121.子供達はしっかり者…収穫だ！

お腹に衝撃が走る。

うっと思いながら目を覚ますと目の前には一つ目。

以前は起きるまで起こさなかったのだが最近は腹に一発決められる。

行動の理由は獣人の子供たちが起きてきたことを知らせるためだ。

この起こし方、妹にそっくり。

起こし方を変えてくれるようにお願いした…なのに未だに続いている。

…無情だ。

1階のリビングへ。

獣人の子供たちはすでに起きているが部屋の片隅の椅子に座っている。

コア達や親玉さんをちょっと怖がっているようだ。

シュリへの反応が一番でかいが。

俺には少しだが慣れたようだ。

それよりもこの子達の親御さんを探したい。

ジェスチャーで何度か挑戦したが伝わらず、申し訳なさそうな顔をされる。

あんな顔をさせたいわけではない。

俺がしゃべれないために本当に申し訳ない気持ちになる。

ただ、どうもこの2人の子供は家に帰りたそうにしない事が気になる。

普通なら知らない俺より知っている人がいる場所に帰りたがるだろう。

まさか親に捨てられたなんて…あるのかな。

日本でもいろいろな理由で育てられない場合の預ける場所があった。

世界に目を向ければもっといろいろな問題があった。

異世界でも…親御さん探しは慎重にした方がいいかもしれないな。

「おはよう」

「お、はよ、う」

2人ともずいぶんしっかりとしている。

言葉を教えてもらおうと思ったが子供たちの方が日本語を覚えた。

まぁ簡単なあいさつぐらいなのだが。

俺は…聞いたが聞き取れなかった。

すごいな～子供は。

「朝ごはん、食べよう」

ここ数日で覚えてくれたのは

おはよう、おやすみ、朝ごはん、昼ごはん、夕飯、食べる、お風呂、駄目。

生きていくのに大切な言葉からだな。

いや、俺が覚えないと駄目なんだが…。

今のところ俺には全く進歩がない、諦めないがくじけそうだ。

2人はちょっとうれしそうに俺のもとに駆け寄る。

俺が何かを言わないと行動をしない2人。

ちょっと疑問を感じるが緊張しているのかもしれないから気長に待つ予定。

初日の事を思えば進歩だ。

何をしても大泣きされて困ったからなあの日は。

泣かれるのは苦手なんだ。

甥っ子が泣くと俺の方がパニックになって周りに笑われたっけ。

姉が腹を抱えて大笑いしていたな。

自分の子供が泣いている隣で大笑い。

…母は強しってことなんだろうか？

そういえば岩人形には異様に怖がるな2人とも。

可愛いと思うのだが感性の違いか…俺がおかしい？

いや、そんなはずは。

日本の妖怪は異世界では怖いのだろうか。

まぁ確かに一つ目って目が一つか…怖いか。

今さら作り変えるのも…慣れてほしい。

今日の朝食はパンとスープ。

おかわりもあるからあわてて食べなくても大丈夫。

ゆっくり食べろ。

この辺りはジェスチャーでも伝わる。

数日頑張れば。

ん？農業隊が朝から俺に会いに来るのは珍しい。

外？引っ張る…あ、収穫か！

頑張らせていただきます。

子供たちは…手伝ってもらおう。

痩せているから心配だが、一つ目は怖がるからリスに一緒に居てもらおうかな。

よろしくと机の上のリスにお願いする。

伝わったみたいだ子供たちのもとに近づく。

リスなら大丈夫と。

よかった。

……

さて、広大な畑の収穫！

これは冬の間の食料にもなるのでかなり重要。

前の冬は数日、外に出られなかったからな。

頑張ろう。

子供たちは無理をしないように。

…広いよな～。

収穫しても収穫してもまだまだ広がる畑。

必要だと思うから頑張るが…腰が！

子供達も頑張ってくれている。

あれ？

近くに一つ目がいるが、大丈夫なのか？

慣れてくれたのかな？

まぁ問題はなさそうだな。

手が止まっていると、農業隊に睨まれる。

ごめんって。

頑張るからこれだけは追い出さないで。

本気で頑張ろう。

小麦すごいな…前回の10倍、いやもっとか？

農業隊の農業の知識ってすごいことになってる気がする。

……

ブドウまで収穫して終了。

ワイン造りはすでに一つ目が始めているのか、シュリが参加…追い出されたな。

諦めろ岩人形はどの子もプロフェッショナルだ、邪魔をすると本気でやられる。

前回より収穫に時間がかかった。

果実の森の空いていた部分が全部埋まっていたり。

新しい野菜があったりと農業隊が日々頑張ってくれた結果だ。

保存部屋すべてに埋まった食材を見て冬に向けて準備完了。

…朝のお試し食いを頑張ったかいがある。

1週間連続だったときはさすがにやめるように頭を下げたが。

あの1週間、ほとんどダメ食材でつらかった。

苦い、しびれるはまだ何とか耐えた。

食べる量も少量だったから耐えられた。

が、何とも言えないモノは少量でも口に広がった時は…。

うっ、思い出さないほうがいいこともある。