108.第5騎士団 団長
-エンペラス国 第5騎士団 団長視点-
森へ向かう自分の騎士団員たちを確認する。
どの顔にも恐怖など微塵もなく、やる気がみなぎっている。
問題はない。
王の騎士でありながら、他の騎士団は臆病者がそろっている。
森の少しの変化に右往左往と、みっともない。
あれで騎士団などとよくも恥もなくいえるものだ。
同じ騎士団として何度殴り倒しそうになったか。
俺の横にいるこいつがいなかったら、王の前でほかの騎士を殺していたかもしれん。
「どうかなされましたか?」
俺が一番信頼している副団長。
こいつはいつも冷静で俺の行動にも理解がある。
俺のフォローともいうがな。
「いや。ようやくだと思ってな」
「そうですね、大暴れしてください」
本当にこいつはよくわかっている。
喉から笑いがこぼれる。
それにしても我が王に歯向かってくるとは愚かにもほどがある。
どんな屑野郎かは知らないが、
最強のエンペラス国を敵に回すことがどういうことか思い知るがいい。
生きていることを心の底から後悔させてやろう。
今から楽しみだ。
「準備に問題は?」
「奴隷だったら問題ないです」
「そうか」
「魔導師達が不思議がっていましたが説明しますか?」
「チッ、考えれば分かるだろうが、無能どもが」
今までの攻撃を見て古代魔石がどうも邪魔だと気が付いた。
ならその魔石を使わない方法をとればいいだけだ。
確かに古代魔石は強い。
だが、それ以外にも攻撃魔法などいくらでも存在している。
上位魔導師がいないから少し不安はあるが…。
生きたまま奴隷を使えば、上位魔導師以上の力を引き出すことができるというのだから問題はないだろう。
森に何がいるのかは知らんが問題などない。
俺は王に助けられそして強さをもらった。
ならばこの人生、王のために使うのが当然。
王の前に立ちふさがると言うならば、だれであろうと叩き切る。
森の王?
それがどうした、過去の遺物が今さらわめいてうるさいだけだ。
王の御前に敵の首を必ず並べてやる。
それが何であろうとだ。
……
遠くに森が見え始める。
…確かに以前見た森とは違うか?
だが、大したことはないな。
問題になるほどでもないだろうに、なにを第4騎士団の奴はビビっていたのか。
森の入り口に団員を集めて副団長がこれからの事を大まかに説明していく。
魔導師達は準備に取り掛かっているようだ。
森の結界はまだ幾重にも存在している。
それを突破しないと森の入り口付近は問題ないが奥へは進めないからな。
めんどくさい。
王に認められた魔導師ならそれぐらい早急に何とかしろと言うのだ。
森を焼くという副団長の言葉が聞こえる。
少し団員に動揺が走った。
だが、すぐにその動揺が消え闘志が膨れ上がる。
さすが俺が選び抜いた団員だ。
奴隷が到着したようだ。
何度かの失敗を経験として奴隷はすべて5歳以下を集めた。
まだ戦闘の訓練をしていないゴミだ。
もし奴隷紋に影響が出て逃げたとしてもこいつらは森ではエサだ。
そして意識を強力な薬で狂わしている。
こいつらの声にでも反応している可能性があるからな。
これで奴隷には問題がないだろう。
気づかれないように、逃げても問題ないやつら。
王に進言した時にも問題なくすぐに用意された。
こんなゴミなどいくらでも生み出せるのだから200ぐらいは問題ない。
いや、ゴミの存在でありながら王の役に立てるのだ、名誉なことだな。
……
森の中に入り、最初に見えた広めの空間に森を広範囲に焼く魔法陣を展開する。
奴隷を全て使えば見える範囲の森は簡単に燃える。
結界を同時に破壊するために、もう1つ見つけた広めの空間にも魔法陣を展開。
あとで追加されたゴミを足せばどれほどの結界が砕けるか、楽しみだ。




