145.俺は優しくない!…人を卒業!
俺がやってしまったことを考える。
呪いではなく【まがん】というものを消したようだ…あの黒いやつだ、消えて何より。
【ませき】を壊したらしい…【ませき】が何かが分からない。
森の復活をさせたようだ…いいことだ。
【ユグドラシル】を進化させたらしい…【ユグドラシル】ってなんだ?
神獣たちを解放した…さすが俺!
エンペラス国の第5騎士団を死滅させたらしい…どんな人たちか確認…自業自得では?
国の王様と魔術師を間接的に殺してしまったようです…この人たちはどんな人?…天罰ってことで。
…何か問題でも?
「…殺したことに落ち込むかと思ったが」
「あ~因果応報という言葉がありますから。他には?」
死んでいる姿を見たら動揺するが、言葉だけだしな。
それに第5騎士団達も王様と魔術師もあり得ないほど非道だったようだし。
獣人を生贄にするとか、子供を囮にするとか…死んでも許されないだろう。
「奴隷の子供達は隣国に保護されたようだ」
「…?えっと話が見えません」
説明されたが…えっと、つまり。
生贄で森に連れてこられた200人の子供の奴隷が無事に保護されたと。
その内の2人がこの家にいる…え!
「お主の防御の力で森を生き抜けたようだ、
助けもあったようだしの。
先に逃げていた奴隷が隣国に助けを求めていたのもよかった。
隣国の調査団が森の中に居たからな」
…防御とはなんだ?
奴隷の存在を知らなかった俺がその子供達に防御?
覚えがないが俺の魔法で間違いないらしい。
え?先に逃げていた奴隷も俺が関係している?
それは…とりあえず、子供達が生きているってことが何よりです。
それにしてもウサとクウヒが奴隷だったとは驚いた。
「それでお主の事なのじゃが、どうやら人外になっておる」
「…………は?」
何を言っているんだこの老人…神様は。
「どうやらお主には勇者4人の力が全て注ぎ込まれたようだ」
「…」
「しかもこの監視する神がいない世界で神獣たちの主となった」
「…」
「今、この世界の頂点はお主だぞ」
…ん?
えっと…なるほど俺は人を卒業したのか。
とりあえず落ち着こうか。
「…神になるか?」
「お断りします!」
何を言い出すんだこの老人…神様は。
落ち着くまで待って。
いろいろありすぎて、頭がパンクしそうだ。
「…すごい事なんじゃぞ?」
「俺には無理ですよ、絶対。…試してます?」
「うむ、この世界を監視する神を選別しようかの」
神様になりたいって言ったら何か起こった可能性があるな。
どうやら目の前の老人は一筋縄ではいかないようだ。
言動には気を付けよう。
「そう警戒せんでも大丈夫じゃ」
「やっぱり試したんですね?」
「すまんの、お主の存在が異例すぎての。扱いに困っておる」
知った事かと言いたいが俺の事だよな。
俺も自分の扱いに困るのですが…。
「俺としては仲間と過ごせれば、それでいいです」
「…すごい力を秘めておるのじゃぞ、それだけでいいのか?」
「俺にとっては力は別にどうでもいいです。
呪い…【まがん】を何とかしようと思ったのは仲間を苦しめるから、
住んでいる場所は住みやすいほうがいいし、森は綺麗な方がいいでしょ。
そんな感じでこの世界で生きて来たので。それ以上は別に。
ま、力があったから生き残れたのでしょう、それには感謝しています」
「そうか、うむ」
「父と母の教えです、困った時はシンプルが一番だと」
どんな時も自分の命を優先して考える事。
特に困った時はこれが一番重要で、難しく考えない。
住処と食料、これが確保できたら病気対策。
その中で仲間を作れるなら作る。
難しく考えると動けなくなるなら、まずはシンプルに自分を守るために動く。
父と母が俺達兄弟に教えた生き方だったな。
父は若いころ各国を放浪していたので、そこからの教訓らしい。
日本ではほとんど意味がなかったが…ここでは大活躍だ。
「家族に…いえ、いいです」
「すまんの」
俺の家族だ、きっと俺の事は笑いながら話してくれるだろう。
あ、…人ではないと言われたが、俺は何になったんだ?




