130.フェンリル王3 コア
-狼と間違われているコア視点-
昔を思い出す。
仲間と共に空を駆けていた姿。
あのころに比べるとずいぶんと大きくなったものだ。
速度が落ちたのも巨大化のせいだろうな。
だが、今でも空を駆けることは出来る。
しかもこの大きさだと主を背にのせることも可能だ。
隣でワインを楽しむ親玉さんを見る。
そういえばと視線を動かすとアイの子と遊んでいる糸を出すアルメアレニエが見える。
不思議な光景だ
「親玉さんの子は不思議な変化をしたのう」
初めて見た時、親玉さんの子とは思えず違う種かと考えたぐらいだ。
まさか糸を使用する種になるとは。
「あれは初めて主にあった時に送られたイメージだ」
「ほぅ、そうか」
主が必要とした力なのか、ならば変化も納得だ。
だが、糸か。
昔、体を大きく変化させたが自身の魔力で相当な傷を負い死にそうになった。
あの時はそうすることが必要だったがもう2度としたくはない。
変化とは、かなりの負担がかかるのだ。
糸を操る変化も相当な負担がかかったのでは?
「スワソワが居るだろう、あれにコツとあるものをもらった」
「ん?」
スワソワは毒糸を吐く魔虫。
ゴーレムが面倒を見ている奴らはちょっとおかしなことになっているが。
あやつらが?
「糸を出すには核が必要でな、それをもらった」
「…違う種の核を体内に入れたのか」
それはそれで恐ろしい。
違う種の核は魔力が気に入らないと体を突き破って出てくることもある。
無謀な事をしたものだ。
なに、あの進化したお前の子がお前に内緒で…。
それはまた、糸を使えるようになったと聞いた時どうしたんだ?
ん?速攻で核をもらいに行ったのか。
…負けず嫌いは昔から変わっていないな。
我が子だろうに。
何?この王の座を?
まだやらん!
欲しければ我を倒せ!
だが、我は負けぬ!
お主と一緒…ふん。
王の地位を簡単に譲るのは間違っているからだ。
それより、糸を使えるように変化する子供は他にも?
あと2匹?
ほぅすべてが進化をするわけではないのか。
よかったな、親だけ昔のままに…っつ、叩くな!
変化ができなかったからと…まだ諦めていないのか。
諦めたら…いや、頑張れ。
まったく。
…親玉さん、あやつの出している糸は何色に見える?
黒だな、色を変えることもできるようになったのか。
まぁ、元はスワソワの核だからな。
夜に黒の糸は見えにくいな。
お主、いつか地位を奪われ…いや、なんでもない。
睨むな。
お、あれは我が生んだ子供か…。
親玉さんちょっと特訓に付き合え。
まだまだこの地位は譲らん!




