142.森の境界線…壊してやる!
森を数日にわたって調べた。
呪いは消えている。
…森の外には相変わらず出られない。
…ムカつく!
周りにあたっては駄目なのでぐっと我慢して。
はぁ~でもなんでだろう。
森の境界線にまで行ってみるか。
自分の目で確かめるのは大切だからな。
何か分かる可能性もあるし。
走っていくのは…遠いが頑張ろう。
家の外に出ると広場ではいつもの光景が広がっている。
それにささくれ立っていた感情が少し落ち着く。
…よし!
……
コアが空を走っております、俺を背にのせて。
森の境界線にまで行こうとすると、コアが邪魔をした。
びっくりした。
今まで俺の邪魔をすることはなかったからだ。
で、どうしようと思っているとしゃがんで背を見せる。
これは乗っても良いという事だろうか?
試しに乗ってみると正解だった。
立ち上がって空を駆けだす。
何も言っていないのに、どうしてか俺の行きたい方向へ走り出す。
ありがとう、…なんだお前たちも一緒に来るのか?
周りにはコアと同じ種のオオカミ達。
…やばい、子供達が成長したから見分けが…
…えっと、あっちは子供か、あれは…子供…。
今は気にしないことにしよう。
コアのサイズは背に乗っても安定している。
まぁ首に腕を巻きつけて落ちないように踏ん張っているが。
注意は首を絞めない事。
何度か失敗をしてしまったからな、申し訳ない。
やはり森は広い。
夜になっても森の境界線にたどり着けない。
途中で休憩をしながら翌日の朝方にようやく目的の場所へ。
ドローン千里眼で見た森の外へ続く道がある場所。
獣人だろうか?
誰かが居た形跡が見られたのでここにした。
道を歩いて外を目指してみる。
バチン。
…痛い。
やはりダメか。
仲間がものすごく心配そうにこちらを見ている。
大丈夫。
閉じ込められていると思うとムカつくな。
それにコア達が近づかないし、俺が壁に近づくと毛が逆立っていた。
あれは恐怖からだろう。
何度か痛い思いをしたことがあるのかも。
よし、絶対に森から出られるようになってやる!
と言ってもどうするべきか…。
見えない壁か。
壁を壊すとなると、巨大な玉?
テレビで見た事があるな…あれは何かの事件だったか。
他には、ダイナマイト…無理。
最初から考え直そう。
巨大な玉を魔法で作ればいいのか。
風を凝縮して作った塊を何度かぶつけてみるか。
魔力を思いっきり詰め込めた塊を何度もぶつければ壊れるだろう。
ただ、俺の目に壁が見えないのが問題だよな。
ぶつける場所が変われば負荷が分散してしまう。
…数個作ろうとしているものを1つ強力な塊にしたらいけるか?
やって結果を見るしかないな。
ふ~壁に向かって掌を。
とりあえず1発。
バチッ
よし、攻撃しても攻撃が跳ね返ることはないんだな。
跳ね返ったら怖いからな、ちょっと安心。
それに当たった瞬間に何かが見えたような気がする。
気になるが、今は壁を壊すことだけを考えよう。
絶対に壊す!
掌を壁へ向け、掌の少し前に風の凝縮した塊を作る。
どれくらいの力が必要なのかが分からない。
もっと…もっと…もっと。
俺を中心に風が渦を巻いている。
まだ、足りないかも、もっと魔力を詰め込んでみよう。
魔法は想像力も大事だったな。
壁が割れる想像でもしたらいいのか?
ま、想像するのはタダだしな。
ガラスにボールがあたったイメージを風の塊にのせて
「ッ壊せ!」
バチ…バチバチバチ…ビシッビシビシビシ…。
音が聞こえる。
少しすると音が変わる。
音が変わった瞬間に目の前に見えていなかった半透明の壁が表れる。
さっき一瞬だけ見えたのはこれか。
攻撃が当たった場所にヒビが入ったのが見えた。
そのヒビが無数に広がっていくが止まってしまう。
見えた壁のヒビに蹴りを入れる。
ヒビがあれば、あと少しの衝撃で壊れるはず。
ガッシャーン!
壁が光って本当にガラスのように割れて下に落ちてくる。
驚いたが落ちる途中で壁の欠片は光を発して消えていく。
目の前に落ちてきた壁の破片に手を伸ばす。
「掴めた…あれ?」
消えると思っていた壁は、つかんだ瞬間に光が消えガラスのようなものに変わった。
思っていた結果と違うとビビるよな。
俺がビビっている間に手の中の物以外の破片が消えた。
はぁ、とりあえず壁は壊せた…はずだ。
光の玉を出して道に沿って森の外へ。
妨害されることなく外へと出られたようだ。
深呼吸して1歩。
その横を一緒に来ていたコア達が通り過ぎていく。
尻尾がすごく揺れているのが可愛いな。




