143.また、お前らか…被害者です!
森の外だ!
…田舎って感じだが、森の外!
コア達もちょっと興奮気味だ。
この世界って…
『壊れてる~…なんで』
『どうするんだ!』
『お前、壊れるわけないって言っただろうが』
ぅわ、びっくりした。
いきなり声が聞こえるとか、どんなホラーだよ。
周りを見るが誰もいない。
何だ?
何処から声が?
知っているような声なんだが。
『やばいよ、壁がなくなったから神獣の力が外に』
『もう一度、壁を』
『無理だ、膨大な神力が必要だし、俺達の神力は封じられている!』
…【しんじゅう?】【しんりき?】
もう一度、周りを見渡す。
何もいない。
ただ、声だけが聞こえる。
この状況、以前にも経験がある。
俺がこの世界に落とされた時とか…。
それにこの声、あの時の馬鹿見習いの3人の声に似ている。
まさか、またあいつらの何かに巻き込まれているのか?
『壊した奴ってどれ?』
お前にどれと言われる筋合いはない。
ぐっと手に力を入れる。
右手に違和感。
そういえば壁の一部を握っていたっけ。
『誰だこいつ、どうしてフェンリルと一緒にいるんだ?』
フェンリルって?
コアの事か?
隣に座っているコアを見上げる。
…フェンリルっていう種類のオオカミなのか?
何かかっこいいな。
頭を撫でてみる、気持ちよさそうだ。
…フェンリル?…妹の話に出たことがあるような…?
『あ、魔石が!』
『なんだ?』
『ちょっと、何で割れてんだ!』
【ませき】と言うものが割れているらしい。
何がどうなっているのかは、わからない。
ただ声は間違いなくあの諸悪の根源の3人だ
俺が死んだ原因でこの世界に落とされた原因。
コア達が森から出られなかった原因も、こいつららしい。
『どうするんだよ』
何か知らないが、諦めろよ。
『ばれたら今度こそ神力だけでなく見習いも出来なくなる』
俺を巻き込んだ失敗で【しんりき】と言う物を取られたのか?
見習いも出来なくなればいいと思う。
『なぁこいつ、こいつを使えば』
こいつって…俺だよな。
間違いなく、俺の事だよな。
イラつくな。
魔力が揺れたのかコアが心配そうに俺に視線を向ける。
ふぅ~ありがとう。
コアは…あぁコア達は皆優しいな。
魔力の揺れで他の子達も俺を見ていた。
顔は怖いが心配そうな顔はわかる。
落ち着こう。
『そうだよ、こいつ人間みたいだし…あれ?人間か?』
人間ですよ。
それ以外の何に見えるんだ。
それにしてもこいつらの話から推測して、すでに何かをしでかした後のようだ。
何だろう。
『どうでもいい、こいつに俺達を』
『何をしておるか!消えた神獣の気配を感じて来てみれば!』
『ぁあ~』
見つかったみたいだな。
そしてこちらの声も聞き覚えがある。
勇者召喚の時に聞いた、神様の声。
『なんだ、この世界は!』
『あの神様、これは…』
『まさか、お主らが世界の実を盗みだしたのか!』
何と盗みまでしていたらしい。
いろいろとやっちゃってますね。
所でこれってずっと聞いてて、いいのかな?
どうして聞こえてくるか分からないので、どうすることもできないが。
『違うんです』
『何が違う!』
『うまくいっていました、世界はちゃんと回っていたし』
『…神獣を閉じ込めて、神獣から盗み取った力を利用してか?』
『あ…』
なんて言う奴らだ。
【しんじゅう】って神獣?
それってふわふわとか龍達の事か?
日本でも特別な存在だが、この世界でも?
…ふわふわたちを閉じ込めて、力を勝手に使ってたって事か?
なんて奴らだ!
『…ところで、話を聞いておる者がおるようじゃが』
ばれていたようです。
ちょっと怖いな。
「すみません。そこの馬鹿…見習い3人の被害者です」
『は?嘘つくな!』
『黙れ!』
すごい声、威圧感っていうのか?
びくってなってしまった。
『被害者とは?』
「3人が行った勇者召喚に巻き込まれ、この世界に放り出された地球の人間です」
『『『『え!』』』』
すごいな、声がそろった。
というか、誰も気が付いていなかったのか。
そうかなっとは思ってたけどムカつく。




