103.第4騎士団 団長3
-エンペラス国 第4騎士団 団長視点-
友人の姿を見つけた。
不思議な場所で会うものだな。
今、来た方角を考えると奴隷館からか?
「珍しい場所で会うな」
「ん?あぁそうだな」
何か考え事をしていたようだ、驚かせてしまった。
騎士の訓練場に向かうようなので共に行く。
以前の任務失敗から第4騎士団は暇だ。
いや、訓練はしているが以前のような覇気がない。
それも仕方ないと諦めている。
王にとって、無能は生きる価値がない。
今生きているのは、ほかの事に目が行っているからだろう。
これからどうなるのかは不明と第4騎士団員すべてが分かっている。
また、何か任務を言い渡されるのか。
それとも俺達の首が落とされるのか、俺だけであればいいが。
記憶のない魔導師達は即座に処刑された。
あれを思えばいつその命令が下されてもおかしくはない。
……
何だ?
ずいぶん騎士の休憩所があわただしいが。
…あれは第5騎士団か。
ずいぶん騒がしく、話が漏れ聞こえてくる。
「第5騎士団を使って森を制圧…か」
第5騎士団。
戦闘狂集団とも言われている。
また王への忠誠心が一番ある騎士団とも言われ国民からも支持がある。
王のためならと手段を選ばず死を恐れず成果を上げ続けている。
…森も第5なら。
「第5が動くなら」
「無理だな」
…一刀両断された。
この友人は頭がいい。
以前より森についていろいろと調べていた。
その時は俺も含めて周りは無駄な事をと思っていた。
だが、今思えば正しかったのだ。
「なぜだ?」
俺は正直、戦うことが生業だと思っている。
魔獣や魔物相手ならば倒す自信がある。
その力を見込まれて第4騎士団の団長を任されたのだ。
まぁ失態をしでかしたが。
この友人も俺が認めるほど強い。
だが、それ以上に世界が見えているのだと最近気が付いた。
今、この国に何が起こっているのか、それも分かっているのではと思うことがある。
「敵は俺たちを知っている、俺たちは敵を知っているか?」
「…森ではないのか?」
「森は以前よりあそこにある、だがお前も言っていただろう」
そうだ俺の知っている森とは違う印象を受けた。
変わってしまったのだ、森が。
それはどうしてか?
…分からない。
「変わったのか、それとも本来の力を取り戻したのか」
本来の力。
森の王が森を守っていた時の森の力。
俺たちはその時を知らない。
だが、もしそうなら森を復活させた存在がいるはず。
それが、この国の敵?
あの森を復活させる力を持つ存在。
微かに体が震える気がする。
恐怖など昔、騎士に入ると決めた時に捨てたはず。
だが、何だこの得体のしれない不快感は。
「この国の敵は森の中にいる、だがこの世界の敵は誰だと思う?」
友人の言葉に顔がゆがむ。
確かにこの国の敵は森の中にいる何かだ。
世界の敵?
…世界…確か森は世界そのものだと…。
それが真実なら、森が求めた存在こそがこの世界の求めた存在。
その存在の敵が、世界の敵…この国…。
あまりの答えに唖然と友人を見つめる。
友人は騎士の休憩所で盛り上がっている第5騎士団を見ている。
その横顔に、どんな感情も読み取ることができない。
だが、俺に視線を向けた一瞬だけ苦笑がもれた。
「正解とは限らないがな」
いや、おそらく一番正解に近いと感じる。
心で納得している自分自身がいるのだ。
第5騎士団が森に戦いを挑むならそれは…。
古代の力と今の力で強化された魔石でも最後まで落とせていない森の力。
だが、数百年かけて確実に力は削がれて来ていたはず。
それをたった数か月で復活させる存在。
そんな存在に挑むというのか、ただの人間が。
「敵に回してはいけない存在があるのだと思うよ」
友人の声が遠くに聞こえる。
生きて来て初めて底のしれない存在を感じた。
俺たちはどれほどの力に戦争を挑んでいるのか。
…どれほどの怒りをかうのか。




