勇者の。
俺って、もしかしてそうとう強いのか?
上級魔法もすでに使っているというか、乱発しているようだし。
「そうだ、あの3人なんだが」
「…3人?…馬鹿、えっと見習いの3人ですね」
「世界の実を盗んだこと、神獣たちの卵を盗んだことなどまぁいろいろあったわ」
いろいろあったわって…それでいいのか?
「話を聞いたがの、ありゃ駄目だ。
神の存在の意味を全く理解しておらん、神は自由ではない。
しっかりとしたルールがある、そうでなければ星などすぐに滅ぶわ。
まったく、何を学んできたのか…。
罰なんだが、見習い位の剥奪と神力の剥奪は決定した。
おそらく、記憶を残したままの最下層への輪廻となるだろう」
「…記憶を残したまま?」
「あやつらは随分と神になることに固執していた。
だからこその罰と言える。
あと少しで手が届きそうな場所から、けっして手が届かない場所へと落ちる。
記憶があるのは罰を自覚させるため、他の神々がそうとう怒っておっての」
…最下層ってどんな存在なんだ?
この世界に生まれ変わることって…あったりするのか?
「安心してよいぞ、輪廻はここではない」
よかった。




