111.アンフェールフールミ2 シュリ
-巨大アリ シュリ視点-
主のもとに世界樹が自らの意思を持って移動をしたことに驚いた。
自らの目で見なければ信じることはなかっただろう、今でも時々夢を見たのかと思うときがある。
現実だと認識するのは湖の近くにその存在があればこそ。
……
世界樹はこの森の芯の部分を司る森そのもの。
世界樹に何かあれば、それは森すべてに影響を及ぼすこととなる。
だからこそ、だれにも見つけられないように
何重にも結界が張られ、世界樹のもとには許された者達以外は近づくこともできなかった。
それがトレントの導きで世界樹のもとへ招かれた、主。
初めて見た世界樹は死にかけていた。
おそらく魔眼から森を守り続けたために力尽きようとしているのだろう。
主が魔力を注ぐが様子がおかしい。
そして次の瞬間、世界樹が目の前で枯れた。
あまりの事に動くことも声を上げることもできず、ただ枯れた世界樹を見つめた。
だが、森の終わりではなかった。
主の魔力を受けた世界樹は、あり得ないことに次世代を生み出した。
余りの光景にただ、その奇跡を見つめた。
トレント達ですらそれは予想外だったようでかなり驚いていた。
…驚くというより混乱していた。
まぁ、あの状況で混乱していないのは、主と世界樹だけだろうが。
生まれた世界樹は不思議なことに、森の魔力と主の魔力を合わせたモノを持っていた。
そして森にその合わさった魔力が世界樹から大地へ、大地から森へと広がる。
何より世界樹は我々同様に主を慕いそばにあることを望んだ。
主はさすがだ。
世界樹とトレントをただの仲間として受け入れたのだから。
……
住処に世界樹を招いた時の仲間たちの顔。
あれは面白かった。
主も楽しんでいるのか見回していたからな。
根もはり、主の魔力を毎日受け止め日々成長する世界樹。
まだまだ、小さく少し不安を感じるがゴーレム達も見守っているようだ。
ゴーレム達は夜も外を警備して住処を守っている。
あれ程心強い守りもないだろう。
…敵を認識した場合のあの容赦のない瞬殺。
あれは怖い。
一切の迷いなく、そしてぶれもなく一刀両断。
さすが主のゴーレムと言えるだろう。
そのゴーレムに守られている世界樹。
我々もいるのだ、大丈夫だろう。
……
主のゴーレムは今まで見てきたゴーレムとは明らかに異なる。
見た目あまり強そうに見えない。
小さいフォルムになんとなく愛嬌がある。
だまされて痛い目に遭ったものも多いが。
外のゴーレムの強さは、魔物や魔獣が家に近づいたときに見たことがある。
だから絶対に怒らせない。
住処の中のゴーレムはそれほど強くないと考えていた。
外のゴーレムだけで守りは完璧に見えたためなのだが…。
だからちょっと油断した。
…ほんの少しワインをもらいたかっただけなのだが…。
見つかった瞬間追いかけられた。
なぜかものすごく寒さを感じて逃げ出し自らの領域である穴に。
ホッとした瞬間、目の前にゴーレムが。
あっという間に真っ白な世界へ。
起きた時にはゴーレムの姿はなく。
子らに聞くと帰ったらしい…。
帰った…。
私の領域である穴の中には結界が張り巡らされている。
そして一度穴に入ると、私か子らの許可がなければけして出られない…はずなのだが。
帰った…。
子らに確認、許可を出したのか?
…隠れていたのか、では出していないな。
私の穴と言えば、地獄の入り口と言われる事もあるのだが?
主のゴーレム達には全く効果がないということか?
…住処の中のゴーレムも恐ろしいほど強いのだな。
子らが私の様子をうかがっている。
大丈夫だ、あとでしっかり謝るから。
主のゴーレムだ、きっと許してくれるだろう…大丈夫。
そういえば子らはすぐに隠れていなかったか?
ん?
すでに経験済み?
親玉とその子供らも、コア達も…。
なるほど、それを教えておいて欲しかった。




